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第26話 幼馴染2人のその後~ラウルの場合・その7~ ラウル視点(1)

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「ラウル会長、お疲れ様です」
「会長、お疲れ様です!」
「はい、お疲れ様です。明日も色々と処理すべきものがあります。ノエル副会長もレイオンス書記も、ゆっくり休んで明日に備えてくださいね」

 9月7日の、午後6時手前。今日の職務を終えた俺は部下・・と生徒会長室の前で別れ、心の中で含み笑いながら廊下を歩き始めた。

((歴史ある侯爵家の長女と有力侯爵家の長男と対等に話しているどころか、仕事中は駒として動かせる。何度味わってもいいものだな……!))

 ノエル様のフェローラン家とレオンス様のレダロン家は、どちらも本来なら見上げるほど高い場所にいるお家。だがそんな力関係は、学院内では大きく変化する。
 俺の下につく存在、となる。
 その事実は何回経験しても最高に気持ちがよくて、形容しがたい興奮を生む。今日の生徒会で貯まったソレを思い出しほくそ笑むのは、今やすっかり毎日の楽しみの一つになっている。

((これを味わえるのが、勝者なんだよなぁ。しかも今日は、くくくくく……!!))

 ノエル様の間違いを指摘し、至急の修正を命令・・した。普段以上に駒として扱えたため悦びは自然と何倍にも増していて、いけないいけない。おもわず実際に笑みがこぼれてしまっていた。

((…………誰にも見られていないな…………? ………………よし、大丈夫だったようだな))

 こんな姿を見られてしまったら、何を言われるか分からない。
 咳払いで顔面の筋肉を引き締め、決して顔に出ないようにしながら悦びに浸り――

((ん? なんだ……? 俺の話題……?))

 浸っていると、通りかかった扉の向こうから――教員用の部屋から、うっすらと『ラウルくん』という声が聞こえた。
 この学院にラウルは俺だけだ。俺の話題で間違いないな。

((ははぁん、俺を褒めているのか。どんな風に褒められているんだろうな……?))

 つい数時間前に働きっぷりを絶賛されていて、ピンときた俺はコッソリと扉に右耳をくっつけた。

((ええと……。なになに……?))

 耳に神経を集中させると、内部の話し声がより鮮明に聞こえてくるようになって――

『ラウルくんの、定期試験の成績なんですが……』
『成績? ああ、先月も独走でしたね。それがどうかしたのですか?』
『…………おかしいと、思うようになったんですよね……』

 ――そんなやり取りが、右耳に飛び込んで来たのだった。


((おかしいだって……!? なにがおかしいんだ……!?))


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