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第3話 俺のモノになる運命の、げーむのひろいん? エヴァ視点(1)
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((……今のお話は、アンベール様の作り話……? 妄想の類……? とは、思えませんね……))
この世界は『運命の貴方と』という名前の、げーむ…………と呼ばれる、いわば本――物語の中の世界。私はその主人公――ヒロインと呼ばれる立場にある人間で、アンベール様は『攻略対象』と呼ばれるヒーローの一人。『運命の貴方と』と呼ばれる『げーむ』には複数の『るーと』というもの――個別のお話のようなものが存在し、今は『アンベールるーと』と呼ばれるものの真っ最中。私はディオン様ではなく、アンベール様と結ばれるようになっていた。
感情を露わにされたお言葉を聞いた私は、心の中で首を左右に振りました。
((こんなお話は、非常に荒唐無稽ですが……。ディオン様と私は4年間、辻褄が合う経験をしてきました))
『お互いに「はい」と返事をしようとしたら、頭が割れそうなほどの頭痛が起きてしまう』や、『1日に5分以上半径10メートル内に近づいたら、以降はなぜか日が変わるまで相手の姿を認識できなくなってしまう』などなど。私達の仲を引き裂こうとする、人知を超えた出来事に襲われてきました。
ずっとその『目的』『動機』が、気になっていましたが――。それでしたら納得できますし、合点がいきます。
((……そう、だったのですね……。私とディオン様は恋をする運命だったものの、ここまで想い合う未来はなかった))
この世界はソレに気付き、ああいった形で本来の未来を実現させようとしていた。あれは大きな『誤り』を、修正するためのものだったのですね。
((ですが私達は4年かけて乗り越え続け、パリンと音がして以降は異変が発生しなくなりました。ということは、その運命を変えられた――))
「分かっただろエヴァ!? お前は今、俺の妻となる運命にあるんだ!!」
その運命を変えられた、ということですね。そう考えていたら、対面から特大の大声が飛んできました。
「お前達キャラクターは、運命に従う義務がある!! だからディオンじゃなくて俺と結ばれないといけないんだ!! そういう決まりなんだよ!!」
「………………」
「それにこの運命は、お前にとっても沢山のメリットがある! 侯爵夫人になったお前は沢山の宝石や貴金属に囲まれて、何不自由ない生活を過ごせるんだ!! どうだっ、最高だろうっ!!」
アンベール様ご自身が身につけられている高価なリングやネックレスを指さし、大きく両手を広げられました。そして、
「運命に従う、それは守らないといけないルールでウィンウィンなことなんだ! だからエヴァっ! ディオンじゃなく俺のもとに来いっ、俺のモノになれ!! いいなっ⁉」
鼻息荒く、身を乗り出されました。
ですので私は、ゆっくりと姿勢を正し――。下卑た感情が多々含まれた両目を見つめながら、はっきりとこうお伝えしたのでした。
「アンベール様、申し訳ございません。そちらは承服いたしかねます」
この世界は『運命の貴方と』という名前の、げーむ…………と呼ばれる、いわば本――物語の中の世界。私はその主人公――ヒロインと呼ばれる立場にある人間で、アンベール様は『攻略対象』と呼ばれるヒーローの一人。『運命の貴方と』と呼ばれる『げーむ』には複数の『るーと』というもの――個別のお話のようなものが存在し、今は『アンベールるーと』と呼ばれるものの真っ最中。私はディオン様ではなく、アンベール様と結ばれるようになっていた。
感情を露わにされたお言葉を聞いた私は、心の中で首を左右に振りました。
((こんなお話は、非常に荒唐無稽ですが……。ディオン様と私は4年間、辻褄が合う経験をしてきました))
『お互いに「はい」と返事をしようとしたら、頭が割れそうなほどの頭痛が起きてしまう』や、『1日に5分以上半径10メートル内に近づいたら、以降はなぜか日が変わるまで相手の姿を認識できなくなってしまう』などなど。私達の仲を引き裂こうとする、人知を超えた出来事に襲われてきました。
ずっとその『目的』『動機』が、気になっていましたが――。それでしたら納得できますし、合点がいきます。
((……そう、だったのですね……。私とディオン様は恋をする運命だったものの、ここまで想い合う未来はなかった))
この世界はソレに気付き、ああいった形で本来の未来を実現させようとしていた。あれは大きな『誤り』を、修正するためのものだったのですね。
((ですが私達は4年かけて乗り越え続け、パリンと音がして以降は異変が発生しなくなりました。ということは、その運命を変えられた――))
「分かっただろエヴァ!? お前は今、俺の妻となる運命にあるんだ!!」
その運命を変えられた、ということですね。そう考えていたら、対面から特大の大声が飛んできました。
「お前達キャラクターは、運命に従う義務がある!! だからディオンじゃなくて俺と結ばれないといけないんだ!! そういう決まりなんだよ!!」
「………………」
「それにこの運命は、お前にとっても沢山のメリットがある! 侯爵夫人になったお前は沢山の宝石や貴金属に囲まれて、何不自由ない生活を過ごせるんだ!! どうだっ、最高だろうっ!!」
アンベール様ご自身が身につけられている高価なリングやネックレスを指さし、大きく両手を広げられました。そして、
「運命に従う、それは守らないといけないルールでウィンウィンなことなんだ! だからエヴァっ! ディオンじゃなく俺のもとに来いっ、俺のモノになれ!! いいなっ⁉」
鼻息荒く、身を乗り出されました。
ですので私は、ゆっくりと姿勢を正し――。下卑た感情が多々含まれた両目を見つめながら、はっきりとこうお伝えしたのでした。
「アンベール様、申し訳ございません。そちらは承服いたしかねます」
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