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4話(4)
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「先々月、僕の父――前国王が亡くなり、王位継承に関してゴタゴタがありましてね。その際に窮地を救ってくださったのが、シャルル様なのですよ」
「そ、そうだったのですね……。お兄様はいつも、私の想像を遥かに超えてしまいます……」
「あはは、どうもどうも。この国の王族を公的にどうこうするには、同等の地位を持つ人の協力が不可欠だからね。そういう下心もあって、動いたんだよ」
お兄様は「100%褒められる行動じゃないよ」と小さくベロを出し、拘束されている5人を見たあと、サクサス様に目を向けました。
「コイツらが噂の、王家直属の暗殺部隊・オンブルです。彼らは自由に動けるよう王家が戸籍を抹消していますが、こうして存在が他国に漏れた場合はそれが仇となる。ソコを攻めれば大ダメージ、ですよね?」
「戸籍登録はこの世界の義務で、それを無視できるのは王族だけ。その事実があれば、『全体会議』――全国家の王による会議の議題にできますし、発信者が他国の王であるなら妨害はできません。糾弾すれば間違いなく現政権は崩壊となり、この国は王家が腐敗していますから……。王制は廃止となりますね」
「そしたらアイツらは全員が厳罰確定となり、平和な日々が戻ります。と、いうワケだね」
「……なるほど……。お兄様は、そこまで考えていらっしゃったのですね」
二度の作戦失敗で殿下を怒らせ、更に殿下の悪評を流して大きな行動を起こさせる。そしてそうすることで『崩壊の鍵』を呼び込み確保して、その後のことは絶対に邪魔をされない方に頼む。
全ては、お兄様の作戦通り。ジルベール殿下はずっと、手のひらの上で踊らされていたのですね。
「相手が相手で、俺だけだと公にバッドエンドにはできないからねえ。大々的に、かつ、根こそぎ排除できるように、リュカ様のお力を借りたんだ」
「アンリエット様、あとはお任せください。僕が責任を持って、処理いたします」
「サクサス様、ありがとうございます。お兄様も、数日間――いいえ。その前から想ってくださっていて、本当にありがとうございました」
「どういたしまして、と言いたいところだけど。それは、もう一つのお返しが終わってから言ってもらおっかな」
笑っていたお兄様は「少し妹をお願いします」とサクサス様に伝え、お独りで外へと歩き始めました。
「シャルル様……?」
「しゃ、シャルルお兄様? どちらに行かれるのですか?」
「ジルベールのお家、デュメン城に遊びに行ってくるよ。公の形でお礼をする前に、個人的にお礼をしておきたいんでね」
相変わらず穏やかにしていらっしゃいますが、夜鳥が突然騒ぎ始めたのでそういうことなのでしょう。お兄様はずっと胸に秘めてくださっていた怒りを解き放ちながら、夜の闇へと消えたのでした。
「そ、そうだったのですね……。お兄様はいつも、私の想像を遥かに超えてしまいます……」
「あはは、どうもどうも。この国の王族を公的にどうこうするには、同等の地位を持つ人の協力が不可欠だからね。そういう下心もあって、動いたんだよ」
お兄様は「100%褒められる行動じゃないよ」と小さくベロを出し、拘束されている5人を見たあと、サクサス様に目を向けました。
「コイツらが噂の、王家直属の暗殺部隊・オンブルです。彼らは自由に動けるよう王家が戸籍を抹消していますが、こうして存在が他国に漏れた場合はそれが仇となる。ソコを攻めれば大ダメージ、ですよね?」
「戸籍登録はこの世界の義務で、それを無視できるのは王族だけ。その事実があれば、『全体会議』――全国家の王による会議の議題にできますし、発信者が他国の王であるなら妨害はできません。糾弾すれば間違いなく現政権は崩壊となり、この国は王家が腐敗していますから……。王制は廃止となりますね」
「そしたらアイツらは全員が厳罰確定となり、平和な日々が戻ります。と、いうワケだね」
「……なるほど……。お兄様は、そこまで考えていらっしゃったのですね」
二度の作戦失敗で殿下を怒らせ、更に殿下の悪評を流して大きな行動を起こさせる。そしてそうすることで『崩壊の鍵』を呼び込み確保して、その後のことは絶対に邪魔をされない方に頼む。
全ては、お兄様の作戦通り。ジルベール殿下はずっと、手のひらの上で踊らされていたのですね。
「相手が相手で、俺だけだと公にバッドエンドにはできないからねえ。大々的に、かつ、根こそぎ排除できるように、リュカ様のお力を借りたんだ」
「アンリエット様、あとはお任せください。僕が責任を持って、処理いたします」
「サクサス様、ありがとうございます。お兄様も、数日間――いいえ。その前から想ってくださっていて、本当にありがとうございました」
「どういたしまして、と言いたいところだけど。それは、もう一つのお返しが終わってから言ってもらおっかな」
笑っていたお兄様は「少し妹をお願いします」とサクサス様に伝え、お独りで外へと歩き始めました。
「シャルル様……?」
「しゃ、シャルルお兄様? どちらに行かれるのですか?」
「ジルベールのお家、デュメン城に遊びに行ってくるよ。公の形でお礼をする前に、個人的にお礼をしておきたいんでね」
相変わらず穏やかにしていらっしゃいますが、夜鳥が突然騒ぎ始めたのでそういうことなのでしょう。お兄様はずっと胸に秘めてくださっていた怒りを解き放ちながら、夜の闇へと消えたのでした。
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