VTuberデビュー！ ～自分の声が苦手だったわたしが、VTuberになることになりました～

第１話 そんなわたしの声が……！？（２）

（（……ぶい、ちゅうばー……？　ぶいちゅうばあーって…………あ、思い出したっ。あの人達のことだっ））

　しばらくポカンとなっていたら、頭の中に５～６人くらいの顔が浮かんできた。

　VTuber、正式な名称は『バーチャルユーチューバー』。

　確かイラストを使って色んな配信をする人達のことで、コンビニとか本屋さんとかでよく見かける。カッコイイ男の人とかカワイイ女の人とか色んな人がいて、色んな年齢の人に大人気みたい。

「こら翔（しょう）、突然何を言っているんだ」
「そうよ。急にそんなことを言い出したら、驚いてしまうし困ってしまうでしょう？」
「そ、そうでしたね。……いきなりお願いをしてすいません。僕の話を聞いてもらえますか？」
「………………」《コクコク》

　お父さんとお母さん以外の人達の前で離せないから、もう一回ごめんなさい。頷いて、『はい』のお返事をさせてもらいました。

「ありがとうございます。VTuberは、分かりますか？」
《コクコク》
「実は僕は、３年前から――小学６年生の頃からＳＮＳ上でイラストを描く『絵師』として活動していて、従姉が僕のイラストを使ってVTuberとして活動しているんですよ。こちらが僕のアカウントで、こちらが従姉のチャンネルです」
（（……………………はえ！？　はええ！？））

　出されたスマホの画面を覗いていたわたしは、心の中で２回続けて叫んでしまいました。

《如月タミ　フォロワー数２０２０１１》

《卯月こよみ＠個人勢　チャンネル登録者数２５５４３３》

　フォロワーさんが２０万人以上で、登録者数が２５万以上！？
　スマホはあるけどＳＮＳも動画サイトも殆ど見ないわたしでも、すぐに有名人だって分かりました。

「従姉は先日活動２周年を迎えて、そろそろ仲間が欲しいと――互いに高め合ったり気軽にコラボをしたりできる存在が欲しいと思うようになりましたね。配信をサポートしている僕としても良いことだと思い、新たなキャラクターを生み出したんですよ」
（（……な、なるほど））《コクコク》
「そのため、演者――そのキャラクターの中身を担当する人を探していて、僕のアカウントでオーディションを行っていたんです。でもなかなか合う人が見つからず悩んでいて、そんな時、君の声を聞いてピンと来たんですよ」
（（な、なるほど……。なるほど……………………。え？））

　ピンと来た？　わたしの声を、聞いて？

（（？？？　え？　え……？））
「？？？　どうしましたか？」
（（ええと……。ええと………………そうだ！））《ピンと来たって、どういうことですか？》

　頷きじゃ伝わらないからスマホを取り出して、文字を打って画面をお見せした。そうしたら男の子くんは、

「え？　あ、ああごめんなさい。ちゃんとお伝えしますね」

　たぶん、いきなり画面を見せられて驚いちゃったのだと思う。一瞬キョトンとしたあとすぐにわざわざ頭を下げてくれて――……………………。
　信じられないことを、言ったのでした。


「君の声はすごく可愛くて、僕の描いたキャラクターにピッタリだった。なので、VTuberになってくれませんか？　って、お願いをさせてもらったんですよ」