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第25話 恋人になった直後の、ギクシャクが消えるお話 俯瞰視点(2)

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「アルフレッドさぁん。今日は6月、6月の奇跡の真っ只中。周りにいる方々は、皆さん仲良しですねぇ」
「ええリルさぁん、素敵なカップルばかりですねぇっ。………………そっ、そういえばっっ!」
「はい? なんでしょう、アルフレッドさん」
「そういえば俺達だって、恋人じゃあないですかっ。どっ、どうでしょうかねっ? いい機会ですしっ。俺達も、皆さんの真似をしてみませんかっ?」
「いいですねっ! じゃ、じゃあっ! あれしましょうあれっ!」
「あれですかっ? それってもしかしてっ! あそこで行われている!」
「そうですっ! あそこの2人がしているような――行為ではなく! そちらのお2人のように、微笑み合ってみましょうっ!」
「おおっ! そっ、それは名案ですっね! に、にこ~」
「に、にこ~」

 リルとアルフレッドは口元をヒクつかせ、心の中では崩れ落ちます。

((チャンスをフイにしちゃった! あたしのバカバカバカ……っ))
((俺のバカっ、なに同意してるんだ……っ。否定しろよ、俺……っ))

 実行したいのに、いざ実行できるとなると恥ずかしくなってしまう。2人はそんな自分を心の中で叱咤し、再び立ち上がります。

((…………さっきみたいに声に出して準備をしたら、意識してできなくなっちゃう。だったらっ。声に出さなければいい))
((動かすのは喉と口じゃなくて、手。心が『照れ』を見せる前に、繋いでしまえばいいんだ))

 名付けて、『心が反応する前にやってしまおう』作戦。2人は密かに、高速で手を動かす準備を始めました。

((今からはあたしは、右手を動かす。でもそれは、恋人繋ぎをするためじゃない。右手を右方向に思い切り動かしたくなったから、動かすだけ))
((今から俺は、左手を動かす。けどそれは、恋人繋ぎをするためじゃない。左手を左方向に思い切り動かしたくなったから、動かすだけ))

 よし。やろう!!

 リルとアルフレッドは自分の心を騙し、刮目を合図に手が動き出します。
 恋は人に、無限のパワーを与えてくれるもの。そのため、それはまるで流星の如き速さ。高速を遥かに超える神速で、2人の右手と左手は横に振られて――

「「ぎゃぁあ!?」」

 ――そんな手は激しくぶつかり合い、たまらず2人はしゃがみ込んでしまったのでした。

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