30 / 37
第19話 二人の本音~オフェリーside~ 俯瞰視点
しおりを挟む
「あ~あ、侯爵夫人になれると思っていたのに。計画が台無しになっちゃったわ」
今からおよそ、1・2年前のこと。応接室にてアドンと共に号泣して別れた、その僅か1分後のことでした。オフェリー・フェフィリアはハンカチで涙を拭い、チッと舌を鳴らしました。
『その……。ぇと……。光栄なこと、ですけど……。お返事は、もう少しアドン様を知ってからでも……。構わない、でしょうか……?』
『一緒に過ごすたびに、わたしの中ですごく速い勢いで、アドン様の存在が大きくなっていって。ですので、その……っ。わたしも……。すき、です。アドン様を、愛しています……っ』
彼女がかつてアドンに贈った言葉は、アドンに見せていた姿は、全てが偽り。オフェリーにアドンに対する愛は全くなく、侯爵夫人であり商会頭夫人となりたいがために――高い地位と豊富な財を手にするために、関係を持っていたのです。
高位の男を引き寄せるべくずっと擬態をし、常に目を光らせていたのです。
「オフェリーよ。せっかくの努力が無駄になってしまったな」
「そうね、お父様。でも、全部が無駄になってはいないわ」
「……ふむ。やはり、保険を用意していたのか」
「ええもちろん。ココと部屋にあるものを使えば、いずれ大きな幸せをもたらしてくれるわ」
さっき渡されたネックレスと、これまで何通も送られてきていた手紙。これらを上手く使えば『浮気の証拠』となり、それをチラつかせば様々な脅しをかけられます。
――こんな形でいきなり愛を告げてきた男は、いずれ新たな『運命の人』を見つける可能性が高い――。
そう読んでいたオフェリーは、そうなった場合でもたっぷりと得をできるようにしていました。その『武器』を手にするために交際中に何度も手紙をねだり、先程はああして『アドンの私物』を入手していたのです。
「次期会頭が結婚したあとで浮気が発覚すれば、大きなスキャンダルになってしまうものね。適切なタイミングでこれを出せば、たっぷりとお金が手に入るわ」
そんな理由でオフェリーは静かにその時を待ち、ついに今日、最適だと判断されたことによって計画は決行されたのでした。
そして――
今からおよそ、1・2年前のこと。応接室にてアドンと共に号泣して別れた、その僅か1分後のことでした。オフェリー・フェフィリアはハンカチで涙を拭い、チッと舌を鳴らしました。
『その……。ぇと……。光栄なこと、ですけど……。お返事は、もう少しアドン様を知ってからでも……。構わない、でしょうか……?』
『一緒に過ごすたびに、わたしの中ですごく速い勢いで、アドン様の存在が大きくなっていって。ですので、その……っ。わたしも……。すき、です。アドン様を、愛しています……っ』
彼女がかつてアドンに贈った言葉は、アドンに見せていた姿は、全てが偽り。オフェリーにアドンに対する愛は全くなく、侯爵夫人であり商会頭夫人となりたいがために――高い地位と豊富な財を手にするために、関係を持っていたのです。
高位の男を引き寄せるべくずっと擬態をし、常に目を光らせていたのです。
「オフェリーよ。せっかくの努力が無駄になってしまったな」
「そうね、お父様。でも、全部が無駄になってはいないわ」
「……ふむ。やはり、保険を用意していたのか」
「ええもちろん。ココと部屋にあるものを使えば、いずれ大きな幸せをもたらしてくれるわ」
さっき渡されたネックレスと、これまで何通も送られてきていた手紙。これらを上手く使えば『浮気の証拠』となり、それをチラつかせば様々な脅しをかけられます。
――こんな形でいきなり愛を告げてきた男は、いずれ新たな『運命の人』を見つける可能性が高い――。
そう読んでいたオフェリーは、そうなった場合でもたっぷりと得をできるようにしていました。その『武器』を手にするために交際中に何度も手紙をねだり、先程はああして『アドンの私物』を入手していたのです。
「次期会頭が結婚したあとで浮気が発覚すれば、大きなスキャンダルになってしまうものね。適切なタイミングでこれを出せば、たっぷりとお金が手に入るわ」
そんな理由でオフェリーは静かにその時を待ち、ついに今日、最適だと判断されたことによって計画は決行されたのでした。
そして――
2
お気に入りに追加
1,779
あなたにおすすめの小説

下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

拝啓、王太子殿下さま 聞き入れなかったのは貴方です
LinK.
恋愛
「クリスティーナ、君との婚約は無かった事にしようと思うんだ」と、婚約者である第一王子ウィルフレッドに婚約白紙を言い渡されたクリスティーナ。
用意された書類には国王とウィルフレッドの署名が既に成されていて、これは覆せないものだった。
クリスティーナは書類に自分の名前を書き、ウィルフレッドに一つの願いを叶えてもらう。
違うと言ったのに、聞き入れなかったのは貴方でしょう?私はそれを利用させて貰っただけ。

他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。
第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。
その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。
追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。
ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。
私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。

幼馴染は不幸の始まり
mios
恋愛
「アリスの体調が悪くなって、申し訳ないがそちらに行けなくなった。」
何度目のキャンセルだろうか。
クラリッサの婚約者、イーサンは幼馴染アリスを大切にしている。婚約者のクラリッサよりもずっと。

完璧令嬢が仮面を外す時
編端みどり
恋愛
※本編完結、番外編を更新中です。
冷たいけど完璧。それが王太子の婚約者であるマーガレットの評価。
ある日、婚約者の王太子に好きな人ができたから婚約を解消して欲しいと頼まれたマーガレットは、神妙に頷きながら内心ガッツポーズをしていた。
王太子は優しすぎて、マーガレットの好みではなかったからだ。
婚約を解消するには長い道のりが必要だが、自分を愛してくれない男と結婚するより良い。そう思っていたマーガレットに、身内枠だと思っていた男がストレートに告白してきた。
実はマーガレットは、恋愛小説が大好きだった。憧れていたが自分には無関係だと思っていた甘いシチュエーションにキャパオーバーするマーガレットと、意地悪そうな笑みを浮かべながら微笑む男。
彼はマーガレットの知らない所で、様々な策を練っていた。
マーガレットは彼の仕掛けた策を解明できるのか?
全24話 ※話数の番号ずれてました。教えて頂きありがとうございます!
※アルファポリス様と、カクヨム様に投稿しています。
大好きなあなたを忘れる方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。
魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。
登場人物
・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。
・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。
・イーライ 学園の園芸員。
クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。
・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。
・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。
・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。
・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。
・マイロ 17歳、メリベルの友人。
魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。
魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。
ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる