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プロローグ わたしの声
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「佐倉(さくら)ちゃんの声って、変だよね」
「美月(みつき)ちゃんの声って、わたし達と全然違うよね~。高すぎてちょっと気持ち悪い」
そんな風に言われるようになったのは、お父さんのお仕事の都合で田舎から都会に引っ越してきてから――小学4年生になった頃からでした。
前の学校の時から、『変わった声をしてる』って言われてはいたんだけど……。新しい学校ではわたしが喋ると毎回みんなに注目されるようになって、いっつもそのあと『変』『気持ち悪い』って笑われる。男の子も女の子も、先生だっておんなじで、わたしを指さしてケラケラ笑うんだよね……。
「た、高い……。じゃ、じゃあ……。声をすごく低くしてみたら、変じゃなくなる……? ど、どう、かな……?」
「「「「「ぷっ。なにその声!」」」」」
「もっとおかしくなってるよ。ちょっとじゃなくて、すっごく気持ち悪い」
「だったら……。これ、とか……。これ、はどう……? 気持ち悪く、なくなった?」
「「「「「ぶぷっ!」」」」」
「やめてっ、笑いすぎて死んじゃうからっ。ホントやめてっ! お願いっ!」
「もっとおかしくなってるからっ!」
「すっごくを超えて、めちゃくちゃ気持ち悪い。あの声、どっから出てるんだろうね?」
「ね~」
「………………。……………………」
笑われないように色々頑張ってみたけど、全然ダメで……。余計に笑われるようになっちゃって……。
「今日は嫌なことがあったから、思いっきり笑いたいの。ねえ美月ちゃん、何か喋ってみてよ。それと、またあの声もやってよ」
「…………………………………………」
「? 美月ちゃん? 美月ちゃん、聞こえてるの?」
「…………………………………………」
「ねえ、ねえってばっ。美月ちゃん! ウチの声聞こえてるのっ?」
「…………………………………………」
毎日毎日喋るたびに笑われるのは悲しくて、このままだと学校に行けなくなっちゃうから……。
転校してから1年後。わたしは悲しくならないように、喋るのをやめた。
「ねえねえ、昨日の動画見た?」
「うん、見たみたっ。すっごく面白かったよね~」
((…………みんな、いいなぁ))
わたしはお喋りが大好きで、本当はみんなとお話ししたい。でも声を出すと笑われちゃうから、できなくって……。
中学3年生になった今でも、家族の前以外では声を出せずにいます。
「美月(みつき)ちゃんの声って、わたし達と全然違うよね~。高すぎてちょっと気持ち悪い」
そんな風に言われるようになったのは、お父さんのお仕事の都合で田舎から都会に引っ越してきてから――小学4年生になった頃からでした。
前の学校の時から、『変わった声をしてる』って言われてはいたんだけど……。新しい学校ではわたしが喋ると毎回みんなに注目されるようになって、いっつもそのあと『変』『気持ち悪い』って笑われる。男の子も女の子も、先生だっておんなじで、わたしを指さしてケラケラ笑うんだよね……。
「た、高い……。じゃ、じゃあ……。声をすごく低くしてみたら、変じゃなくなる……? ど、どう、かな……?」
「「「「「ぷっ。なにその声!」」」」」
「もっとおかしくなってるよ。ちょっとじゃなくて、すっごく気持ち悪い」
「だったら……。これ、とか……。これ、はどう……? 気持ち悪く、なくなった?」
「「「「「ぶぷっ!」」」」」
「やめてっ、笑いすぎて死んじゃうからっ。ホントやめてっ! お願いっ!」
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「ね~」
「………………。……………………」
笑われないように色々頑張ってみたけど、全然ダメで……。余計に笑われるようになっちゃって……。
「今日は嫌なことがあったから、思いっきり笑いたいの。ねえ美月ちゃん、何か喋ってみてよ。それと、またあの声もやってよ」
「…………………………………………」
「? 美月ちゃん? 美月ちゃん、聞こえてるの?」
「…………………………………………」
「ねえ、ねえってばっ。美月ちゃん! ウチの声聞こえてるのっ?」
「…………………………………………」
毎日毎日喋るたびに笑われるのは悲しくて、このままだと学校に行けなくなっちゃうから……。
転校してから1年後。わたしは悲しくならないように、喋るのをやめた。
「ねえねえ、昨日の動画見た?」
「うん、見たみたっ。すっごく面白かったよね~」
((…………みんな、いいなぁ))
わたしはお喋りが大好きで、本当はみんなとお話ししたい。でも声を出すと笑われちゃうから、できなくって……。
中学3年生になった今でも、家族の前以外では声を出せずにいます。
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