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第7話 喜びのあとの、異変 ノラン視点(2)

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「このタイミングで、お前がやって来たということは……。早速、表れたのだな?」
「……はい、旦那様。ポイントC――第2金庫内に保管されていた札束が、一つ消えておりました」

 飛んできたエンゾが口にしたのは、俺と父さんが予想していた通りのもの。金の消失、だった。

「前回巡回を行った際は、ポイントA~F全てに異変がありませんでした。しかしながら先ほど確認をしてみると、100万ベリアスがなくなっていたのです」
「……なるほど、な。…………あり得ないと理解しているが、念のため確認しておく。何者かが侵入した痕跡、金庫に何かしらの細工が施された痕跡、そのどちらもなかったのだな?」
「そういったものは、一切ございませんでした。金庫は不肖わたくしめが細部まで目視を行い、周囲に関しては坊ちゃまの『影』が明言致しました故。自信を持って断言いたします」

 彼は67年の人生の中でそういった技術も習得しているし、彼らはそういう点を見落としはしない。したがって、元々分かり切っていたことではあるが、外部から取り出された可能性は0だ。

「旦那様、坊ちゃま。こたびの消失は、密閉された空間の中で発生しております」
「…………うむ、ご苦労だった。引き続き見回りを頼んだぞ、エンゾ」
「はっ。承知いたしました」

 そうして彼は去ってゆき、それを合図にして、父さんの神妙な顔がこちらへと向いた。なので俺も身体全体を父さんが居る方向へと動かし、俺達は同じ表情を携え向かい合った。

「ノラン。前回の巡回時間は、覚えているな?」
「戻って来た時に、記録帳を確認している。当然覚えているよ」

 始まりが午後6時ちょうどで、終わりが午後6時29分。そこにはそう記されていた。

「午後の6時29――それは、シャーリィくんがこの屋敷に到着する直前。つまりシャーリィくんが現れるまで、異変は起きていなかった」
「ああ、父さん。その時までは、起きてはいなかった」

 ここに数字を記したのはエンゾで、彼は時間を見誤りなどしない。間違いなく、起きてなかった。

「だが。シャーリィくんがこの屋敷にやって来た途端、多くのベリアスが失われた。しかもそれは」
「人知を超越した方法だった」

 一度も開けられていない金庫から、100万ベリアスが消える。嘘みたいな出来事が起きた。

「となると、だ。確定となるな」

 そう。ソレによって、『ほぼ間違いない』が『間違いない』へと変化した。
 貧乏神と忌み嫌われるようになった、シャリィの体質。アレは、生まれ持ってのものなんかじゃない。そいつは――

「『呪い』だ」
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