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第2話 声の人は シャーリィ視点(3)

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「…………さんじゅう、ろく……。36っ!? 純資産が36億ベリアスなのですかっ!?」

 おもわず15秒ほど固まっていた私は、数字を繰り返して口をパクパクと動かすことしかできませんでした。
 1億が、36億。36倍もの額になっているのですから。激しい混乱に襲われてしまいました。

「そう、36億べリアス。今のところ、な」
「いまの、ところ……。ですか……?」
「俺の計算だと今年はプラス2億べリアス程度、来年は2・5億~2・7億べリアス。今後もこういった感じで、ウチ――俺の資産が増えていくんだよ」

 ……また大きな混乱がやって来て、頭がクラクラしてきました。どうして、そんなことになっているのですか……!?

「その理由は、あとで説明する。とにかくシャリィ、こういう状態で――。さて、それは何を意味するでしょうか?」
「…………私のせいで、資産が減っても…………。ビクともしない、ですか……?」
「正解。その性質があっても害はないくらい貯めているし、そもそも、減る以上に入ってくるようになっている。だから、破滅する未来なんてあり得ないんだよ」

 私より30センチくらい、背が高くなったお兄様。そんなノランお兄様は膝を曲げて目線を合わしてくださり、ニッと笑ってくださいました。

「減ってしまうのを防げないのなら、それ以上に稼いでしまえばいい。こんな考えで10年間走り続けて、ようやくシャリィを迎えられる態勢が整ったんだよ」
「……お兄様が口にされていた、『そのための準備』……。そちらは、そういったもの……だったのですね……」
「シャリィはあの日俺を守るために、おじさん達に背き・・・・・・・・金に関する体質を教えてくれたからな。それもあって・・・・・・必死に考えて考えて、そうしたらそれしかなくってさ。ソコを目指して進み続けて、掴み取ったんだよ」

 空へと左手を伸ばし、その手をぎゅっと握り締める。そうして上の方向へと動いていたお兄様の視線は、再び元の位置へと――私へと戻りました。

「シャリィのことだからさ。それでも減るのに変わりないから、って思ってくれてるんだよな?」
「……は、はい……。そう、思っています……」
「俺のことを心配してくれて、ありがとな。でもここでシャリィに断られちゃったらさ、10年間の努力が無駄になって、そのショックで灰になっちまう。魂がぽんっと出て、抜け殻みたいになっちまうんだよ。だから俺の精神のためにも、受け入れて欲しいんだ」

 ご自身の胸元をポンと軽く叩き、肩を竦めて苦笑い。思い遣りを言葉と動作に沢山詰め込んでくださったお兄様は、今度はお空ではなくこちらへ手を伸ばしてくださいました。

「シャリィ、今日から君の人生は一変する。俺と一緒に、楽しい時間を過ごしましょう」
「………………はい、お兄様。よろしくお願い致します……っ」

 こんなに温かいお気持ちを、大切で大好きな方からいただいたのです。首を横に振ることなんてできません。
 ですので私は大粒の嬉し涙を零しながら、差し出された右手を取らせていただいたのでした――。

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