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第3話 謎、戸惑い アレクシア視点(3)
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「……この期に及んでもまだ、白々しい芝居を続けるとはな。想像以下、どうしようもない女だ」
大きく首を傾けつつポカンと大口を開け、ハート型のイヤリングを見つめているキアラ。ボスコ様はそんな彼女に向けて軽蔑の眼差しを注ぎ、そうしたあとは同じ反応をしているお父様とお母様へと視線を移動させた。
「それに、ガッカリだ。当主殿と当主夫人殿には、僕自身尊敬の念を抱いていて……。この件には無関係で、これはキアラの単独犯だと思っていたのに……。その様子から推測するに、手を貸していたようだ……」
「え……!? ぼ、ボスコ君っ! なにを言っているのだ!?」
「単独!? 手を貸す!? いったいなんなの!? それはっ、そのイヤリングはなんなの!?」
「はぁ。やはりその口から出てくるのは、キアラと同じく『知らない』アピールなのですね。……分かりました。この調査を始める前に、『あとで説明をする』とも約束しましたしね。認めないのであれば、はっきりと突きつけてあげましょう」
本心で驚かれているお父様とお母様を、演技をするなと一蹴。お二人に向けて舌打ちをしたボスコ様はゆっくりとストロベリーブロンドの女性へと近づき、発見されたばかりのイヤリングを受け取った。
「この部屋のクローゼット、その奥に隠されていたこのイヤリング。こんな場所にあったのだから、何も知らない者が見たらキアラの私物だと思ってしまうでしょう。かくいう僕自身もそうだった。先週は別の場所に置かれていて、チラッと見た時はそう感じた。だからあの時、『かわいいね』『君によく似合うと思うよ』と褒めてしまった」
「なっ!? わたしは置いてません!! ないんだから見られても見せてもいないしっ! そんな風に褒められてもいません!!」
「……でも、それは大間違いだった。これは、微笑ましいものではなかったんだ」
唖然としながら上げたキアラの大声は、無視。ボスコ様は一切相手にせず、淡々と左右に首を振って――
「なぜならばこれは、クララ・ネイフィアのものだったのだから。お前は嫌がらせの一環として彼女が身に着けていたものを取り上げ、持って帰っていたのだからな!!」
――怒りの大声を上げ、忌々しげにキアラを睨みつけたのだった。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
((お父様とお母様、キアラが言葉を失ってしまうのは無理もないわ。だってこの子は、そんな真似はしていないだもの))
キアラは社交界での『白ユリ』という異名や『同世代でトップ』という立ち位置を非常に大事にしていて、それらに傷がつく真似は絶対にしない。ストレスや物欲はすべて、部外者の人目につかないお屋敷の中で解消するようにしている。
((と、いうことは……。これは――))
大きく首を傾けつつポカンと大口を開け、ハート型のイヤリングを見つめているキアラ。ボスコ様はそんな彼女に向けて軽蔑の眼差しを注ぎ、そうしたあとは同じ反応をしているお父様とお母様へと視線を移動させた。
「それに、ガッカリだ。当主殿と当主夫人殿には、僕自身尊敬の念を抱いていて……。この件には無関係で、これはキアラの単独犯だと思っていたのに……。その様子から推測するに、手を貸していたようだ……」
「え……!? ぼ、ボスコ君っ! なにを言っているのだ!?」
「単独!? 手を貸す!? いったいなんなの!? それはっ、そのイヤリングはなんなの!?」
「はぁ。やはりその口から出てくるのは、キアラと同じく『知らない』アピールなのですね。……分かりました。この調査を始める前に、『あとで説明をする』とも約束しましたしね。認めないのであれば、はっきりと突きつけてあげましょう」
本心で驚かれているお父様とお母様を、演技をするなと一蹴。お二人に向けて舌打ちをしたボスコ様はゆっくりとストロベリーブロンドの女性へと近づき、発見されたばかりのイヤリングを受け取った。
「この部屋のクローゼット、その奥に隠されていたこのイヤリング。こんな場所にあったのだから、何も知らない者が見たらキアラの私物だと思ってしまうでしょう。かくいう僕自身もそうだった。先週は別の場所に置かれていて、チラッと見た時はそう感じた。だからあの時、『かわいいね』『君によく似合うと思うよ』と褒めてしまった」
「なっ!? わたしは置いてません!! ないんだから見られても見せてもいないしっ! そんな風に褒められてもいません!!」
「……でも、それは大間違いだった。これは、微笑ましいものではなかったんだ」
唖然としながら上げたキアラの大声は、無視。ボスコ様は一切相手にせず、淡々と左右に首を振って――
「なぜならばこれは、クララ・ネイフィアのものだったのだから。お前は嫌がらせの一環として彼女が身に着けていたものを取り上げ、持って帰っていたのだからな!!」
――怒りの大声を上げ、忌々しげにキアラを睨みつけたのだった。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
((お父様とお母様、キアラが言葉を失ってしまうのは無理もないわ。だってこの子は、そんな真似はしていないだもの))
キアラは社交界での『白ユリ』という異名や『同世代でトップ』という立ち位置を非常に大事にしていて、それらに傷がつく真似は絶対にしない。ストレスや物欲はすべて、部外者の人目につかないお屋敷の中で解消するようにしている。
((と、いうことは……。これは――))
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