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第25話 外出をして戻ってきたら シャーリィ視点(3)

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「パーティーと言えば、ご馳走。そこで本日はシャリィのために、こういったものを用意させていただきました」

 私が着席するやお兄様はパチンと指を鳴らし、そうしたら――わぁっ。

 熱々のグラタン。大きなローストチキン。目でも楽しめる色鮮やかなカナッペ。思い出深いバターロールのサンドウィッチ。好物であるカボチャのポタージュスープ。などなど。

 合わせて12種類ものお料理と…………3段の特大ケーキが、テーブルに並びました!

「こいつは俺達が外出している間に、ここにいるみんなが作ったものなんだよ」
「わたしを含め全員が、シャーリィくんをお祝いしたくてな。力を合わせて拵えたのだよ」
「わたくしは初めてお嬢様とお会いした際、体調不良を案じていただきました」
「わたくし共もシャーリィ様が幼い頃お気遣いをいただき、心より感謝をしておりまして。そのお気持ちを、込めさせていただきました」
「『おしごとおつかれさまですっ。どうぞ~っ』。暑い日に氷菓子を差し出してくださったお客様は、後にも先にもシャーリィ様だけでした」
「我々もシャーリィ様に感謝をしており、本日その感情を込めさせていただきました」
「彼らもわたしも、料理はてんで素人だ。故に一部お見苦しい箇所があるだろうが、勘弁してもらいたい」
「いえおじ様っ、皆さんもっ。お見苦しくなんかありませんっ。こちらの焦げたちは、皆さんの優しさ温かさです。大切なものです……っ」

 ずっと眺めていたくなるほどに、貴重なもの。ですので目の前にあったカナッペを一つ手に取り、ありがたく食べさせていただきました。

「…………美味しい、すごく美味しいです。この味を忘れることは、生涯ありません」
「俺達も、その笑顔を忘れることはないよ。でもそんな気持ちは、これからもっともっと膨れ上がっていくことになると思うぞ? さあシャリィ、どんどん食べてくれ」
「はい……っ。皆さんのお気持ちを、いただきます……っ」

 せっかくですので、皆さんも一緒に。目の前にある沢山の料理を全員で共有し、とっても賑やかな時間が始まりました。

「シャリィ、まだ食べられそうか? 余裕があるなら、こっちのカナッペも食べてみてくれ。この組み合わせも美味しいからさ」

「シャーリィくん、シェフが追加でライスボールを作ったそうだ。よかったら食べておくれっ」

「「「「「ロウソクの準備ができましたっ。シャーリィ様、どうぞ吹き消してください!」」」」」

 隣に大好きな方がいてくださって、周りには優しい方々がいてくださる。そんな賑やかで楽しい時間は瞬く間に過ぎ去り、あっという間に全てのお皿が綺麗になりました。
 ですのでそろそろ終わりの時間――と思っていましたが、そうではなかったみたいです。

「じゃあ、次に移るか。……シャリィ」

 テーブルなどを見回していたお兄様が、不意に椅子から立ち上がられて――
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