上 下
15 / 33

第9話 ようやく来たね ディオン視点

しおりを挟む
「お待たせいたしました、アンベール・ザネトリア様。僕に御用がおありとのことですが、どういった御用件でございますか?」

 仕込みが終わってから、およそ6時間後。突然アンベールがウチにやって来て、僕達は1階部にある応接室で向かい合っていた。

「ふん、白々しいぞ。エヴァが告げ口・・・をして知っているだろうに、よくもまあそんな風に笑えたものだ」

 言下彼は僕を鼻で笑い、テーブルに――僕達の間にあるテーブルに、両足を載せた。
 こういった物の上に、しかも他者の所有物にこんなことをするなんて。どうやらこちらの想像以上に前世では低俗な教育を受け、我が儘を許されてきていたらしいね。

「貴様は俺の意志と目的を、知っているんだからな。単刀直入に言うぞ。一回しか言ってやらないから、よく聞けよ」
「……承知いたしました。アンベール・ザネトリア様。貴方様は僕に、なんと仰るおつもりなのでしょうか?」
「これからお前を追い詰め、一週間以内に自殺をさせる。俺はそう、お前に宣告するんだよ」

 ケラケラと、酷く下品に笑いながら。彼は、下卑た笑みを浮かべた。

「一週間以内に自殺させる? そんなことができるはずがない! なーんて思ってるんだろ? 思ってるんだよなぁ?」
「……………………」
「それが、侯爵家様ならできちまうんだよなぁ。もうすぐどこかでとある問題が発生し始め、それによってお前を取り巻く状況や周囲の視線は一変していく。そんでもってそいつの影響で、お前はズンズンと精神を蝕まれていくんだよ」
「……………………」
「だからお前は生きているのが嫌になり、自ら命を絶つ。全てはこのアンベール様の計画だと分かっていても、宣言通りにさせるものか! と思っていても、そうしたくなっちまうんだよなぁ」

 なるほどね。ほぼ想定通りの出来事が、これから発生していくわけか。

「当初の予定では軽めにイジメて・・・・、比較的楽に逝かせてやるつもりだった。だが貴様は俺のルートをウロチョロし続け、どっさりと邪魔をしやがった。コレはその罰で、追い詰めて追い詰めて、徹底的に追い詰めた上で自死させることにしたんだよ」
「……………………そう、なのでございますね。理解致しました」
「かははっ、単なる脅しと思ってやがんな? まあ、受け入れられないのは無理もねぇ。その身でしっかりと味わって、思い知るといい」

 アンベールは全身を激しく揺らしながら大笑いして、それが終わると――要件を言い終えると立ち上がり、勝ち誇った顔で扉へと歩き出した。

「これから何が起きるのか、まあ楽しみにしといてくれや。じゃあな、ディオン。今まで散々妨害してくれて、ありがとうよ」

 そうして彼は絨毯に唾を飽き、最後品のない笑い声をゲラゲラと上げながら去っていったのだった。


 …………アンベール。こちらこそ、ありがとう。
 おかげで作戦その1は、つつがなく完遂となった。これから作戦その2が動き出すから、君も楽しみにしていて欲しい。

しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

ご落胤じゃありませんから!

実川えむ
恋愛
レイ・マイアール、十六歳。 黒い三つ編みの髪に、長い前髪。 その下には、黒ぶちのメガネと、それに隠れるようにあるのは、金色の瞳。 母さまが亡くなってから、母さまの親友のおじさんのところに世話になっているけれど。 最近急に、周りが騒々しくなってきた。 え? 父親が国王!? ありえないからっ! *別名義で書いてた作品を、設定を変えて校正しなおしております。 *不定期更新 *カクヨム・魔法のiらんどでも掲載中

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

悪役令嬢ってこれでよかったかしら?

砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。 場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。 全11部 完結しました。 サクッと読める悪役令嬢(役)。

爪弾き者の第一王女は敵国の年下王子の妻となる

河合青
ファンタジー
長く戦争を続けていたアカネース王国とレイノアール王国。両国は婚姻を条件に、停戦条約を結ぶこととなる。 白羽の矢が立ったのは母親の身分の低さから冷遇を受け続けた爪弾き者の第一王女リーゼロッテと、妻よりも若き15歳になったばかりの第三王子レオナルドであった。 厄介払いだと蔑まれ、数々の嫌がらせを受けながらも国のためにとその身を敵国に捧げるリーゼロッテと、産みの母から忌み嫌われるレオナルドは無事に和平の架け橋となることができるのか。 ーーー 過去に他のサイトで公開していた話をタイトルを変え、一部修正して投稿しています。

一途の勝利!~ハーレム狙いの友人から見捨てられたので私は一途に参ります~

琴葉悠
恋愛
ルビア・フォンデッティンは、レディア・バートリーと学校で顔を合わせたことで前世を思い出す。 その結果、レディア基、前世の友人に縁切りされてしまう。 乙女ゲームの世界に転生したから好きなようにやりたい友人からすればルビアの存在は邪魔だったのだろう。 ルビアもルビアで、会いたい相手が居たので縁切りを受け入れその人物と交流を図るべく行動する──

処理中です...