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第13話 俺はヒーローだから アンベール視点(1)
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「はっはっは! これが世界の選択かっ。そうか、そうだよなぁ!」
忌々しい牢にぶち込まれてから、十数時間後。さっきまで囚人服を着て不当に閉じ込められていた俺は、髭を蓄えた姿で――エヴァの父、ベーリック卿の姿で太陽の下で立っていた。
突然聞こえてきた、『パキン』という音。それによって俺の状況は、一変した。
その直後視界が数秒間ブラックアウトして、視覚が回復するといつの間にかこの姿で収監施設の外にいたのだ。しかも傍には二頭立ての馬車、腰には毒が塗られた短剣があるという、最高のおまけつきで。
((こいつは確かアンベールとエヴァがエンディングで乗っていた馬車で、この剣は最期にディオンが使ったものだ))
捨てた後再びエヴァに興味を持ち始めたヤツは、『自分のものにならないなら殺す』とエヴァを殺害しようとする。だが俺とエヴァの力で失敗に終わり、収監されてから半月後。エヴァが居ない日々に耐えられなくなり、臣下がこっそりと渡したこの刃で、自傷して死ぬオチになっていた。
((つまりエヴァの父親に成りすまして近づき、この短剣を使ってディオンを殺す。そうして邪魔者を排除したあとエヴァをその場で調教し、忠実な人形にして乗せろというわけか))
本能的に、それを理解できた。『イレギュラー』な事態を修正させるべく、この世界が俺の背中を押しているのだと理解できた。
だから。
動くことに、した。
((分かる、こっちも分かるぞ……! エヴァとディオンは今、『ラッセルベルの丘』に居る))
御者席に乗り込んだ俺は綱を強く引き、勢いよく馬車を発進させる。
操縦の心得なんてないが今の俺は容易に操縦することができて、ぐんぐんと進んでゆく。そうしてあっという間に目的地へとたどり着き、
「エヴァ、邪魔をしてすまないな。お前とディオン様に、お渡ししたいものがあるのだよ」
俺はコイツの父ドナルドのフリをして、ゆっくりと近づき始めたのだった――。
忌々しい牢にぶち込まれてから、十数時間後。さっきまで囚人服を着て不当に閉じ込められていた俺は、髭を蓄えた姿で――エヴァの父、ベーリック卿の姿で太陽の下で立っていた。
突然聞こえてきた、『パキン』という音。それによって俺の状況は、一変した。
その直後視界が数秒間ブラックアウトして、視覚が回復するといつの間にかこの姿で収監施設の外にいたのだ。しかも傍には二頭立ての馬車、腰には毒が塗られた短剣があるという、最高のおまけつきで。
((こいつは確かアンベールとエヴァがエンディングで乗っていた馬車で、この剣は最期にディオンが使ったものだ))
捨てた後再びエヴァに興味を持ち始めたヤツは、『自分のものにならないなら殺す』とエヴァを殺害しようとする。だが俺とエヴァの力で失敗に終わり、収監されてから半月後。エヴァが居ない日々に耐えられなくなり、臣下がこっそりと渡したこの刃で、自傷して死ぬオチになっていた。
((つまりエヴァの父親に成りすまして近づき、この短剣を使ってディオンを殺す。そうして邪魔者を排除したあとエヴァをその場で調教し、忠実な人形にして乗せろというわけか))
本能的に、それを理解できた。『イレギュラー』な事態を修正させるべく、この世界が俺の背中を押しているのだと理解できた。
だから。
動くことに、した。
((分かる、こっちも分かるぞ……! エヴァとディオンは今、『ラッセルベルの丘』に居る))
御者席に乗り込んだ俺は綱を強く引き、勢いよく馬車を発進させる。
操縦の心得なんてないが今の俺は容易に操縦することができて、ぐんぐんと進んでゆく。そうしてあっという間に目的地へとたどり着き、
「エヴァ、邪魔をしてすまないな。お前とディオン様に、お渡ししたいものがあるのだよ」
俺はコイツの父ドナルドのフリをして、ゆっくりと近づき始めたのだった――。
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