上 下
27 / 90

第13話 お屋敷に戻ったあとの出来事 俯瞰視点

しおりを挟む
「なんなのよあの女! ムカつくっ! ムカつくムカつくっ!!」

 ノランを誘う作戦が、失敗に終わった日の夜。ジーウス伯爵邸の自室に戻ったエミーは、ベッドに向けてピローを繰り返し叩きつけていました。

「子爵家から追い出された元貴族のくせにっ! 貧乏神のくせに! わたくしの邪魔をするなんて許せませんわ!!」

『シャーリィは実質追放をされ、今はワズリエア子爵邸で暮らしている』。その情報はなぜか・・・、驚くべき速さで拡散されていました。
 そして『貧乏神』に関する内容は、保身のために――『そんなことになったら追い出すしかない』『フェルティール家は悪くない』という同調意見を生むために、シャーリィの父ギャバンや母テアが、10年かけてあちこちで広めていました。
 なのでエミーは現状や実態を把握しており、猶更怒りが大きくなっていたのです。

「何があったから知らないけどっ、幼馴染だってだけで想われて傍に置いてもらっているくせにっっ!! 生意気なのよ!! なにけろっとしてるのよ!! 罪悪感を持って身を引きなさいよっ!! お兄様がああ言っても否定してわたくしに話を合わせなさいよ――そもそもお屋敷から出ていきなさいよ!! アンタが居るだけで不幸になる寄生虫モドキなんだからっ、誰にも迷惑がかからないように自殺しなさいよ!!」

 ノランはシャーリィのために力をつけたなど、根底にあるものを知りません。そのためシャーリィを激しく罵り続け、ピローを叩きつけ続け――。その結果、やがてピローは破れて中身が飛び出してしまいました。

「あの女も、こんな風になってしまえばいいのに!! ………………でも、まあいいわ。今は、我慢をしておいてあげましょう。どうせしばらくしたら、お兄様も気が付いて・・・・・あの女を追い出すでしょうしね」

 ノランにある想いを知らないエミーは、『貧乏神は何かの勘違いだ』『金が減ったのは偶然で、そんなことが起きるはずがない』と感じて傍に置いていると考えていました。だから、減り始めたら痛感する――。
 ピロー破壊によって多少落ち着きを取り戻した彼女は、意地の悪い薄笑いを浮かべました。

「きっとお兄様は勘違いを証明したくて、ずっと必死になっているだけ。他のことを考える余裕がなかったから、これまで何度もお願いしても受け入れていただけなかっただけ」

 自分は完璧な淑女――。そう確信しているエミーは、いつものように断言します。

「だからあの女がいなくなれば、お兄様もちゃんとわたくしを見てくださるようになって、いずれ二人きりで過ごせるようになるんですもの。今は、動かないでおいてあげますわ。今日のお礼をするのは、その時まで辛抱してあげますわ」

 せっかくの自分の作戦を台無しにした罰。それを行うのは、お兄様に捨てられたあと。路頭に迷ったあと、大きな絶望がやって来るから楽しみにしているといいわ――。
 エミーはそんなことを思いながら自身を溺愛する父ユーゴーにお願いを行い、その準備はさっそく行われることとなりました。なので彼女は嗜虐的に口の端を吊り上げ、『その時』の訪れを待ち始めたのでした――。

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

虐げられていた黒魔術師は辺境伯に溺愛される

朝露ココア
恋愛
リナルディ伯爵令嬢のクラーラ。 クラーラは白魔術の名門に生まれながらも、黒魔術を得意としていた。 そのため実家では冷遇され、いつも両親や姉から蔑まれる日々を送っている。 父の強引な婚約の取り付けにより、彼女はとある辺境伯のもとに嫁ぐことになる。 縁談相手のハルトリー辺境伯は社交界でも評判がよくない人物。 しかし、逃げ場のないクラーラは黙って縁談を受け入れるしかなかった。 実際に会った辺境伯は臆病ながらも誠実な人物で。 クラーラと日々を過ごす中で、彼は次第に成長し……そして彼にまつわる『呪い』も明らかになっていく。 「二度と君を手放すつもりはない。俺を幸せにしてくれた君を……これから先、俺が幸せにする」

公爵令嬢は皇太子の婚約者の地位から逃げ出して、酒場の娘からやり直すことにしました

もぐすけ
恋愛
公爵家の令嬢ルイーゼ・アードレーは皇太子の婚約者だったが、「逃がし屋」を名乗る組織に拉致され、王宮から連れ去られてしまう。「逃がし屋」から皇太子の女癖の悪さを聞かされたルイーゼは、皇太子に愛想を尽かし、そのまま逃亡生活を始める。 「逃がし屋」は単にルイーゼを逃すだけではなく、社会復帰も支援するフルサービスぶり。ルイーゼはまずは酒場の娘から始めた。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」 子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。 失意のどん底に突き落とされたソフィ。 しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに! 一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。 エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。 なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。 焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています

今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。 それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。 そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。 当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。 一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

処理中です...