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第1話 王城に着いたら シュゼット視点(2)
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「追放!? わた――わたくし達がですか!?」
「でっ、殿下っ! りっ、理由を我々にお教えください!! なぜそのようなことになるのですか!?」
この国を、国民の皆様を厄災から護らないといけないのに、国外追放だなんて……。殿下は――殿下だけではありません。陛下も、王妃殿下も第2第3王子殿下も王女殿下も、なにをお考えなのですか……!?
「この期に及んでまだしらを切るとはな。そこまで言うなら教えやろう。貴様らが追放される理由は、偉大なる清らかな存在である『聖女』の名を騙(かた)ったからだ」
「わたくしは騙ってなどおりませんっ。すべて事実でござい――」
「ふざけるな。貴様なんぞが聖女に選ばれるはずないだろうが」
これまでは必ず王族から選ばれてきたんだぞ――。それが突然王族外に、しかも男爵家の娘になるはずがない――。
殿下はそのようにおっしゃり、王妃殿下達と共に鼻で笑われました。
「しかも聖女の誕生は毎回、およそ100年に1度の周期で訪れている。現在はまだ70年しか経っていないのだぞ? 今回だけ王族ではなく男爵家の娘で、おまけに周期が乱れるだなんてあり得ない話だ」
「た、確かに不自然に思われるかもしれませんっ。ですが本当にわたくしは聖女に――」
「それにな、貴様らにもうひとつ教えてやろう」
殿下はお顔の前で、人差し指を立たせした。
「聖女はな、『聖女の力を最初から最後まで正しく使える心の持ち主』がなるんだよ。そいつは知らなかっただろ?」
「存じ上げております! わたくしはホズラティア様に――」
「なら、なぜ一度も言及していないんだ? 言ってみろ」
「そ、それは……。無礼にあたることだと思い…………伏せておりました」
王家にも他貴族にも相応しい人間はいないから、自分になった。そちらを直接お伝えするとご機嫌を損ねてしまい、あとあと何があるか分からない――。
陛下達のあの雰囲気と表情でそのように感じ、まさか信じていただけないなんて思っておらず……。意図的に省いていたのです。
「そうか。まあいい。万が一、本当に伏せていたとしてもだ。貴様が聖女に選ばれる可能性は0なんだよ」
「ど、どういうこと、で……。ござい、ますか……?」
「繰り返すが聖女は、『聖女の力を最初から最後まで正しく使える心の持ち主』がなる。現状に不満しか抱いていないド底辺貴族が、大チャンスを国や民のために使えるはずがないだろうが」
貴族の中でももっとも下に位置して、常に世界を下から見上げている存在。あらゆるものに対して羨みなどの感情を抱いている存在がだ――。願いを叶えられるという絶好の機会を目の前にして、私利私欲に走らないわけがない――。
殿下は――他の皆様も路傍の石を見るような目で、わたし達を嗤いました。
「それに引き換え我々には高貴な血が流れていて、それ故に清流の如き澄んだ真っすぐな心を持っている。しかも、常に満たされているんだ。あらゆる角度から見ても、『一番』にならない理由がないのだよ。……男爵家如きが王族を超えられると思ったか……!!」
「……お言葉でございますが……。そう仰っていること自体が、そちらを否定すると――」
「ふん、分かったような口を利きやがって。……これ以上相手をしていると、ストレスが溜まるだけだな」
わたしの声は再び遮られてしまい、殿下はチリンチリンと傍にあった鈴を鳴らしました。するとやがて、扉が開いて衛兵様達が入って来て――
「でっ、殿下っ! りっ、理由を我々にお教えください!! なぜそのようなことになるのですか!?」
この国を、国民の皆様を厄災から護らないといけないのに、国外追放だなんて……。殿下は――殿下だけではありません。陛下も、王妃殿下も第2第3王子殿下も王女殿下も、なにをお考えなのですか……!?
「この期に及んでまだしらを切るとはな。そこまで言うなら教えやろう。貴様らが追放される理由は、偉大なる清らかな存在である『聖女』の名を騙(かた)ったからだ」
「わたくしは騙ってなどおりませんっ。すべて事実でござい――」
「ふざけるな。貴様なんぞが聖女に選ばれるはずないだろうが」
これまでは必ず王族から選ばれてきたんだぞ――。それが突然王族外に、しかも男爵家の娘になるはずがない――。
殿下はそのようにおっしゃり、王妃殿下達と共に鼻で笑われました。
「しかも聖女の誕生は毎回、およそ100年に1度の周期で訪れている。現在はまだ70年しか経っていないのだぞ? 今回だけ王族ではなく男爵家の娘で、おまけに周期が乱れるだなんてあり得ない話だ」
「た、確かに不自然に思われるかもしれませんっ。ですが本当にわたくしは聖女に――」
「それにな、貴様らにもうひとつ教えてやろう」
殿下はお顔の前で、人差し指を立たせした。
「聖女はな、『聖女の力を最初から最後まで正しく使える心の持ち主』がなるんだよ。そいつは知らなかっただろ?」
「存じ上げております! わたくしはホズラティア様に――」
「なら、なぜ一度も言及していないんだ? 言ってみろ」
「そ、それは……。無礼にあたることだと思い…………伏せておりました」
王家にも他貴族にも相応しい人間はいないから、自分になった。そちらを直接お伝えするとご機嫌を損ねてしまい、あとあと何があるか分からない――。
陛下達のあの雰囲気と表情でそのように感じ、まさか信じていただけないなんて思っておらず……。意図的に省いていたのです。
「そうか。まあいい。万が一、本当に伏せていたとしてもだ。貴様が聖女に選ばれる可能性は0なんだよ」
「ど、どういうこと、で……。ござい、ますか……?」
「繰り返すが聖女は、『聖女の力を最初から最後まで正しく使える心の持ち主』がなる。現状に不満しか抱いていないド底辺貴族が、大チャンスを国や民のために使えるはずがないだろうが」
貴族の中でももっとも下に位置して、常に世界を下から見上げている存在。あらゆるものに対して羨みなどの感情を抱いている存在がだ――。願いを叶えられるという絶好の機会を目の前にして、私利私欲に走らないわけがない――。
殿下は――他の皆様も路傍の石を見るような目で、わたし達を嗤いました。
「それに引き換え我々には高貴な血が流れていて、それ故に清流の如き澄んだ真っすぐな心を持っている。しかも、常に満たされているんだ。あらゆる角度から見ても、『一番』にならない理由がないのだよ。……男爵家如きが王族を超えられると思ったか……!!」
「……お言葉でございますが……。そう仰っていること自体が、そちらを否定すると――」
「ふん、分かったような口を利きやがって。……これ以上相手をしていると、ストレスが溜まるだけだな」
わたしの声は再び遮られてしまい、殿下はチリンチリンと傍にあった鈴を鳴らしました。するとやがて、扉が開いて衛兵様達が入って来て――
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