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プロローグ エレア・ファーティナ視点(2)
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「………………」
「「「「「…………」」」」」
「お、お母様、皆さんっ、わたしです! お父様とお母様の娘のエレアです! わたしが分からないのですか!?」
名前。生年月日。今日、朝起きてから今に至るまでの行動。お父様とお母様の趣味好みを含めた、家族でないと知り得ない情報。あらゆるものを、早口でお伝えしました。
そうしたら――
「「「「「………………」」」」」
「わたくしは、エレアという名の子を産んだ覚えはないわ。もう少しマシな嘘を吐きなさい」
――それでも、変わらない。
誰一人として、信じてくれる人はいませんでした。
「嘘ではありませんっ、確かに産んでいるんです! その証拠に――日記などの記録をご確認ください! わたしエレアに関する記載が多数あります!」
出生時に作るコインなど、エレアが存在している証拠はあちこちにある。それらを調べてもらえたら、記憶はなくとも理解してもらえるはずです。
「お願いします!! お父様お母様!! 確認をしてみてください!!」
「…………確認による悪影響は、明らかにない。ならば……」
「そうね、あなた。そこまで言うなら確かめてみましょう」
よかった。仰られているように害はまったくないため要求が通り、確認が行われることになりました。
お父様とお母様はわたしの監視を命じてその場を離れ、20分くらい経ったでしょうか。しばらくすると揃って戻ってこられて――
「やはり、エレアに関する記載はなかったぞ」
「あちこち探したけれど、その三文字はどこにもなかった。あなたが訴えていた『記憶の欠如』は完全に否定されたわ」
――信じ、られません……。わたしに関する情報は、すべてなくなっていました……。
しかも、おかしな点はそれだけではありません。
ならばと、わたしの部屋の中も確認してもらったのですが……。いつの間にか姉の別室と認識されてしまっていた上に、エレアの実在を証明できるようなものが全てなくなっていたんです。
「……どういうこと、なのですか……? なぜ、こんなことに……?」
「エレアなんて人間は元から存在していないのだから、当たり前だ。……もう気は済んだな」
「侵入経路が不明な、意味不明な発言を繰り返す女。そんな人間、これ以上近くにおいておけないわ。連れて行って頂戴」
「お待ちください!! お父様お母様――あぁっ!!」
懸命に訴えたものの、通じませんでした。わたしは拘束されてお屋敷から引きずり出され、まるでゴミを扱うかのように門の外へと放り出されてしまいました。
「今回は特別に見逃してやる。今度近づいたら命はないと思え。旦那様と奥様からのお言葉だ」
「死にたくなければ早急に去れ。いいな?」
「…………承知いたしました」
存在していた記録も記憶もないのであれば、信じてもらえるはずがありません。わたしは説得を諦め、とにかくお屋敷から離れることにしました。
「……わたしに関する記憶が、すべてなくなっているだなんて……。何が起きているのでしょうか……」
「……伯爵令嬢のわたしが外を独りで歩いていても、誰も驚いていない……。異変が起きているのは、お屋敷の中だけではなかったのですね……」
こんな荒唐無稽なことがこんな規模で起きるだなんて。どうなっているの……?
突如起きた異変の原因を考えながら、当てもなく歩き――孤独な時間が、5分ほど続いた頃でした。不意にわたしは、予想外な形でその原因を知ることとなるのでした。
「ごきげんよう、エレア。ひとりで歩いているということは、上手くいったみたいね」
「「「「「…………」」」」」
「お、お母様、皆さんっ、わたしです! お父様とお母様の娘のエレアです! わたしが分からないのですか!?」
名前。生年月日。今日、朝起きてから今に至るまでの行動。お父様とお母様の趣味好みを含めた、家族でないと知り得ない情報。あらゆるものを、早口でお伝えしました。
そうしたら――
「「「「「………………」」」」」
「わたくしは、エレアという名の子を産んだ覚えはないわ。もう少しマシな嘘を吐きなさい」
――それでも、変わらない。
誰一人として、信じてくれる人はいませんでした。
「嘘ではありませんっ、確かに産んでいるんです! その証拠に――日記などの記録をご確認ください! わたしエレアに関する記載が多数あります!」
出生時に作るコインなど、エレアが存在している証拠はあちこちにある。それらを調べてもらえたら、記憶はなくとも理解してもらえるはずです。
「お願いします!! お父様お母様!! 確認をしてみてください!!」
「…………確認による悪影響は、明らかにない。ならば……」
「そうね、あなた。そこまで言うなら確かめてみましょう」
よかった。仰られているように害はまったくないため要求が通り、確認が行われることになりました。
お父様とお母様はわたしの監視を命じてその場を離れ、20分くらい経ったでしょうか。しばらくすると揃って戻ってこられて――
「やはり、エレアに関する記載はなかったぞ」
「あちこち探したけれど、その三文字はどこにもなかった。あなたが訴えていた『記憶の欠如』は完全に否定されたわ」
――信じ、られません……。わたしに関する情報は、すべてなくなっていました……。
しかも、おかしな点はそれだけではありません。
ならばと、わたしの部屋の中も確認してもらったのですが……。いつの間にか姉の別室と認識されてしまっていた上に、エレアの実在を証明できるようなものが全てなくなっていたんです。
「……どういうこと、なのですか……? なぜ、こんなことに……?」
「エレアなんて人間は元から存在していないのだから、当たり前だ。……もう気は済んだな」
「侵入経路が不明な、意味不明な発言を繰り返す女。そんな人間、これ以上近くにおいておけないわ。連れて行って頂戴」
「お待ちください!! お父様お母様――あぁっ!!」
懸命に訴えたものの、通じませんでした。わたしは拘束されてお屋敷から引きずり出され、まるでゴミを扱うかのように門の外へと放り出されてしまいました。
「今回は特別に見逃してやる。今度近づいたら命はないと思え。旦那様と奥様からのお言葉だ」
「死にたくなければ早急に去れ。いいな?」
「…………承知いたしました」
存在していた記録も記憶もないのであれば、信じてもらえるはずがありません。わたしは説得を諦め、とにかくお屋敷から離れることにしました。
「……わたしに関する記憶が、すべてなくなっているだなんて……。何が起きているのでしょうか……」
「……伯爵令嬢のわたしが外を独りで歩いていても、誰も驚いていない……。異変が起きているのは、お屋敷の中だけではなかったのですね……」
こんな荒唐無稽なことがこんな規模で起きるだなんて。どうなっているの……?
突如起きた異変の原因を考えながら、当てもなく歩き――孤独な時間が、5分ほど続いた頃でした。不意にわたしは、予想外な形でその原因を知ることとなるのでした。
「ごきげんよう、エレア。ひとりで歩いているということは、上手くいったみたいね」
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