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第39話 一致している、ふたりだから リュクレース視点
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「……………………。ええっ!?」
発生源はわたしの自室なのに、お屋敷全体に聞こえてしまうほどの大声。おもわずそんな大音声が出てしまった切っ掛けは、お父様から渡されたお手紙にありました。
「お帰り、リュクレース。フィリベール殿から手紙が届いているよ」
「ただいま戻りました。お手紙、ですか……? ありがとうございます」
招待されていたお茶会から戻ると清潔感のある封筒を渡され、わたしは急いで服を着替えて汗を流し、お部屋で開封しました。そうすると、その中にある真白の便箋には――
《リュクレース様にお伝えしたい、とても大事なお話がございます。
明日の『合わせ』の前に――正午に、マトローシュルズ湖に来ていただけますでしょうか?》
――突然の提案をお詫びする文章のあとに、そういったものが記されていたのでした。
「…………………………」
大声を出してしまったあと、目を丸くして口をポカンと開けたまま固まる。このようになっている理由は――このような内容のお手紙をいただいたから、ではありません。
もちろんそちらも驚きなどを生んでいますが、一番の理由はソレではないのです。
わたしがこうなっている、一番の理由は――
「…………………………おんなじ、です……」
《フィリーベル様にお伝えしたい、とても大事なお話がございます。
明日の『合わせ』の前に――正午に、マトローシュルズ湖に来ていただけますでしょうか?》
――わたしも、同じ内容のお手紙を送っていたから。
手紙だとあの気持ちを早く伝えることができますが、やっぱり文字ではなく直接声でお伝えしたかった。ですので『お会いしたい』とだけ、送らせてもらっていたのです。
「…………………………こんなことって、あるんですね……」
わたしが送ったお手紙は、ちょうど今頃届きます。つまり内容だけではなく、送ったタイミングも同じ。
そんな嘘みたいな事実に、さらに驚き――おもわず笑みが零れ、わたしは紙面をそっと指でなぞりました。
「あったかい、文字ですね」
とても大事なお話。
それには悪い可能性も含まれます。
けれど、文字を見ていたら分かりました。
ですのでわたしは、お手紙をぎゅっと抱き締めて――
発生源はわたしの自室なのに、お屋敷全体に聞こえてしまうほどの大声。おもわずそんな大音声が出てしまった切っ掛けは、お父様から渡されたお手紙にありました。
「お帰り、リュクレース。フィリベール殿から手紙が届いているよ」
「ただいま戻りました。お手紙、ですか……? ありがとうございます」
招待されていたお茶会から戻ると清潔感のある封筒を渡され、わたしは急いで服を着替えて汗を流し、お部屋で開封しました。そうすると、その中にある真白の便箋には――
《リュクレース様にお伝えしたい、とても大事なお話がございます。
明日の『合わせ』の前に――正午に、マトローシュルズ湖に来ていただけますでしょうか?》
――突然の提案をお詫びする文章のあとに、そういったものが記されていたのでした。
「…………………………」
大声を出してしまったあと、目を丸くして口をポカンと開けたまま固まる。このようになっている理由は――このような内容のお手紙をいただいたから、ではありません。
もちろんそちらも驚きなどを生んでいますが、一番の理由はソレではないのです。
わたしがこうなっている、一番の理由は――
「…………………………おんなじ、です……」
《フィリーベル様にお伝えしたい、とても大事なお話がございます。
明日の『合わせ』の前に――正午に、マトローシュルズ湖に来ていただけますでしょうか?》
――わたしも、同じ内容のお手紙を送っていたから。
手紙だとあの気持ちを早く伝えることができますが、やっぱり文字ではなく直接声でお伝えしたかった。ですので『お会いしたい』とだけ、送らせてもらっていたのです。
「…………………………こんなことって、あるんですね……」
わたしが送ったお手紙は、ちょうど今頃届きます。つまり内容だけではなく、送ったタイミングも同じ。
そんな嘘みたいな事実に、さらに驚き――おもわず笑みが零れ、わたしは紙面をそっと指でなぞりました。
「あったかい、文字ですね」
とても大事なお話。
それには悪い可能性も含まれます。
けれど、文字を見ていたら分かりました。
ですのでわたしは、お手紙をぎゅっと抱き締めて――
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