上 下
40 / 90

第20話 その頃ジーウス邸では エミー視点

しおりを挟む
「……おかしい……。どうなっているのだ……?」
「……おかしいですわ……。どうなっていますの……?」

 深夜2時過ぎ。わたくしとお父様は執務室に集まり、室内を右へ左へ行ったり来たりを繰り返していました。

「……おかしい、おかしい……っ。なぜ、一向に動きがないんだ……!?」

 わたくし達が放った3人。ウチの駒たちが、いつになっても帰ってこない――それどころか、何の連絡すら遣してこない。
 だからいつもならお肌のために眠っている今も起きていて、わたくしもお父様もこんな風になってしまっていますの……。

「…………『貴族が通り魔に殺されてしまった』。そんなニュースは、貴族界でも市井でも流れていませんわ。もしやあの女は急遽外出を取りやめて、仕留めるタイミングを見計らっている……?」
「ならば、何かしらの連絡が入るはずだ。連絡なしは、ありえんよ……」

 それも、そうですわね。じゃあ…………。

「失敗して、治安機関などに捕らえられている? ……それこそあり得ませんわね」
「ああ。それは100%ないと言い切れる」

 ウチの駒は選りすぐりの精鋭で、それぞれが数々の実績の持ち主。お兄様はお金持ちであり裕福な御方ですけど、それでもそういう面では、ウチには敵いませんわ。

「では…………理由はなんなんですの……? 仕留めるタイミングを見計らっているのでもなく……。失敗して捕らえられてしまっているのでもない……。だったら、何がどうなっていますの……?」
「ううむ…………わたしにも皆目見当がつかん。………………仕方ない。数人用意して、あの者達を探させよう」

 面倒だけれど、行方が不明なのだからそうするしかありませんわね。お父様は舌打ちをしたあと、準備をするため部屋を出て――??? それから5~6分くらいしたら、大急ぎで戻ってきましたわ。
 この急ぎよう。どうやらようやく、3人が返ってきたみたい。

「はぁ、困った駒達ですわね。お父様、どういった理由でこんなことにな――」
「エミー来てくれ!! 大変だっ!! 大変なのだ!!」

 ため息をついていたら、突然お父様が悲鳴のような大声をあげた。
 ……え? どうして、青ざめているんですの……?

「指示を出していたらっ! 門の前に馬車がやって来たっ、我が屋敷に馬車がやって来たんだ!! だからっ、ジェームズを向かわせたんだ!! そしたらとんでもないことになっていたんだよ!!」
「お、お父様? とんでもないこと、とは……?」
「とんでもないんだ!! とにかくとんでもないんだよ!! きっ、来てくれ!! 外に一緒に来てくれ行ってくれ!!」
「えっ!? えっ!? え――きゃあっ!?」

 支離滅裂で戸惑っていると手を掴まれ、全力疾走で引っ張られてゆく。
 猛スピードで廊下を駆け抜け、エントランスを抜けて、外へと出ると――。そこには――

「夜分に申し訳ございません、ジーウス卿、エミー様。3人の『影』に関するお話を、行いに参りました」

 …………。ノランお兄様が、いた…………!?
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は皇太子の婚約者の地位から逃げ出して、酒場の娘からやり直すことにしました

もぐすけ
恋愛
公爵家の令嬢ルイーゼ・アードレーは皇太子の婚約者だったが、「逃がし屋」を名乗る組織に拉致され、王宮から連れ去られてしまう。「逃がし屋」から皇太子の女癖の悪さを聞かされたルイーゼは、皇太子に愛想を尽かし、そのまま逃亡生活を始める。 「逃がし屋」は単にルイーゼを逃すだけではなく、社会復帰も支援するフルサービスぶり。ルイーゼはまずは酒場の娘から始めた。

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

虐げられていた黒魔術師は辺境伯に溺愛される

朝露ココア
恋愛
リナルディ伯爵令嬢のクラーラ。 クラーラは白魔術の名門に生まれながらも、黒魔術を得意としていた。 そのため実家では冷遇され、いつも両親や姉から蔑まれる日々を送っている。 父の強引な婚約の取り付けにより、彼女はとある辺境伯のもとに嫁ぐことになる。 縁談相手のハルトリー辺境伯は社交界でも評判がよくない人物。 しかし、逃げ場のないクラーラは黙って縁談を受け入れるしかなかった。 実際に会った辺境伯は臆病ながらも誠実な人物で。 クラーラと日々を過ごす中で、彼は次第に成長し……そして彼にまつわる『呪い』も明らかになっていく。 「二度と君を手放すつもりはない。俺を幸せにしてくれた君を……これから先、俺が幸せにする」

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」 子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。 失意のどん底に突き落とされたソフィ。 しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに! 一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。 エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。 なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。 焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

【完結】王子から愛でられる平民の少女に転生しました〜ざまあされそうで超ピンチです!〜

チュンぽよ
恋愛
美しい金髪碧眼の王子ヘンリー・レイノルズが婚約者のマーガレット・クローバーに婚約破棄を一方的に言い出した。原因はヘンリーのお気に入りのマロンのせい。でもマロンはそんなことは全く望んでいなくて…!? これは、ざあまされないように奮闘するマロンの物語です。

結婚の約束を信じて待っていたのに、帰ってきた幼馴染は私ではなく義妹を選びました。

田太 優
恋愛
将来を約束した幼馴染と離れ離れになったけど、私はずっと信じていた。 やがて幼馴染が帰ってきて、信じられない姿を見た。 幼馴染に抱きつく義妹。 幼馴染は私ではなく義妹と結婚すると告げた。 信じて待っていた私は裏切られた。

処理中です...