27 / 37
第17話 ……え……? アドン視点
しおりを挟む
「え……? え? え…………?」
平身低頭で失言を謝罪していた俺は、おもわず固まってしまう。
最愛の、ひと……? 俺のせいで、一緒にいられなくなった……?
「なに間抜けにポカンとしてるのよ!! ちゃんと喋りなさいよ!!」
「ま、待ってくれエステェ。君の叫びを理解できないんだよ。最愛の人はここに、目の前にいるじゃないか……?」
俺と夫婦になって今は真ん前にいるのに、一緒にいられないって。どういうことなんだ……? 彼女は、何を言っているんだ……?
「ここにいる!? はっ。まさかアンタ、自分が最愛の人だと思ってるの!?」
「あ、ああ、当然そう思っている」
だってあの日――まだメリッサと関係を持っている時に想いを告げ合って、色々な場所に行って様々な思い出を作ってきたんだ。実際に何度も愛の言葉を贈られたんだ。
そう思わない方がおかしい。
「ぷっ! バカね!! アンタへの愛なんてとっくに消えてるわよ!! 自惚れるな!! 私が愛しているのはねぇっ! ピエール様よ!!」
……………………。
ヴィラックラル商会の右腕を父に持つ、界隈では有名なサネベーク子爵家のピエール。エステェは、ヤツを愛している……?
「な、なんの冗談なんだい? タチの悪いジョークはやめてくれ――」
「これが冗談に見える!? 事実よ事実!! 私の心はねっ、あの方と共にあるのよ!!」
今から1年と2か月前――メリッサとの婚約を白紙にして交際を始めてから、わずか1か月後……。パーティーで偶然ピエールを見掛け、一目惚れをして…………。
恋仲に、なっていたらしい…………。
「私の中ではあの方が一番になっていて! アンタと別れてピエール様と結婚するつもりだったのよ!! なのにアンタの父親と私の父親がふざけたことを言い出して結託したせいでっ!! 2番目なっ、とうに好きではなくなってるアンタと結婚しなくちゃならなくなったのよ!!」
「そ、そんな……。で、でも……。君はずっと、暗い顔をして――まさか!」
「まさか! じゃないわよ!! そうに決まってるでしょ!! 2番といるからあんな風になっていたのよ!!」
や、やっぱり……。そう、だったのか…………。
「アンタのせいで最悪な毎日になって、けどねっ、我慢をしてあげてたのよ!! なのにっ、あんなふざけたことを言い出すから我慢できなくなったのよっ!! 『お前は幸せでいい』? 冗談じゃないわぁあああああああああああ!!」
エステェは絶叫と共に右手を振り抜き、俺は左頬に強烈な平手打ちを喰らった。
だから……。だから…………!
ぷつり。
俺の中で、何かがキレる音がして――
平身低頭で失言を謝罪していた俺は、おもわず固まってしまう。
最愛の、ひと……? 俺のせいで、一緒にいられなくなった……?
「なに間抜けにポカンとしてるのよ!! ちゃんと喋りなさいよ!!」
「ま、待ってくれエステェ。君の叫びを理解できないんだよ。最愛の人はここに、目の前にいるじゃないか……?」
俺と夫婦になって今は真ん前にいるのに、一緒にいられないって。どういうことなんだ……? 彼女は、何を言っているんだ……?
「ここにいる!? はっ。まさかアンタ、自分が最愛の人だと思ってるの!?」
「あ、ああ、当然そう思っている」
だってあの日――まだメリッサと関係を持っている時に想いを告げ合って、色々な場所に行って様々な思い出を作ってきたんだ。実際に何度も愛の言葉を贈られたんだ。
そう思わない方がおかしい。
「ぷっ! バカね!! アンタへの愛なんてとっくに消えてるわよ!! 自惚れるな!! 私が愛しているのはねぇっ! ピエール様よ!!」
……………………。
ヴィラックラル商会の右腕を父に持つ、界隈では有名なサネベーク子爵家のピエール。エステェは、ヤツを愛している……?
「な、なんの冗談なんだい? タチの悪いジョークはやめてくれ――」
「これが冗談に見える!? 事実よ事実!! 私の心はねっ、あの方と共にあるのよ!!」
今から1年と2か月前――メリッサとの婚約を白紙にして交際を始めてから、わずか1か月後……。パーティーで偶然ピエールを見掛け、一目惚れをして…………。
恋仲に、なっていたらしい…………。
「私の中ではあの方が一番になっていて! アンタと別れてピエール様と結婚するつもりだったのよ!! なのにアンタの父親と私の父親がふざけたことを言い出して結託したせいでっ!! 2番目なっ、とうに好きではなくなってるアンタと結婚しなくちゃならなくなったのよ!!」
「そ、そんな……。で、でも……。君はずっと、暗い顔をして――まさか!」
「まさか! じゃないわよ!! そうに決まってるでしょ!! 2番といるからあんな風になっていたのよ!!」
や、やっぱり……。そう、だったのか…………。
「アンタのせいで最悪な毎日になって、けどねっ、我慢をしてあげてたのよ!! なのにっ、あんなふざけたことを言い出すから我慢できなくなったのよっ!! 『お前は幸せでいい』? 冗談じゃないわぁあああああああああああ!!」
エステェは絶叫と共に右手を振り抜き、俺は左頬に強烈な平手打ちを喰らった。
だから……。だから…………!
ぷつり。
俺の中で、何かがキレる音がして――
3
お気に入りに追加
1,776
あなたにおすすめの小説
バイバイ、旦那様。【本編完結済】
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
妻シャノンが屋敷を出て行ったお話。
この作品はフィクションです。
作者独自の世界観です。ご了承ください。
7/31 お話の至らぬところを少し訂正させていただきました。
申し訳ありません。大筋に変更はありません。
8/1 追加話を公開させていただきます。
リクエストしてくださった皆様、ありがとうございます。
調子に乗って書いてしまいました。
この後もちょこちょこ追加話を公開予定です。
甘いです(個人比)。嫌いな方はお避け下さい。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】
青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。
そして気付いてしまったのです。
私が我慢する必要ありますか?
※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定!
コミックシーモア様にて12/25より配信されます。
コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。
リンク先
https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/
【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?
蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」
ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。
リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。
「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」
結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。
愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。
これからは自分の幸せのために生きると決意した。
そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。
「迎えに来たよ、リディス」
交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。
裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。
※完結まで書いた短編集消化のための投稿。
小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。
婚約者とその幼なじみの距離感の近さに慣れてしまっていましたが、婚約解消することになって本当に良かったです
珠宮さくら
恋愛
アナスターシャは婚約者とその幼なじみの距離感に何か言う気も失せてしまっていた。そんな二人によってアナスターシャの婚約が解消されることになったのだが……。
※全4話。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる