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エピローグその2 佐倉美月としての、新しい第一歩

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「今日はまず、皆さんに転校生を紹介します」

 9月2日、月曜日。夏休みが終わって、初めての学校の日。
 教壇に立った先生がそう言うと、教室中はざわざわし始めました。

「転校生? こんな時期に珍しいね」
「男の子かな? 女の子かな?」
「どんな人なんだろ?」

 転校生は、もちろん翔くん。

『美月さん。美月さんと同じ中学校に入ることは分かっていたのですが、今日同じクラスになると決まりました』

 しばらく前に聞いていたことを思い出していると、ガラガラガラ。教室の扉を開けて翔くんが入って来て、先生の隣に立ちました。

「わっ、カッコいい!」
「ね!!」
「クールで格好いい……!」
「落ち着いた雰囲気、良いよね……!」
「こらこら。気持ちは分かるが、少し静かにしなさい。騒がしいと自己紹介ができないでしょう?」
「「「「「はーい」」」」」

 先生が注意をすると教室のなかは静かになって、翔くんの自己紹介が始まりました。

「千葉県から越してきました、田宮翔と申します。短い間ではありますが、よろしくお願いいたします」

 わたししか知っている人がいない場所でも、しっかりしている翔くん。そんな翔くんがお辞儀をすると全員で拍手をして、

「「「「「よろしくお願いします」」」」」

 先生の合図で、みんなで挨拶をお返しします。

 ――よろしくお願いします――。

 今まで1回だけ転校生がクラスに入って来ることがあって、その時は心の中でご挨拶をしていました。
 でも。
 もう、『分かって』いるから。

「よろしくお願いします!」

 わたしも。大きな声で、ご挨拶をしたのでした。

「「「「「……。えっ!?」」」」」
「「「「「え!?」」」」」
「さ、佐倉、さん……!?」
「みんな、先生、わたしは声を出せるようになったんです。今まで全然お返事とかができなくて、ごめんなさい。これからよろしくお願いします!」

 中学校に入学して、3年目。わたしは初めて声を出しました。


 翔くん。
 視聴者さん。
 真鈴さん。
 翔くんのお父さん。
 翔くんのお母さん。
 お父さん。
 お母さん。


 ありがとうございます。
 わたしは昨日だけじゃなくて、今日も――

 笑顔で、新しい一歩を踏み出すことができました!


 
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