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第17話 ……え……? アドン視点

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「え……? え? え…………?」

 平身低頭で失言を謝罪していた俺は、おもわず固まってしまう。
 最愛の、ひと……? 俺のせいで、一緒にいられなくなった……?

「なに間抜けにポカンとしてるのよ!! ちゃんと喋りなさいよ!!」
「ま、待ってくれエステェ。君の叫びを理解できないんだよ。最愛の人はここに、目の前にいるじゃないか……?」

 俺と夫婦になって今は真ん前にいるのに、一緒にいられないって。どういうことなんだ……? 彼女は、何を言っているんだ……?

「ここにいる!? はっ。まさかアンタ、自分が最愛の人だと思ってるの!?」
「あ、ああ、当然そう思っている」

 だってあの日――まだメリッサと関係を持っている時に想いを告げ合って、色々な場所に行って様々な思い出を作ってきたんだ。実際に何度も愛の言葉を贈られたんだ。
 そう思わない方がおかしい。

「ぷっ! バカね!! アンタへの愛なんてとっくに消えてるわよ!! 自惚れるな!! 私が愛しているのはねぇっ! ピエール様よ!!」

 ……………………。
 ヴィラックラル商会の右腕を父に持つ、界隈では有名なサネベーク子爵家のピエール。エステェは、ヤツを愛している……?

「な、なんの冗談なんだい? タチの悪いジョークはやめてくれ――」
「これが冗談に見える!? 事実よ事実!! 私の心はねっ、あの方と共にあるのよ!!」

 今から1年と2か月前――メリッサとの婚約を白紙にして交際を始めてから、わずか1か月後……。パーティーで偶然ピエールを見掛け、一目惚れをして…………。
 恋仲に、なっていたらしい…………。

「私の中ではあの方が一番になっていて! アンタと別れてピエール様と結婚するつもりだったのよ!! なのにアンタの父親と私の父親がふざけたことを言い出して結託したせいでっ!! 2番目なっ、とうに好きではなくなってるアンタと結婚しなくちゃならなくなったのよ!!」
「そ、そんな……。で、でも……。君はずっと、暗い顔をして――まさか!」
「まさか! じゃないわよ!! そうに決まってるでしょ!! 2番といるからあんな風になっていたのよ!!」

 や、やっぱり……。そう、だったのか…………。

「アンタのせいで最悪な毎日になって、けどねっ、我慢をしてあげてた・・・・のよ!! なのにっ、あんなふざけたことを言い出すから我慢できなくなったのよっ!! 『お前は幸せでいい』? 冗談じゃないわぁあああああああああああ!!」

 エステェは絶叫と共に右手を振り抜き、俺は左頬に強烈な平手打ちを喰らった。
 だから……。だから…………!

 ぷつり。

 俺の中で、何かがキレる音がして――

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