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第5話 嘘に満ちた言葉たち エステェ視点(1)
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「実を言いますと……。私も、同じでした。サネベーク様は、憧れの方だったのですよ」
夜空の下にある、落ち着いた雰囲気を放つ中庭。私達しかいない場所に着くと、私はゆっくりと言葉を紡ぎ始める。
「……サネベーク様。貴方様は学舎時代、今とはお姿が違っていましたよね?」
「はい。背は低く体重は重く、おまけにあの頃は呑み込みも悪く、よく嗤われていました」
「でも貴方様は、決して腐らなかった。たとえ結果が出なくても懸命に前を向き、走り続けていた。……私は、そんな姿に人として惹かれていました」
あの頃はこの方とのことを、『豚男』としか思っていなかった。けれど我武者羅に努力する姿を何度か見ていたし、内心は相手には分からない。
なのでここを利用するようにして、さらに続ける。
「成績上位だったり生徒会長になれたりしたのは、貴方様をお手本にしていたから。お父様に勧められた留学を受けたのも、貴方様の姿勢を見続けていたからなんです」
本当の留学理由は『もっと一目置かれたい』と『もっと箔をつけたいから』で、ピエール様は一切関係ない。でもこれも、相手には分からないことだもの。
ここでも、利用させてもらった。
「留学中挫けそうになった時も、そう。そんな時はサネベーク様を思い出し、力を得て乗り越えました」
「……そう、だったのですね……」
「…………ですから、そうなるのは必然的でした。サネベーク様と困難を乗り越えるたびに、気持ちに変化が生じていって……。好きという感情が、もう一つの好きへと成長をしました」
人としての好きから、異性としての好きに変わった――。少し顎を引き、自慢の武器・ウルウル目で見上げる。
「いつかこの気持ちを伝えたいな。そう思っていて、今日こうして再び出会えて……。ああして、知らなかったお気持ちを知りました」
「……はい」
「そうしたらもう、居ても経ってもいられなくなってしまって。ですから……。私は、全てをお伝えすると決めたのです」
僅かに口をつぐんで、勇気を振り絞っているんだよ、とアピール。そうして自ら援護射撃を行った後、不安げにブルーの瞳を見つめる。
((アドン様、ごめんなさい。貴方様より素敵な人を見つけてしまったの))
だから――
「ピエール・サネベーク様。私は貴方様を愛しております。これからは一緒に、隣を歩いてはくださいませんか?」
今世界で一番大好きな人に、想いを告げる。
そうしたら――。うふふふふっ。
「……光栄でございます。是非、お隣を歩かせてください」
大成功!!
素敵なお顔が柔らかく緩み、穏やかな微笑みが返ってきたのでしたっ!
夜空の下にある、落ち着いた雰囲気を放つ中庭。私達しかいない場所に着くと、私はゆっくりと言葉を紡ぎ始める。
「……サネベーク様。貴方様は学舎時代、今とはお姿が違っていましたよね?」
「はい。背は低く体重は重く、おまけにあの頃は呑み込みも悪く、よく嗤われていました」
「でも貴方様は、決して腐らなかった。たとえ結果が出なくても懸命に前を向き、走り続けていた。……私は、そんな姿に人として惹かれていました」
あの頃はこの方とのことを、『豚男』としか思っていなかった。けれど我武者羅に努力する姿を何度か見ていたし、内心は相手には分からない。
なのでここを利用するようにして、さらに続ける。
「成績上位だったり生徒会長になれたりしたのは、貴方様をお手本にしていたから。お父様に勧められた留学を受けたのも、貴方様の姿勢を見続けていたからなんです」
本当の留学理由は『もっと一目置かれたい』と『もっと箔をつけたいから』で、ピエール様は一切関係ない。でもこれも、相手には分からないことだもの。
ここでも、利用させてもらった。
「留学中挫けそうになった時も、そう。そんな時はサネベーク様を思い出し、力を得て乗り越えました」
「……そう、だったのですね……」
「…………ですから、そうなるのは必然的でした。サネベーク様と困難を乗り越えるたびに、気持ちに変化が生じていって……。好きという感情が、もう一つの好きへと成長をしました」
人としての好きから、異性としての好きに変わった――。少し顎を引き、自慢の武器・ウルウル目で見上げる。
「いつかこの気持ちを伝えたいな。そう思っていて、今日こうして再び出会えて……。ああして、知らなかったお気持ちを知りました」
「……はい」
「そうしたらもう、居ても経ってもいられなくなってしまって。ですから……。私は、全てをお伝えすると決めたのです」
僅かに口をつぐんで、勇気を振り絞っているんだよ、とアピール。そうして自ら援護射撃を行った後、不安げにブルーの瞳を見つめる。
((アドン様、ごめんなさい。貴方様より素敵な人を見つけてしまったの))
だから――
「ピエール・サネベーク様。私は貴方様を愛しております。これからは一緒に、隣を歩いてはくださいませんか?」
今世界で一番大好きな人に、想いを告げる。
そうしたら――。うふふふふっ。
「……光栄でございます。是非、お隣を歩かせてください」
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