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第1話 取れない選択肢 シャーリィ視点(2)
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「………………私は……。多くの迷惑を、かけてしまいましたね……」
あれからどのくらい時間が経ったのか、分かりません。
歩いていると、色々な記憶が蘇ってきて――。そのたびに、申し訳なくなって謝って――。そうしているといつの間にか、目的地である『ノーラゼット川』にかかる橋に着いていたのです。
「10年前に私が約束をしなければ、こんなことにはならなかったのに……。ごめんなさい……」
南の方角――さっきまで暮らしていたフェルティール子爵邸に向かって頭を下げ、次はメイプルの木がある西の方角と向き直ります。
「…………ノランお兄様。約束を破ってしまい、ごめんなさい……」
あの日から一度もお会いできなかった。きっと10年間、私のために必死になって動いてくださっていた。
それを知っているのに、あの日約束をしたメイプルの木に行かなくて……。ごめんなさい……。
「嘘つきを、直接謝ることもできなくて…………ごめんなさい……。長い間無意味に振り回してしまって、ごめんなさい……」
今もまだ指切りの感触を覚えている、右の小指。大切な『最後の接点』を左手で包み込みながら謝罪を繰り返し、謝りたいことはまだまだあるのですが――。
((幸い今は、誰もいらっしゃりません))
いつまでもこうしていると、通行人の方がいらっしゃって止められてしまうかもしれません。ですので、
「ごめんなさい」
残る全てのことに対して深く頭を下げ、欄干へと向き直ります。
下――この中へと飛び込んで、この人生を終わらせるために。
((……大丈夫。昨日は雨で、いつもよりも流れが速くなっています。だからきっと、早く意識を失えます))
死を前にして再びやって来た、大量の恐怖。やめたくなる気持ち。そちらをこの言葉で鎮めながら両手を伸ばし、腕と足に力を籠めます。
そうして私は、
((もしも生まれ変わることができたなら、その時は……。普通の女の子として生まれて……。ノランお兄様と、恋人になれますように))
そんなお願いをしながら、勢いをつけて欄干を飛び越え――
「シャリィ。そっちは、約束の場所じゃないぞ?」
――きゃっ!?
飛び越えようとしていたら、突然背後から抱きかかえられたのでした。
あれからどのくらい時間が経ったのか、分かりません。
歩いていると、色々な記憶が蘇ってきて――。そのたびに、申し訳なくなって謝って――。そうしているといつの間にか、目的地である『ノーラゼット川』にかかる橋に着いていたのです。
「10年前に私が約束をしなければ、こんなことにはならなかったのに……。ごめんなさい……」
南の方角――さっきまで暮らしていたフェルティール子爵邸に向かって頭を下げ、次はメイプルの木がある西の方角と向き直ります。
「…………ノランお兄様。約束を破ってしまい、ごめんなさい……」
あの日から一度もお会いできなかった。きっと10年間、私のために必死になって動いてくださっていた。
それを知っているのに、あの日約束をしたメイプルの木に行かなくて……。ごめんなさい……。
「嘘つきを、直接謝ることもできなくて…………ごめんなさい……。長い間無意味に振り回してしまって、ごめんなさい……」
今もまだ指切りの感触を覚えている、右の小指。大切な『最後の接点』を左手で包み込みながら謝罪を繰り返し、謝りたいことはまだまだあるのですが――。
((幸い今は、誰もいらっしゃりません))
いつまでもこうしていると、通行人の方がいらっしゃって止められてしまうかもしれません。ですので、
「ごめんなさい」
残る全てのことに対して深く頭を下げ、欄干へと向き直ります。
下――この中へと飛び込んで、この人生を終わらせるために。
((……大丈夫。昨日は雨で、いつもよりも流れが速くなっています。だからきっと、早く意識を失えます))
死を前にして再びやって来た、大量の恐怖。やめたくなる気持ち。そちらをこの言葉で鎮めながら両手を伸ばし、腕と足に力を籠めます。
そうして私は、
((もしも生まれ変わることができたなら、その時は……。普通の女の子として生まれて……。ノランお兄様と、恋人になれますように))
そんなお願いをしながら、勢いをつけて欄干を飛び越え――
「シャリィ。そっちは、約束の場所じゃないぞ?」
――きゃっ!?
飛び越えようとしていたら、突然背後から抱きかかえられたのでした。
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