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補完編その3 アルフレッド。始まりの日  アルフレッド視点(1)

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「………………………………………………」

 リルが、王宮に行ってしまった連れ去られてしまった――。
 そんな出来事があったのは、7時間前。

「………………………………………………」

 その時から俺は、ずっとこうしてる。
 自室のベッドで大の字になって、天井を眺め続けている。恐ろしいくらいに大量の虚無感に襲われ、抜け殻のように天井を眺め続けている。

「………………………………………………。結局、変わらなかったな。何をやっても、無駄だったな……」

 リルの言動が不自然になってから、色々と動いた。
 幼馴染は『本心』と言ってたけどそれは大ウソで、ずっと『彼女がいたい場所』にいられるよう努力してみた。

「………………………………………………。でも、駄目だった」

 相手が、大き過ぎた。
 敵はこの国の頂点・王家で、こっちは伯爵家。
 こちらがアレコレ頭を使って崩そうとしても、あちらは圧倒的な力でねじ伏せてくる。

「………………………………………………。こんなの、どうしようもない。勝てるはずがないじゃないか」

 そんなことを呟いていたら、勝手に涙が零れてきた。

 悔し涙。すっかりお馴染みとなったもの。
 今日までにおかしくなってしまうくらい泣いて、もう出なくなったと思っていたのに。そいつは間違いだったようだ。

「………………くそ。………………くそぉ……っ。なんなんだよ、この状況は……っ。誰か、全部悪い夢だって言ってくれよ……っ」

 リルが嫌々、心にもない台詞を口にさせられたり――。自分の意思は無視されて、王太子エメリックあんな男と婚約させられたり――。やがては王太子エメリック好きでもない男と結婚させられて、そんなヤツと生涯暮らすことにさせられたり――。
 酷いことばかりだ。滅茶苦茶だ。

 だから、頼む……。頼むよ……!

 これは悪夢だと、言ってくれ。目の前の光景にヒビが入って割れて、あの頃のような楽しい毎日に戻ってくれ……!!

「………………………………………………。………………………………。は、ははは。ははははは……。そうだよな。覚めないよな。だってここは、夢じゃないんだもんな……」

 分かっていたことだけど、分かりたくなかった。認めたくなった。
 けどさ……。
 景色が割れてくれないし、頬っぺたを抓ったら痛いし、あれから何度も寝て起きててさ……。
 もう……。認めるしかない……。

 ここは、現実。これも現実なんだって。

「………………………………………………。俺って、嘘つきだよな……」

『俺、リルが好きだ! 大好きだ! だからずっとずっと、一緒にいてくれ! 何があっても、リルを守るからっ! 生涯君を笑顔にすると誓うからっ! 俺と、恋人になってください!』

 アオプ湖で約束したのに、このザマ。口だけの男だった。

「………………………………………………。嘘つきに、なりたくない……。リルを守りたい……」

 でもそれは、叶わない。
 この問題に、気持ちなんて関係ない。プラス要素にもマイナス要素にもなってはくれない。
 だって、方法がないんだ……!
 あれこれ手を打って、全部ダメだったんだ……!
 これも、認めたくないけど認めるしかない。
 俺は無様にずっと、死ぬまで……。こうやって、悔し涙を呑むことしかできない――

「まて、よ。待てよ……」

 悔し涙。
 これは……っ!

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