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第8話 会わない間に起きていたこと、困ったこと アドン視点(2)
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「なんだと!? 別の相手を好きになり、秘密裏に会っていたっ!? おまけに交際を始めただとっ!?」
オフェリーと恋仲になったため、その件とエステェとの縁切りに関する話をした直後――直後よりも速い、刹那のタイミングだった。邸内にある執務室に、父上の怒声が響き渡った。
「なにをやっているんだ!! なぜ黙っていた!?」
「父上は多忙な上、隣国にいらっしゃいましたので……。邪魔をしてはいけないと思い、独断で動いておりました」
「馬鹿者!! そんな感情があるのならば、そもそもそんな真似をするな!! お前がしたことはっ、しようとしていることはっ、どれだけのことが分かっているのか!?」
国外に多数の繋がりを持つ上に、二か国語を巧みに操れる人間を手放そうとしているんだぞ――。我が商会の大きな武器を捨てようとしているんだぞ――。
父上は信じられない程の早口で、それらを一気にまくし立てた。
「くだんの相手に夢中になり、エステェ嬢を適当にあしらっていたのは不幸中の幸いだ。……アドン。ここまで言えば分かるだろう」
「…………もしや……。オフェリーとの関係は……。認めないと、おっしゃるのですか……!?」
「当たり前だ!! こうして折角、最良の存在を手中に収めたのだ! 手放すことは許さんぞっ!!」
父上はメリッサを気に入っていたが、それ以上に――比にならない程に、エステェを気に入っていた。そのため一喝され、せっかく生まれた1番の人との縁を切り、今は2番手となった女と生涯を共にしないといけなくなってしまったのだった。
((オフェリーじゃなくて、エステェと夫婦になる!? 嫌だ……! そんな未来は絶対に阻止してやる……!!))
そこで俺はそうしなくても済む方法を死に物狂いで考え始め、一種の『火事場の馬鹿力』なのだろう。
((はぁ、はぁ、はぁ……。やった……! やったぞ……!!))
二連続で徹夜をする羽目になってしまったものの、いいアイディアが閃いたのだった。
((これならいける。きっといけるぞ……!!))
エステェは俺の幸せを願っていたし、なにより『最高のお礼』がある。これからが合わされば、高確率で成功する。
そして成功した暁には――。必然的に、父上はオフェリーとの仲を認めざるを得なくなってしまうのだ。
((頼むぞ……! 上手くいってくれ……!!))
高確率ではあるものの、100パーセントの成功が保証されているものではない。そのため俺は緊張しながらエステェのもとを目指し、ある程度場が温まったら――
「エステェ。俺はね、真に愛する人を見つけてしまったんだよ。だから別れてもらいたいんだ」
まずは用意していた台詞を出し、真なる幸せを掴み取るべく動き出したのだった――。
オフェリーと恋仲になったため、その件とエステェとの縁切りに関する話をした直後――直後よりも速い、刹那のタイミングだった。邸内にある執務室に、父上の怒声が響き渡った。
「なにをやっているんだ!! なぜ黙っていた!?」
「父上は多忙な上、隣国にいらっしゃいましたので……。邪魔をしてはいけないと思い、独断で動いておりました」
「馬鹿者!! そんな感情があるのならば、そもそもそんな真似をするな!! お前がしたことはっ、しようとしていることはっ、どれだけのことが分かっているのか!?」
国外に多数の繋がりを持つ上に、二か国語を巧みに操れる人間を手放そうとしているんだぞ――。我が商会の大きな武器を捨てようとしているんだぞ――。
父上は信じられない程の早口で、それらを一気にまくし立てた。
「くだんの相手に夢中になり、エステェ嬢を適当にあしらっていたのは不幸中の幸いだ。……アドン。ここまで言えば分かるだろう」
「…………もしや……。オフェリーとの関係は……。認めないと、おっしゃるのですか……!?」
「当たり前だ!! こうして折角、最良の存在を手中に収めたのだ! 手放すことは許さんぞっ!!」
父上はメリッサを気に入っていたが、それ以上に――比にならない程に、エステェを気に入っていた。そのため一喝され、せっかく生まれた1番の人との縁を切り、今は2番手となった女と生涯を共にしないといけなくなってしまったのだった。
((オフェリーじゃなくて、エステェと夫婦になる!? 嫌だ……! そんな未来は絶対に阻止してやる……!!))
そこで俺はそうしなくても済む方法を死に物狂いで考え始め、一種の『火事場の馬鹿力』なのだろう。
((はぁ、はぁ、はぁ……。やった……! やったぞ……!!))
二連続で徹夜をする羽目になってしまったものの、いいアイディアが閃いたのだった。
((これならいける。きっといけるぞ……!!))
エステェは俺の幸せを願っていたし、なにより『最高のお礼』がある。これからが合わされば、高確率で成功する。
そして成功した暁には――。必然的に、父上はオフェリーとの仲を認めざるを得なくなってしまうのだ。
((頼むぞ……! 上手くいってくれ……!!))
高確率ではあるものの、100パーセントの成功が保証されているものではない。そのため俺は緊張しながらエステェのもとを目指し、ある程度場が温まったら――
「エステェ。俺はね、真に愛する人を見つけてしまったんだよ。だから別れてもらいたいんだ」
まずは用意していた台詞を出し、真なる幸せを掴み取るべく動き出したのだった――。
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