59 / 74
第24話 勇気を出す日。告白の日 アルフレッド(14歳)視点(3)
しおりを挟む
「よかったぁ……っ。よかったよぉ……っ。怖かったよぉ……っ」
返事が終わるや否や、リルが泣きじゃくりながら胸に飛び込んで来た。
えっ? へっ? よかった? 怖かった?
「あたしね……っ。ずっと、嫌われたのかなって思ってたの……っ。急に顔を背けたりとか離れたりとか……っ。アルフレッドの様子が変になってたから……っ。嫌われたのかもって思ってて……っ。不安になってたの……っ」
「……そっか。そうだったんだ……」
とっくにリルは、気付いていた。
もし父さんのアドバイスがなくて、じっと隠そうとしていたら――。考えただけでも、ゾッとする。
「アルフレッドが離れていくかもって思ってたら、怖くって……っ。悲しくってね……っ。一日中、アルフレッドのことを考えててね……っ。そしたら、気付いちゃったの……っ。こんなに辛いのは、アルフレッドが兄妹で家族だからじゃないんだって……っ。兄弟と家族の好きの他に、もう一つの好きもあるからなんだって気付いたの……っ!」
「っっ!」
リルも……。俺のことを……。想って、くれていた。
「そしたらもっともっと悲しくなって、不安になってね……っ。最近はそういうのがなくなってて、安心してたし……っ。6月にここに誘ってくれたからっ、もしかしてって思ってたけど……っ。違う意味があったらどうしようとかっ、告白ってあたしが勘違いをしてるかもとかっ、色々考えちゃってて……っ。照れちゃったり怖くなっちゃったり、頭がごちゃごちゃになってたの……っ」
「ごめん、ホントにごめんよリル……っ。心配させてごめん……っ。許してくれ……っ」
「ぎゅーっとしてくれたらっ、許す……っ。ずっと落ち着かなくって、大好きなアルフレッドの匂いとかを感じられなかったの……っ。だから、ぎゅーっとして……っ。あたしがいいって言うまでっ、ぎゅーっとして……っ」
「うん、分かったよ。……リル。昔も今もね、ずっと大好きだよ」
要望に応えてギュッと抱き締めて、それから俺達は無言。どちらも喋らず、互いの感触や体温を感じ合う。
そんな時が、5分くらい流れたかな。「ありがとう」という声がして、俺らは少しだけ距離を取った。
「……………………」
「……………………」
「……………………そ、その、あれですね、アルフレッド。感情のままに喋っちゃったり、お洋服を濡らしちゃったりして、ごめんなさい。えっと。あたしの涙を、お、お拭き、しますね」
「あ、いえ、お構いなく。こちらの、責任ですし。これは、あれです、一生の思い出になる水滴たちでございますので。あれですね。ぜひ、このままでお願いします」
俺達は油が切れたブリキ人形のようにギギギっと妙な動きで会釈をして、えへへへへと愛想笑いを浮かべる。
………………。……………………。
俺達。お互い冷静になったら、恋人ってことを変に意識するようになってしまったようです。
「え~、あ~。さ、最初は、誰でもこんな感じになるのかな? リルさんは、いかが思われるでございます?」
「だ、だと思いますね、ええ。と、とにかくとりあえず、湖の周りを歩きましょうか? いつも通りにしていたら、はい。元通りかもしれませんし」
「そ、そうですね。元通りになるかもしれませんね。6月の伝説は、告白とデートで成立しますしね。はっきりとしたデートをして伝説を成立させつつ関係を戻してまいりましょうですね」
「あたしも同感ですね、ええ。ええ、ええ。ウロウロしましょう」
そうして俺達は肩を並べて歩き出し、2人仲良く(?)恋人としての第一歩を踏み出したのでした――。
ちなみに。この妙なギクシャクが取れたのは、それから十数分後。
本当に俺達らしいことが切っ掛けで、元通りとなるのだった。
返事が終わるや否や、リルが泣きじゃくりながら胸に飛び込んで来た。
えっ? へっ? よかった? 怖かった?
