全てを失った私ですが、以前より幸せです

柚木ゆず

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第4話 予想外の出来事が 俯瞰視点(1)

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「まぁ、まぁ……! 素晴らしい景色だわ……!」

 あれから、およそ24時間後。ルアンの姿は目的地・リンファエズ湖にあり、感嘆の息を吐き出していました。

 美しい緑と水面。澄み切った世界の中に優雅に佇む、真白の鳥たち。

 周囲の景色と冬の来訪者たちが作り出す光景は非常に美しく、想像以上の絶景が広がっていたのです。

「この感動は、生でしか味わえない。やはり訪れて正解、大正解だわ」

 あたりを見回しながら何度も何度も頷き、再度感嘆の息を吐き――。しかしながらそのあとすぐ、嘆息が漏れました。

「? お嬢様? どうかなさいましたか……?」
「せっかくの景色なのに、すぐ邪魔者が入り込む。空気を読めない者達に嫌気がさすわ」

 この時期のリンファエズ湖は、人気スポット。貴族だけではなく多くの平民たちも訪れます。
 そのため賑々しさがありますし、頻繁に視界に人間が入り込んできます。耳や目を邪魔されることが、不愉快極まりなかったのです。

「どうせ、平民如きにこの良さは100パーセント理解できない。来る資格がないのだから、家で大人しくしてればいいものを」

 それだったら純粋にこの景色を楽しめるし、煩わしい変装なしでじっくりこの空間に浸れるのに――。石ころのせいで台無しだ――。
 ルアンは腕組みをしながらもう一回大きなため息を吐き、2時の方角を一瞥しました。

「こっちが犠牲にならないといけないのは癪だけど、仕方ないわね。あっちに移動するわよ」

 視線の先にある場所は人が少なく、多少は落ち着いて楽しめる。貴族の方が動かないといけないことにいら立ちを覚えながら場所を移し、持って来させたアウトドア用のチェアに腰をかけ――ようとしてたルアンでしたが、そんな彼女の動きは止まることとなりました。

「チっ。わざわざ移動したのに……!」

 後ろが急に騒がしくなり振り向いてみると、11人の男児女児を連れた2人の男女がやって来ていた。そのせいでむしろさっきよりも騒がしい場所となってしまい、大きく舌を鳴らしました。

「次から次へと湧いて来て……! まるでゴキブリだわ。貴方たちっ、別の場所に移動するわよ――なっ!?」

 怒りによって吊り上げっていたルアンの目が、突然丸くなりました。なぜかというと――

((エレア!?))

 ――よくよく見てみると、その男女の片割れは因縁・・の相手だったからです。


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