43 / 74
第17話(1)
しおりを挟む
「あの日送っていただくお話をしていましたら、王族関係者の方が現れましたね? その際に不審に思い、最近起きた王族関係の情報を詳しく集めてみたのですよ」
筋肉質な男性――閣下の従者さんの促しによって近づいてきたあの人は、丁寧に挨拶をしてくれた後クスリと微笑んだ。
そういえばあの時、目がきらりとしていた。なのでそれは納得なんだけど、納得できない部分がいくつもある。
「今起きている問題はこの国の問題で、貴方は他国の貴族ですよね? 他国の、しかも王族絡みの問題を詳しく探るのは難しいのに……。どうやって集めたのですか……?」
「それと、閣下と従者殿の態度も気になる。この状況で迷わず通して、おまけに事情の説明までしていたなんて……。アナタは何者なのですか?」
「ぁっ、そうでしたね。申し遅れました。わたしの名は、ナナユ・ジャンス。隣国レーストの、公爵家の娘なのです」
公爵家!? 品があるとは思ってたけど……。そんな身分の方だったんだ……。
「そして――。今遅れて参りました彼は、同じく公爵家の嫡男アイズ・ハイオラ。わたしの婚約者です」
「リル・サートル様、アルフレッド・ロザス様、お会いできて光栄です。あの時はナナユを助けていただき、心より感謝いたします」
茶色の髪を後ろで束ねた中性的な方が現れて、揃って深く深く腰を折り曲げてくださった。
この方が、アイズさん。理不尽な婚約をさせられたジャンス様を、救おうとしていた人なんだ。
「ロザス様の、仰る通りでした。強引な相手は祖国の第一王子でして、あの日わたしは諦め自殺をしようとしていました。ですがアイズは水面下で戦い続けてくれていて、わたしを救い出してくれたのですよ。他貴族を説得してクーデターを起こし、理不尽な王族から権力を奪い取ってくれたんです」
「「そ、そう……なんです……ね……」」
あたしとアルフレッドは、おもわずユニゾンする。
こんなところまで一緒だなんて。あたし達って、縁があるよね……。
「あの時お二人が止めてくださらなければ、ナナはこの世にはいなかった。この手で救い出すことは、できませんでした」
「そして再び彼と一緒の時間を過ごす事は、出来ませんでした。ですのでどうしてもそのお礼を行いたくて、今夜情報をもとにロザス家とサートル家を訪ねたのです」
「ですがお二人は御留守で、サートル様のご両親に事情をお伝えすると行き先を教えてくださいました。そうして現地を訪れてみると近くで騒ぎが起きていた為、様子を窺い今に至ります」
な、なるほど。そういう過程があったんですね。
ようやく、全てに対して理解できました――ううん。まだ一つ残ってた。ジャンス様は、『協力』と仰ってた。この方は、何を考えていらっしゃるんだろ……?
筋肉質な男性――閣下の従者さんの促しによって近づいてきたあの人は、丁寧に挨拶をしてくれた後クスリと微笑んだ。
そういえばあの時、目がきらりとしていた。なのでそれは納得なんだけど、納得できない部分がいくつもある。
「今起きている問題はこの国の問題で、貴方は他国の貴族ですよね? 他国の、しかも王族絡みの問題を詳しく探るのは難しいのに……。どうやって集めたのですか……?」
「それと、閣下と従者殿の態度も気になる。この状況で迷わず通して、おまけに事情の説明までしていたなんて……。アナタは何者なのですか?」
「ぁっ、そうでしたね。申し遅れました。わたしの名は、ナナユ・ジャンス。隣国レーストの、公爵家の娘なのです」
公爵家!? 品があるとは思ってたけど……。そんな身分の方だったんだ……。
「そして――。今遅れて参りました彼は、同じく公爵家の嫡男アイズ・ハイオラ。わたしの婚約者です」
「リル・サートル様、アルフレッド・ロザス様、お会いできて光栄です。あの時はナナユを助けていただき、心より感謝いたします」
茶色の髪を後ろで束ねた中性的な方が現れて、揃って深く深く腰を折り曲げてくださった。
この方が、アイズさん。理不尽な婚約をさせられたジャンス様を、救おうとしていた人なんだ。
「ロザス様の、仰る通りでした。強引な相手は祖国の第一王子でして、あの日わたしは諦め自殺をしようとしていました。ですがアイズは水面下で戦い続けてくれていて、わたしを救い出してくれたのですよ。他貴族を説得してクーデターを起こし、理不尽な王族から権力を奪い取ってくれたんです」
「「そ、そう……なんです……ね……」」
あたしとアルフレッドは、おもわずユニゾンする。
こんなところまで一緒だなんて。あたし達って、縁があるよね……。
「あの時お二人が止めてくださらなければ、ナナはこの世にはいなかった。この手で救い出すことは、できませんでした」
「そして再び彼と一緒の時間を過ごす事は、出来ませんでした。ですのでどうしてもそのお礼を行いたくて、今夜情報をもとにロザス家とサートル家を訪ねたのです」
「ですがお二人は御留守で、サートル様のご両親に事情をお伝えすると行き先を教えてくださいました。そうして現地を訪れてみると近くで騒ぎが起きていた為、様子を窺い今に至ります」
な、なるほど。そういう過程があったんですね。
ようやく、全てに対して理解できました――ううん。まだ一つ残ってた。ジャンス様は、『協力』と仰ってた。この方は、何を考えていらっしゃるんだろ……?
13
お気に入りに追加
3,009
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
双子として生まれたエレナとエレン。
かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。
だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。
エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。
両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。
そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。
療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。
エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。
だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。
自分がニセモノだと知っている。
だから、この1年限りの恋をしよう。
そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。
※※※※※※※※※※※※※
異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。
現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦)
ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦

男爵令嬢の私の証言で公爵令嬢は全てを失うことになりました。嫌がらせなんてしなければ良かったのに。
田太 優
恋愛
公爵令嬢から嫌がらせのターゲットにされた私。
ただ耐えるだけの日々は、王子から秘密の依頼を受けたことで終わりを迎えた。
私に求められたのは公爵令嬢の嫌がらせを証言すること。
王子から公爵令嬢に告げる婚約破棄に協力することになったのだ。

呪われた指輪を王太子殿下から贈られましたけど、妹が盗んでくれたので私は無事でした。
田太 優
恋愛
王太子殿下との望まない婚約はお互いに不幸の始まりだった。
後に関係改善を望んだ王太子から指輪が贈られたけど嫌な気持ちしか抱けなかった。
でもそれは私の勘違いで、嫌な気持ちの正体はまったくの別物だった。
――指輪は呪われていた。
妹が指輪を盗んでくれたので私は無事だったけど。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる