幼馴染と婚約者を裏切った2人の末路

柚木ゆず

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第9話 続く予想外 エステェ視点(2)

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「承知いたしました。私エステェは、貴方様に協力致します」

 アドン様以上に、沈痛な面持ちで。『辛いけど愛する人のためにやる』という感情を全面的に出しながら、下がっている頭に向けて返事を行った。

「私にとって貴方様は、この世界で一番愛している方。そんな人と離れてしまうのは、とても悲しいことですが……。それでも、大好きな人が何よりの幸せを手に入れられるのなら……。喜んで動かせていただきます」
「エステェ……! ありがとうっ! ありがとう……っ!!」

 バッと顔を上げたアドン様は大急ぎで立ち上がり、涙を零しながら身を乗り出して私の両手を握りしめた。

「こんな俺を許してくれた上に、手を差し伸べてくれて……。ありがとう……! すまない……! ありがとう……!!」
「お気になさらないでください。ではこちらのお話を、お父様にお伝えしてまいりますね」
「エステェ、卿にも謝罪をしておきたいんだ。俺も同行させてほしい」
「アドン様、そちらは少々待っていただきたく思います。そういったお話は性質上、二人きりの方が行いやすいので」

 というのは偽りで、その場に同席させないのは別の理由がある。

 こんなことになったけど、大金を得られる上にすでに素敵な恋人がいるんですよ。

 そう伝えたら言わずもがな大歓迎されて、色々と手助けてしてくれる。アドン様に気付かれないように、会うことだってできる。
 なので私は配慮をするフリをして、単身で執務室へと向かって――

「あのヴィラックラル商会の次期右腕と!? よくやったぞエステェっ! お前は素晴らしい先見の明の持ち主だっ!」

 お父様は嬉々として、全てを受け入れてくれた。

「お父様、アドン様は私が好意を抱いていると思い込んでいるの。くれぐれも本心を悟られないようにしてくださいまし」
「無論だ。……ではわたしも合流し、作戦を練ろうじゃないか」

 おじ様アドンの父は私をいたく買っていて、『罪悪感があるから別れたい』と言い出したらあの手この手で引き留めようとする。非公式とはいえ婚約の書類を交わしている以上、強く出られると面倒なことになってしまう。
 そこでそれをスムーズに捌けるようにするため、ここからはお父様も含め三人で思案を始めることになった。

((あちらは侯爵家で、こちらは伯爵家。アドン様の協力があっても、なかなかに苦労する問題だと思うけど――))

 今はとてつもなく、良い流れが来てるんだもの。
 きっと、大丈夫。するりとアイディアが浮かぶはずだわ。

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