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第9話 ようやく来たね ディオン視点
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「お待たせいたしました、アンベール・ザネトリア様。僕に御用がおありとのことですが、どういった御用件でございますか?」
仕込みが終わってから、およそ6時間後。突然アンベールがウチにやって来て、僕達は1階部にある応接室で向かい合っていた。
「ふん、白々しいぞ。エヴァが告げ口をして知っているだろうに、よくもまあそんな風に笑えたものだ」
言下彼は僕を鼻で笑い、テーブルに――僕達の間にあるテーブルに、両足を載せた。
こういった物の上に、しかも他者の所有物にこんなことをするなんて。どうやらこちらの想像以上に前世では低俗な教育を受け、我が儘を許されてきていたらしいね。
「貴様は俺の意志と目的を、知っているんだからな。単刀直入に言うぞ。一回しか言ってやらないから、よく聞けよ」
「……承知いたしました。アンベール・ザネトリア様。貴方様は僕に、なんと仰るおつもりなのでしょうか?」
「これからお前を追い詰め、一週間以内に自殺をさせる。俺はそう、お前に宣告するんだよ」
ケラケラと、酷く下品に笑いながら。彼は、下卑た笑みを浮かべた。
「一週間以内に自殺させる? そんなことができるはずがない! なーんて思ってるんだろ? 思ってるんだよなぁ?」
「……………………」
「それが、侯爵家様ならできちまうんだよなぁ。もうすぐどこかでとある問題が発生し始め、それによってお前を取り巻く状況や周囲の視線は一変していく。そんでもってそいつの影響で、お前はズンズンと精神を蝕まれていくんだよ」
「……………………」
「だからお前は生きているのが嫌になり、自ら命を絶つ。全てはこのアンベール様の計画だと分かっていても、宣言通りにさせるものか! と思っていても、そうしたくなっちまうんだよなぁ」
なるほどね。ほぼ想定通りの出来事が、これから発生していくわけか。
「当初の予定では軽めにイジメて、比較的楽に逝かせてやるつもりだった。だが貴様は俺のルートをウロチョロし続け、どっさりと邪魔をしやがった。コレはその罰で、追い詰めて追い詰めて、徹底的に追い詰めた上で自死させることにしたんだよ」
「……………………そう、なのでございますね。理解致しました」
「かははっ、単なる脅しと思ってやがんな? まあ、受け入れられないのは無理もねぇ。その身でしっかりと味わって、思い知るといい」
アンベールは全身を激しく揺らしながら大笑いして、それが終わると――要件を言い終えると立ち上がり、勝ち誇った顔で扉へと歩き出した。
「これから何が起きるのか、まあ楽しみにしといてくれや。じゃあな、ディオン。今まで散々妨害してくれて、ありがとうよ」
そうして彼は絨毯に唾を飽き、最後品のない笑い声をゲラゲラと上げながら去っていったのだった。
…………アンベール。こちらこそ、ありがとう。
おかげで作戦その1は、つつがなく完遂となった。これから作戦その2が動き出すから、君も楽しみにしていて欲しい。
仕込みが終わってから、およそ6時間後。突然アンベールがウチにやって来て、僕達は1階部にある応接室で向かい合っていた。
「ふん、白々しいぞ。エヴァが告げ口をして知っているだろうに、よくもまあそんな風に笑えたものだ」
言下彼は僕を鼻で笑い、テーブルに――僕達の間にあるテーブルに、両足を載せた。
こういった物の上に、しかも他者の所有物にこんなことをするなんて。どうやらこちらの想像以上に前世では低俗な教育を受け、我が儘を許されてきていたらしいね。
「貴様は俺の意志と目的を、知っているんだからな。単刀直入に言うぞ。一回しか言ってやらないから、よく聞けよ」
「……承知いたしました。アンベール・ザネトリア様。貴方様は僕に、なんと仰るおつもりなのでしょうか?」
「これからお前を追い詰め、一週間以内に自殺をさせる。俺はそう、お前に宣告するんだよ」
ケラケラと、酷く下品に笑いながら。彼は、下卑た笑みを浮かべた。
「一週間以内に自殺させる? そんなことができるはずがない! なーんて思ってるんだろ? 思ってるんだよなぁ?」
「……………………」
「それが、侯爵家様ならできちまうんだよなぁ。もうすぐどこかでとある問題が発生し始め、それによってお前を取り巻く状況や周囲の視線は一変していく。そんでもってそいつの影響で、お前はズンズンと精神を蝕まれていくんだよ」
「……………………」
「だからお前は生きているのが嫌になり、自ら命を絶つ。全てはこのアンベール様の計画だと分かっていても、宣言通りにさせるものか! と思っていても、そうしたくなっちまうんだよなぁ」
なるほどね。ほぼ想定通りの出来事が、これから発生していくわけか。
「当初の予定では軽めにイジメて、比較的楽に逝かせてやるつもりだった。だが貴様は俺のルートをウロチョロし続け、どっさりと邪魔をしやがった。コレはその罰で、追い詰めて追い詰めて、徹底的に追い詰めた上で自死させることにしたんだよ」
「……………………そう、なのでございますね。理解致しました」
「かははっ、単なる脅しと思ってやがんな? まあ、受け入れられないのは無理もねぇ。その身でしっかりと味わって、思い知るといい」
アンベールは全身を激しく揺らしながら大笑いして、それが終わると――要件を言い終えると立ち上がり、勝ち誇った顔で扉へと歩き出した。
「これから何が起きるのか、まあ楽しみにしといてくれや。じゃあな、ディオン。今まで散々妨害してくれて、ありがとうよ」
そうして彼は絨毯に唾を飽き、最後品のない笑い声をゲラゲラと上げながら去っていったのだった。
…………アンベール。こちらこそ、ありがとう。
おかげで作戦その1は、つつがなく完遂となった。これから作戦その2が動き出すから、君も楽しみにしていて欲しい。
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