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第22話 幼馴染2人のその後~リュクレースの場合・その6~ リュクレース視点(2)
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「それにしても……。突然、なんなのでしょうね……?」
「わたしも何度か考えましたが、予想さえできませんでした。不思議ですよね……?」
カレイドスコープでの共演が終わってから、およそ3時間後。わたし達の『もう一つの弾きたい曲』であり『原点の曲』であるインテグリティを奏で、今日もふたつの音を心ゆくまで楽しんだあとのこと。
わたし達はセラトルフ家所有の馬車に乗り換え、練習場からセラトルフ邸へと――マリィ先生のもとへと移動していました。
――直接会って2人に話したいことが、99・9パーセントの確率で3日後に生まれると思う。だからそれに合わせて食事会に招待したい――。
今日いつもより集合が早かったもう一つの理由が、こちら。3日前マリィ先生の使者の方がいらっしゃり、演奏をしたあとお会いすることになっているのです。
「僕らへの新たな演奏の依頼なら、使者の方に言伝を頼んでいますよね?」
「わたしもそちらが過ぎりましたが、同じ推理で否定されました。そちらは多分、理由ではありませんよね」
実際にこれまで、そういった形でご連絡をいただいていました。今回に限って違っている可能性は、とても低いですよね。
「……99・9パーセントの確率で生まれる。その言い方は、先生以外の何かが関係している証左となりますよね」
「先生ではない何かとなると、なんなのでしょうかね……? 『食事会』が関係してそうにも見えますが、それも分からないんですよね」
「食事会を開くほどのことがあるのか、それとも、単にわたし達を呼んだから振る舞おうと思ってくださったのか。先生の場合は、『合わせて』がどこに掛かるのか判断できませんよね」
先生はご自身の菜園で収穫されたものだけで作ったお料理を、定期的に弟子に振る舞われているんです。わたし達は以前招待していただいてから随分と時間が空いていますので、『せっかくだから今回はこの二人に』と思ってくださった可能性もあります。
「ちなみに僕は、後者だと思っています。リュクレース様はどちらだと思いますか?」
「時期やお優しい性格を鑑みて、わたしも後者だと思っていました。ですが昨夜、前者かもしれないと思うようになりました」
「そう、なのですね。それには何か理由が?」
「ナディア――わたしの侍女は占いが得意で、満月の夜にのみ行える――的中率が高いと噂のある占いをしてくれたのですよ。そうしたら3日後に『憧れのひとつがやって来る』と、2週間後に――……」
「? リュクレース様?」
「ごめんなさい、なんでもありません。3日後、つまり今日憧れが待っていると出たので、そう思うようになったのですよ」
2週間後に『良からぬものがやって来てしまう』。
もうひとつ出た占いを口にしたら、空気が悪くなっています。それにナディア曰く外れる時も多々あるとのことですし、触れない方がいいですよね。
「なるほど、憧れ、ですか。リュクレース様が憧れていて、かつ、僕も関係しているもの。う~ん……」
「憧れはいくつも浮かびますが、フィリベール様も関係しているとなると、絞れなくなるのですよね」
ほぼほぼピアノ絡みだと思うのですが、実現しそうな『憧れ』は思い浮かびません。ですのでお互い唸ったまま時間が過ぎていき、予想が出ないままセラトルフ邸に到着して――
「………………」
「………………」
――間もなく、わたし達は揃って言葉を失うことになるのでした。
なぜなら――
「わたしも何度か考えましたが、予想さえできませんでした。不思議ですよね……?」
カレイドスコープでの共演が終わってから、およそ3時間後。わたし達の『もう一つの弾きたい曲』であり『原点の曲』であるインテグリティを奏で、今日もふたつの音を心ゆくまで楽しんだあとのこと。
わたし達はセラトルフ家所有の馬車に乗り換え、練習場からセラトルフ邸へと――マリィ先生のもとへと移動していました。
――直接会って2人に話したいことが、99・9パーセントの確率で3日後に生まれると思う。だからそれに合わせて食事会に招待したい――。
今日いつもより集合が早かったもう一つの理由が、こちら。3日前マリィ先生の使者の方がいらっしゃり、演奏をしたあとお会いすることになっているのです。
「僕らへの新たな演奏の依頼なら、使者の方に言伝を頼んでいますよね?」
「わたしもそちらが過ぎりましたが、同じ推理で否定されました。そちらは多分、理由ではありませんよね」
実際にこれまで、そういった形でご連絡をいただいていました。今回に限って違っている可能性は、とても低いですよね。
「……99・9パーセントの確率で生まれる。その言い方は、先生以外の何かが関係している証左となりますよね」
「先生ではない何かとなると、なんなのでしょうかね……? 『食事会』が関係してそうにも見えますが、それも分からないんですよね」
「食事会を開くほどのことがあるのか、それとも、単にわたし達を呼んだから振る舞おうと思ってくださったのか。先生の場合は、『合わせて』がどこに掛かるのか判断できませんよね」
先生はご自身の菜園で収穫されたものだけで作ったお料理を、定期的に弟子に振る舞われているんです。わたし達は以前招待していただいてから随分と時間が空いていますので、『せっかくだから今回はこの二人に』と思ってくださった可能性もあります。
「ちなみに僕は、後者だと思っています。リュクレース様はどちらだと思いますか?」
「時期やお優しい性格を鑑みて、わたしも後者だと思っていました。ですが昨夜、前者かもしれないと思うようになりました」
「そう、なのですね。それには何か理由が?」
「ナディア――わたしの侍女は占いが得意で、満月の夜にのみ行える――的中率が高いと噂のある占いをしてくれたのですよ。そうしたら3日後に『憧れのひとつがやって来る』と、2週間後に――……」
「? リュクレース様?」
「ごめんなさい、なんでもありません。3日後、つまり今日憧れが待っていると出たので、そう思うようになったのですよ」
2週間後に『良からぬものがやって来てしまう』。
もうひとつ出た占いを口にしたら、空気が悪くなっています。それにナディア曰く外れる時も多々あるとのことですし、触れない方がいいですよね。
「なるほど、憧れ、ですか。リュクレース様が憧れていて、かつ、僕も関係しているもの。う~ん……」
「憧れはいくつも浮かびますが、フィリベール様も関係しているとなると、絞れなくなるのですよね」
ほぼほぼピアノ絡みだと思うのですが、実現しそうな『憧れ』は思い浮かびません。ですのでお互い唸ったまま時間が過ぎていき、予想が出ないままセラトルフ邸に到着して――
「………………」
「………………」
――間もなく、わたし達は揃って言葉を失うことになるのでした。
なぜなら――
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