「あたしね……っ。ずっと、嫌われたのかなって思ってたの……っ。急に顔を背けたりとか離れたりとか……っ。アルフレッドの様子が変になってたから……っ。嫌われたのかもって思ってて……っ。不安になってたの……っ」
「……そっか。そうだったんだ……」
とっくにリルは、気付いていた。
もし父さんのアドバイスがなくて、じっと隠そうとしていたら――。考えただけでも、ゾッとする。
「アルフレッドが離れていくかもって思ってたら、怖くって……っ。悲しくってね……っ。一日中、アルフレッドのことを考えててね……っ。そしたら、気付いちゃったの……っ。こんなに辛いのは、アルフレッドが兄妹で家族だからじゃないんだって……っ。兄弟と家族の好きの他に、もう一つの好きもあるからなんだって気付いたの……っ!」
「っっ!」
リルも……。俺のことを……。想って、くれていた。
「そしたらもっともっと悲しくなって、不安になってね……っ。最近はそういうのがなくなってて、安心してたし……っ。6月にここに誘ってくれたからっ、もしかしてって思ってたけど……っ。違う意味があったらどうしようとかっ、告白ってあたしが勘違いをしてるかもとかっ、色々考えちゃってて……っ。照れちゃったり怖くなっちゃったり、頭がごちゃごちゃになってたの……っ」
「ごめん、ホントにごめんよリル……っ。心配させてごめん……っ。許してくれ……っ」
「ぎゅーっとしてくれたらっ、許す……っ。ずっと落ち着かなくって、大好きなアルフレッドの匂いとかを感じられなかったの……っ。だから、ぎゅーっとして……っ。あたしがいいって言うまでっ、ぎゅーっとして……っ」
「うん、分かったよ。……リル。昔も今もね、ずっと大好きだよ」
要望に応えてギュッと抱き締めて、それから俺達は無言。どちらも喋らず、互いの感触や体温を感じ合う。
そんな時が、5分くらい流れたかな。「ありがとう」という声がして、俺らは少しだけ距離を取った。
「……………………」
「……………………」
「……………………そ、その、あれですね、アルフレッド。感情のままに喋っちゃったり、お洋服を濡らしちゃったりして、ごめんなさい。えっと。あたしの涙を、お、お拭き、しますね」
「あ、いえ、お構いなく。こちらの、責任ですし。これは、あれです、一生の思い出になる水滴たちでございますので。あれですね。ぜひ、このままでお願いします」
俺達は油が切れたブリキ人形のようにギギギっと妙な動きで会釈をして、えへへへへと愛想笑いを浮かべる。
………………。……………………。
俺達。お互い冷静になったら、恋人ってことを変に意識するようになってしまったようです。
「え~、あ~。さ、最初は、誰でもこんな感じになるのかな? リルさんは、いかが思われるでございます?」
「だ、だと思いますね、ええ。と、とにかくとりあえず、湖の周りを歩きましょうか? いつも通りにしていたら、はい。元通りかもしれませんし」
「そ、そうですね。元通りになるかもしれませんね。6月の伝説は、告白とデートで成立しますしね。はっきりとしたデートをして伝説を成立させつつ関係を戻してまいりましょうですね」
「あたしも同感ですね、ええ。ええ、ええ。ウロウロしましょう」
そうして俺達は肩を並べて歩き出し、2人仲良く(?)恋人としての第一歩を踏み出したのでした――。
ちなみに。この妙なギクシャクが取れたのは、それから十数分後。
本当に俺達らしいことが切っ掛けで、元通りとなるのだった。
11
お気に入りに追加
3,009
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
心から愛しているあなたから別れを告げられるのは悲しいですが、それどころではない事情がありまして。
ふまさ
恋愛
「……ごめん。ぼくは、きみではない人を愛してしまったんだ」
幼馴染みであり、婚約者でもあるミッチェルにそう告げられたエノーラは「はい」と返答した。その声色からは、悲しみとか、驚きとか、そういったものは一切感じられなかった。
──どころか。
「ミッチェルが愛する方と結婚できるよう、おじさまとお父様に、わたしからもお願いしてみます」
決意を宿した双眸で、エノーラはそう言った。
この作品は、小説家になろう様でも掲載しています。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?
よどら文鳥
恋愛
デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。
予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。
「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」
「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」
シェリルは何も事情を聞かされていなかった。
「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」
どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。
「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」
「はーい」
同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。
シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。
だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。
姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。
ふまさ
恋愛
「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」
ある日の休日。家族に疎まれ、蔑まれながら育ったマイラに、第一王子であり、姉の婚約者であるはずのヘイデンがそう告げた。その隣で、姉のパメラが偉そうにふんぞりかえる。
「ぞんぶんに感謝してよ、マイラ。あたしがヘイデン殿下に口添えしたんだから!」
一方的に条件を押し付けられ、望まぬまま、第一王子の婚約者となったマイラは、それでもつかの間の安らぎを手に入れ、歓喜する。
だって。
──これ以上の幸せがあるなんて、知らなかったから。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる