2 / 42
第1話 そんなわたしの声が……!?(1)
しおりを挟む
「……………………。嫌な夢、見ちゃった……」
中学生最後の夏休みの、一日目。目を覚ますと涙が出ていて、わたしはため息をつきながらハンカチで両目を拭いた。
『佐倉(さくら)ちゃんの声って、変だよね』
『美月(みつき)ちゃんの声って、わたし達と全然違うよね~。高すぎてちょっと気持ち悪い』
『た、高い……。じゃ、じゃあ……。声をすごく低くしてみたら、変じゃなくなる……? ど、どう、かな……?』
『『『『『ぷっ。なにその声!』』』』』
『もっとおかしくなってるよ。ちょっとじゃなくて、すっごく気持ち悪い』
『だったら……。これ、とか……。これ、はどう……? 気持ち悪く、なくなった?』
『『『『『ぶぷっ!』』』』』
『やめてっ、笑いすぎて死んじゃうからっ。ホントやめてっ! お願いっ!』
『もっとおかしくなってるからっ!』
『すっごくを超えて、めちゃくちゃ気持ち悪い。その声、どっから出てるんだろうね?』
『ね~』
『………………。……………………』
一年間ずっと隠してきたけどある日お父さんとお母さんが『おかしい』って気付いて、学校に話しにいってくれた。実は転校する時に『前の学校と違って人数が多いから、美月の声を気にかけてやってください』ってコッソリ学校にお願いしてくれていて、それなのに先生も一緒になっていたから、強く怒ってくれて。
そのおかげで、それから声に関することは直接言われなくなった。
でも……。
あんな風に笑われたってことは、今でもみんな心の中では思っていて……。わたしが声を出したら、影で笑われちゃう……。
だから、怖い。あの時のことが今でも怖くって、トラウマ、っていうのになっちゃってて……。今でもよく、あの時の夢を見てしまうのです……。
「…………どうして、こんな声なのかな……」
みんなと同じような声だったら、あんなことなかったのに。今も楽しく、みんなみたいに教室や外で楽しくお喋りできるのに。
わたしは、ベッドで大きなため息をついて――すぐに、首をブンブン右と左に振る。
「落ち込んじゃダメっ。今日はずっと楽しみにしてた日なんだから、元気でいないと勿体(もったい)ないよね!」
今日はお父さんがお休みを取ってくれていて、3人で1泊2日の旅行に行くの。行き先はずっと行ってみたかったテーマパークで、どんよりしてたらしっかり楽しめなくなっちゃう。
「………………んっ、もう大丈夫っ。夢のことは忘れて、楽しい一日にしよっ!」
もう一回首をブンブン振って気分を切り替えてベッドから降りて、ゴソゴソゴソ。パジャマを脱いでお洋服に着替えて1階に降りて、
「お父さん、お母さん、おはようございます~っ!」
「うん。美月、おはよう」
「美月、おはよう」
ふたりに朝のご挨拶をして、みんな一緒にご飯を食べて、それから1時間くらいした頃かな。出発の準備が整って、出掛けられるようになりました!
「あなた~っ、ごめんなさいっ。こっちの荷物も追加で持っていくようにし――あら? 美月、パパは?」
「車で、カーナビの準備をするって言ってたよ。その荷物を持っていけばいいんだよね? わたしが持っていくよ」
「え。かなり中に入っているけど大丈夫? 持てる?」
「大丈夫だよっ。持ってくね」
田舎で暮らしてた頃に重い物を運んでいたから、今でも全然平気。わたしはボストンバッグを持って玄関に向かい、扉を開けて――
「あっ、お父さんっ! お母さんがね、これもお願いって言ってい」
――玄関前のポーチにお父さんがいたから呼んで、わたしは急いで声を出すのをやめる。
なぜなら……。お父さんの前には、知らない人達が――男の人と女の人と、わたしと同い年くらいの男の子がいたから。
「ぁ……。あのね、美月。隣の家に越してこられて、わざわざご挨拶に来てくださったんだよ」
「驚かせてごめんね。初めまして。田宮良太(たみやりょうすけ)と申します」
「ちょうどお父様のお姿が見えて、ご挨拶させてもらっていたんですよ。わたしは、涼香(すずか)と申します。これからよろしくお願いしますね」
眼鏡をかけた優しそうな人と、ほんわかしたソバージュの人――隣の人さんのお父さんとお母さんは丁寧にご挨拶をしてくれて、
((ごめんなさい))
と心の中で謝りながら、無言でお辞儀をしていた――時でした。
((えっ!?))
