今日は、わたしから何でも奪ってきた妹が奪われてしまう日

柚木ゆず

文字の大きさ
上 下
31 / 59

第15話 手紙を読んだ三人は キアラ視点(6)

しおりを挟む
「なっ!?」
「こっ、コイツら逃げるつもりだ!!」
「皆さんっ! 早くっ! 取り押さえてください!!」

 そんな命令は、もう遅い。3人が叫んだ時には、私達はもう駆けだしていた。

「「「しまっ!?」」」

 それに油断と慢心も合わさって、大男たちも反応できない。必死に伸ばした手がこっちに届くことも掠ることもなくって、私達は『第一関門』をクリアした!

((まだ安心しちゃ駄目!! むしろここからが大事なんだから!!))

 これから私達は、走ってコイツらを巻かなきゃいけない。
 私もお父様もお母様も運動は不得意だし普段あまり身体を動かしてなくって、逆にあっちは見るからに身体能力が高い。逃げ切るのは、かなり難しい。

((でもっ。そんなもの関係ないっ!! 絶対に逃げ切って見せる!!))

 だって死にたくないんだもん!! 私達は必死に歯を食いしばって手足を動かし、我武者羅に走る。

「おっ、追いかけるんだ!! 早くしろ!!」
「アイツらは大して速く走れないはずだしっ、スタミナだってないはずだ!! 取り押されられるっ!!」

 そうね。普段の私達なら、その通りよ。
 だけど今は精神が肉体を凌駕していて、速く走れるしスタミナだってある。だから――

「まてぇぇぇ――があっ!?」
「ぐあ!?」
「くうっ!?」

 ――大男たちは追いつけず、たぶん焦ったせい。仲良くつまずいて、豪快に転んでしまった。

「やった! お父様お母様っ!」
「ああっ。チャンスだ! 逃げ切れるぞ!!」
「あなたキアラっ! 今のうちにもっと走るのよ! 走り続けるのよぉぉおおおおおおおおお!!」

 そんな事実がますます私達に力をくれて、スピードもスタミナも更に爆発的に増加してっ。大男たちとの距離が、みるみる離れていく!!

「まっ、待ちやがれ!! お前達は俺らに拷問される運命なんだ!!」
「全身を少しずつ刃物で刻まれて! 絶叫しながら絶命するんだよ!!」
「止まれ!! 止まって大人しく殺されろ!!」

 そんなことを言われて、止まる人なんていない。

「ぁあああああああああああああああ!!」
「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「はあああああああああああああああ!!」

 私達は、門を通り抜けたあとも死に物狂いで駆け続け――やったっ、やった!!
 猛ダッシュを始めて、およそ15分。周囲にアイツらの気配は少しもなくって――


 私達は無事、逃げ切ったのだった!!


「「「やった! やったっ! やったああああああああああああああ!!」」」


 〇〇〇


「…………この辺で止めておくか。お前達、もういいぞ。全員お疲れさん」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

結婚式間近に発覚した隠し子の存在。裏切っただけでも問題なのに、何が悪いのか理解できないような人とは結婚できません!

田太 優
恋愛
結婚して幸せになれるはずだったのに婚約者には隠し子がいた。 しかもそのことを何ら悪いとは思っていない様子。 そんな人とは結婚できるはずもなく、婚約破棄するのも当然のこと。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします

天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。 側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。 それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。

処理中です...