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第23話 病院から帰って(3)
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「お待たせしました。こちらをご覧ください」
新しく表示されたのは、7月21日の投稿。
1日1枚投稿が再開して、約2か月後の投稿が出てきました。
「この投稿の、この部分に注目してください。ここの日からまた、投稿が止まっていますよね?」
《は、はい。止まってます》
次にイラストが投稿されたのは、7月31日。10日間イラストがなくなってる。
「その理由は――ペンを持つと心臓の音が異常なほどに大きく速くなって、身体中が汗びっしょりになってしまうから。やる気はあるのに――絵を描きたいと思っているのに描くことができなくなってしまい、投稿ができなくなってしまったんですよ」
《……前も後も、同じ……。もしかして……》
「ええ、そうなんです。『下手クソ』『絵を描くの辞めた方がいいよ』。またそんなリプが来て、精神的にショックを受けてしまったんです」
やっぱり……。
分かっていても、そうなっちゃうよね……。
「投稿すると喜んでくださる人がいてくれて、描きたい、描いてSNS投稿したいという気持ちはあるんです。身体に異変はなにもないんです。けれどペンを握ると、身体がおかしくなって描けなくなってしまう。今も美月さんのような状態になってしまったんです」
《翔くんはどうやって治ったんですか!?》
わたしの配信を楽しみにしてくれている人がいるし、わたしも配信したいと強く思ってる。
だから急いで文字を打ちました。
「僕の場合は、何となくアカウントを――『可愛い』『カッコイイ』『好き』というリプライをもらったイラストとそのリプライを見返していて、そうしていると段々、心の中がポカポカと温かくなってきたんです」
《こころの、なか……》
「それと同時に『描きたい』という気持ちが今まで以上に強く大きくなっていって、その感情を抑えられなくなり、おもわず片づけていたペンを取り出して握ったんですよ。……そうしたら、ずっと起きていたはずの心臓の異変も大量の汗も出てこなくて。また、描けるようになったんですよ」
《じゃあわたしも……!》
「そうですね。美月さんは僕と同じような経験をして、今は現状に対して同じ気持ちを持っているんです。ならば同じようなことをすれば、きっと。同じようになりますよ」
翔くんは自分を指差しながら微笑んでくれて、壁を――こっちは、あれです。防音室がある方向を見ました。
「美月さんにとって『僕の絵』は、葉月ミアの配信。『僕のリプライ』は、視聴者さんからのコメント。あちらで、アーカイブを見てみませんか?」
《はいっ! 見ます!!》
だってわたしも、翔くんみたいになりたいから。
すぐにお返事をして防音室に行って、パソコンの電源を入れて――
新しく表示されたのは、7月21日の投稿。
1日1枚投稿が再開して、約2か月後の投稿が出てきました。
「この投稿の、この部分に注目してください。ここの日からまた、投稿が止まっていますよね?」
《は、はい。止まってます》
次にイラストが投稿されたのは、7月31日。10日間イラストがなくなってる。
「その理由は――ペンを持つと心臓の音が異常なほどに大きく速くなって、身体中が汗びっしょりになってしまうから。やる気はあるのに――絵を描きたいと思っているのに描くことができなくなってしまい、投稿ができなくなってしまったんですよ」
《……前も後も、同じ……。もしかして……》
「ええ、そうなんです。『下手クソ』『絵を描くの辞めた方がいいよ』。またそんなリプが来て、精神的にショックを受けてしまったんです」
やっぱり……。
分かっていても、そうなっちゃうよね……。
「投稿すると喜んでくださる人がいてくれて、描きたい、描いてSNS投稿したいという気持ちはあるんです。身体に異変はなにもないんです。けれどペンを握ると、身体がおかしくなって描けなくなってしまう。今も美月さんのような状態になってしまったんです」
《翔くんはどうやって治ったんですか!?》
わたしの配信を楽しみにしてくれている人がいるし、わたしも配信したいと強く思ってる。
だから急いで文字を打ちました。
「僕の場合は、何となくアカウントを――『可愛い』『カッコイイ』『好き』というリプライをもらったイラストとそのリプライを見返していて、そうしていると段々、心の中がポカポカと温かくなってきたんです」
《こころの、なか……》
「それと同時に『描きたい』という気持ちが今まで以上に強く大きくなっていって、その感情を抑えられなくなり、おもわず片づけていたペンを取り出して握ったんですよ。……そうしたら、ずっと起きていたはずの心臓の異変も大量の汗も出てこなくて。また、描けるようになったんですよ」
《じゃあわたしも……!》
「そうですね。美月さんは僕と同じような経験をして、今は現状に対して同じ気持ちを持っているんです。ならば同じようなことをすれば、きっと。同じようになりますよ」
翔くんは自分を指差しながら微笑んでくれて、壁を――こっちは、あれです。防音室がある方向を見ました。
「美月さんにとって『僕の絵』は、葉月ミアの配信。『僕のリプライ』は、視聴者さんからのコメント。あちらで、アーカイブを見てみませんか?」
《はいっ! 見ます!!》
だってわたしも、翔くんみたいになりたいから。
すぐにお返事をして防音室に行って、パソコンの電源を入れて――
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