――おもわずわたしは、心の中で大きな声を出してしまいました。
なんでかって言うと…………。
「突然ごめんなさいっ。僕のイラストを使って、VTuberになってくれませんかっ?」
急に男の子くんがわたしの前に来て、そんなお願いをされたからです。
中学生最後の夏休みの、一日目。目を覚ますと涙が出ていて、わたしはため息をつきながらハンカチで両目を拭いた。
『佐倉(さくら)ちゃんの声って、変だよね』
『美月(みつき)ちゃんの声って、わたし達と全然違うよね~。高すぎてちょっと気持ち悪い』
『た、高い……。じゃ、じゃあ……。声をすごく低くしてみたら、変じゃなくなる……? ど、どう、かな……?』
『『『『『ぷっ。なにその声!』』』』』
『もっとおかしくなってるよ。ちょっとじゃなくて、すっごく気持ち悪い』
『だったら……。これ、とか……。これ、はどう……? 気持ち悪く、なくなった?』
『『『『『ぶぷっ!』』』』』
『やめてっ、笑いすぎて死んじゃうからっ。ホントやめてっ! お願いっ!』
『もっとおかしくなってるからっ!』
『すっごくを超えて、めちゃくちゃ気持ち悪い。その声、どっから出てるんだろうね?』
『ね~』
『………………。……………………』
一年間ずっと隠してきたけどある日お父さんとお母さんが『おかしい』って気付いて、学校に話しにいってくれた。実は転校する時に『前の学校と違って人数が多いから、美月の声を気にかけてやってください』ってコッソリ学校にお願いしてくれていて、それなのに先生も一緒になっていたから、強く怒ってくれて。
そのおかげで、それから声に関することは直接言われなくなった。
でも……。
あんな風に笑われたってことは、今でもみんな心の中では思っていて……。わたしが声を出したら、影で笑われちゃう……。
だから、怖い。あの時のことが今でも怖くって、トラウマ、っていうのになっちゃってて……。今でもよく、あの時の夢を見てしまうのです……。
「…………どうして、こんな声なのかな……」
みんなと同じような声だったら、あんなことなかったのに。今も楽しく、みんなみたいに教室や外で楽しくお喋りできるのに。
わたしは、ベッドで大きなため息をついて――すぐに、首をブンブン右と左に振る。
「落ち込んじゃダメっ。今日はずっと楽しみにしてた日なんだから、元気でいないと勿体(もったい)ないよね!」
今日はお父さんがお休みを取ってくれていて、3人で1泊2日の旅行に行くの。行き先はずっと行ってみたかったテーマパークで、どんよりしてたらしっかり楽しめなくなっちゃう。
「………………んっ、もう大丈夫っ。夢のことは忘れて、楽しい一日にしよっ!」
もう一回首をブンブン振って気分を切り替えてベッドから降りて、ゴソゴソゴソ。パジャマを脱いでお洋服に着替えて1階に降りて、
「お父さん、お母さん、おはようございます~っ!」
「うん。美月、おはよう」
「美月、おはよう」
ふたりに朝のご挨拶をして、みんな一緒にご飯を食べて、それから1時間くらいした頃かな。出発の準備が整って、出掛けられるようになりました!
「あなた~っ、ごめんなさいっ。こっちの荷物も追加で持っていくようにし――あら? 美月、パパは?」
「車で、カーナビの準備をするって言ってたよ。その荷物を持っていけばいいんだよね? わたしが持っていくよ」
「え。かなり中に入っているけど大丈夫? 持てる?」
「大丈夫だよっ。持ってくね」
田舎で暮らしてた頃に重い物を運んでいたから、今でも全然平気。わたしはボストンバッグを持って玄関に向かい、扉を開けて――
「あっ、お父さんっ! お母さんがね、これもお願いって言ってい」
――玄関前のポーチにお父さんがいたから呼んで、わたしは急いで声を出すのをやめる。
なぜなら……。お父さんの前には、知らない人達が――男の人と女の人と、わたしと同い年くらいの男の子がいたから。
「ぁ……。あのね、美月。隣の家に越してこられて、わざわざご挨拶に来てくださったんだよ」
「驚かせてごめんね。初めまして。田宮良太(たみやりょうすけ)と申します」
「ちょうどお父様のお姿が見えて、ご挨拶させてもらっていたんですよ。わたしは、涼香(すずか)と申します。これからよろしくお願いしますね」
眼鏡をかけた優しそうな人と、ほんわかしたソバージュの人――隣の人さんのお父さんとお母さんは丁寧にご挨拶をしてくれて、
((ごめんなさい))
と心の中で謝りながら、無言でお辞儀をしていた――時でした。
((えっ!?))
――おもわずわたしは、心の中で大きな声を出してしまいました。
なんでかって言うと…………。
「突然ごめんなさいっ。僕のイラストを使って、VTuberになってくれませんかっ?」
急に男の子くんがわたしの前に来て、そんなお願いをされたからです。
10
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪

悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる