上 下
5 / 59

第3話 謎、戸惑い アレクシア視点(2)

しおりを挟む
『俺とキアラの間に関係性はもう皆無。本来ならばこういった時そういう異性・・・・は席を外すべきだが、今回は事が事だ。俺も同席した上で始めさせてもらうぞ』

 所々に強調が入った言葉と共に始まった、キアラの部屋の調査。キアラとお父様とお母様は激しく戸惑いながら、調べ始めた五人の治安局員の姿を目で追っていた。

(分からん……。この子の自室を調べて、なにになるのだ……!?)
(デスクの中、ドレッサーやベッドの下まで……。この人達はなにを見つけようとしているの……!?)
(私も分かんない! なにもかも分かんないよっ!)

 その答えを知っているのはボスコ様や局員の方々だけで、その人達にはまだ詳細を伝えるつもりはない。なので考えても答えが出るはずはなく、わたしはカタリナにコッソリとあるお願い・・・・・・・・・・をしたあと、静かに様子を見守ることにした。

「………………こちらは、なし。隊長、ポイントAは発見できませんでした」
「同じく、ポイントBも発見できませんでした」
「そう。CとDも――ワタシが担当していたポイントEにも、なかった。となればあるのは、十中八九そちらになるわね」

 このグループのリーダーを務める、筋肉質な長背の女性。まるでナイフのような鋭い眼差しが注がれたのは、部屋の奥にあるクローゼット。
 この方を含め全員が、目当てのものがソコにあると確信したみたい。

(クローゼット……!? ますます分からん……。なんなのだ……!?)
(き、キアラ……。思い当たることはある……?)
(ないよっ、あるはずないでしょ! もうなんなの!? ボスコ様とこの人達はなにを探してるの!?)

 それも今騒いでいても判明するはずがなくて、わたしは引き続き黙って進展を待つ。そうしているとまずは5人によってクローゼットに収納されているものが全部室内へと移動させられ、出て来たものを五等分して丁寧に調べあげていく。

「「「「「………………」」」」」

 綺麗に畳まれている服の中など細かい部分まで確認をしていって、そんな時間が13分くらい経った頃だった。

「………………隊長、発見致しました!」

 ストロベリーブロンドを後ろで束ねた局員のひとりが、たかだかとイヤリングを掲げた。
 そして、

「「「…………。? ???」」」((あれは……?))

 お父様、お母様、キアラは、実際に。わたしは心の中で、首を傾げた。

((……小さな、ハート型のイヤリング……。初めて見るものだわ……))

 キアラはお父様やお母様、友人やお茶会のメンバーなどからいただいた物は、必ずわたしにたっぷりと自慢しに来る。そのためそういった物はすべて把握しているのだけど、ソレは今まで一度も見たことがなかった。
 あの方が手にしているイヤリングは、なに……?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。

銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」  私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。 「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」  とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。  なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。  え?どのくらいあるかって?  ──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。  とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。  しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。  将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。  どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。  私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?  あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 需要が有れば続きます。

殿下に裏切られたことを感謝しています。だから妹と一緒に幸せになってください。なれるのであれば。

田太 優
恋愛
王子の誕生日パーティーは私を婚約者として正式に発表する場のはずだった。 しかし、事もあろうか王子は妹の嘘を信じて冤罪で私を断罪したのだ。 追い出された私は王家との関係を優先した親からも追い出される。 でも…面倒なことから解放され、私はやっと自分らしく生きられるようになった。

私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? ※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定! コミックシーモア様にて12/25より配信されます。 コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。 リンク先 https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

不貞の末路《完結》

アーエル
恋愛
不思議です 公爵家で婚約者がいる男に侍る女たち 公爵家だったら不貞にならないとお思いですか?

冷遇された王妃は自由を望む

空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。 流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。 異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。 夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。 そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。 自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。 [もう、彼に私は必要ないんだ]と 数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。 貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多
恋愛
 公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。  王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……  ……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

処理中です...