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第6話 幼馴染2人のその後~リュクレースの場合・その1~ リュクレース&???視点(2)
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「………………フィリベール様……。すごかった、ですね……」
「………………ええ、リュクレース様……。すごかった、ですね……」
演奏が終わってから、3分くらいは経ったでしょうか。ようやくわたし達は喋れるようになりましたが、まだこのような単純なことしか言えずにいました。
マトローシュルズ湖の景色が浮かぶ。
わたし達の演奏で、こんなことが起きるなんて……。夢にも思いませんでした……。
「……リュクレース様となら、『ならでは』の音を作り出せると思っていました。ですが、それ以上のことが待っていましたね」
「……はい。わたしの想像、予想も、軽々と超えてゆきました」
まさか、音以外のものも生まれるだなんて。景色が見えるだなんて。
驚きました。
「……僕達が揃って演奏をするのは、今日が初めて。それゆえに、当然なのですが――。振り返ってみると、僕の演奏に改善点は多々ありました」
「わたしも、多く存在していました。……それなのに」
「こうなりました。……それらの改善点がなくなったら……。より、音と音が調和するようになったら……」
「どうなるのでしょう……?」
――知りたい――。
それに。
なにより。
――楽しい――。
だから、もっと弾きたい。もっと聴きたい。
わたし達の指は自然に鍵盤の上に移動していて、
「リュクレース様」
「フィリベール様」
再び、演奏が始まります。
『~♪~♪~♪~♪』
『~♪~♪~♪~♪』
『~♪~♪~♪~♪』
『~♪~♪~♪~♪』
『~♪~♪~♪~♪』
『~♪~♪~♪~♪』
そうしてわたし達は、二つの音による調和に浸り――そんな時間はその後も繰り返され、なんと合計16回も演奏を行ったのでした。
「……もうお別れの時間なのですか。こんなに演奏したのに、全然足りませんね」
「はい、全然足りません。もっともっと弾きたいと思っています」
ですのでわたし達は次の約束を行い、できるなら明日にでもお会いしたかったのですが――。お互い出席しなくてはならないお茶会やパーティーなどがあり、次回は1か月後にお会いすることになったのでした。
○○
「思った通りだ。あの子たち、愉快な音を奏でるじゃないか」
「『きっと面白いことがあるから、コッソリのぞき見しよう』。仰る通りでしたね」
「だから言っただろう? ソレに対して、ブツクサと文句を言っていた女がいたようだがねえ?」
「……いくらお二人の自然体を見るためとはいえ、箱の中に長時間隠れるのはどうかと思うのですが……。そのおかげであの音を聴けました。先生には感謝しております」
「リュクレースちゃんとフィリベールちゃん。元々あの子らはねえ、よく似ている、相性がすこぶるよかったのさ。音楽家としても、人間としてもね」
「様々な面で親和性があるからこその、あの音。ということですか」
「そんなふたりが、音の基(もと)――マトローシュルズ湖に行き、その場でたくさんの言葉を交わし、水と空気を共有して共感したのも大きいね。……初合わせでコレだよ。『音』だけではなく『演奏の呼吸』も100パーセントシンクロするようになったら、どうなるのかねぇ」
「……底が見えませんね。このような可能性を秘めたふたりが身近に居ただなんて、気付きませんでした」
「ワタシは前から、『あのふたりは連弾でこそ活きる』って気付いていたんだけどねぇ。お互い、婚約相手が居ただろう? しかも片方はアレがアレだ。ぜったいにお目に掛かれない組み合わせだと――連弾なんて夢のまた夢だと思っていたけど、『理想形』が意外な形で実現したよ」
「『婚約者が同時期にいなくなる』『同じ日に同じ場所に行く』などなど、いくつもの偶然が重なったようですね。まさかここまでの相乗効果が発生するだなんて、改めて連弾というものの奥深さを――? いかがなさいましたか?」
「ちょいと愉快なことが浮かんだよ。そうさね、アレのスケジュールを調整してみるかねぇ。上手くいったら…………ふふふ。きっと驚くだろうねえ」
「………………ええ、リュクレース様……。すごかった、ですね……」
演奏が終わってから、3分くらいは経ったでしょうか。ようやくわたし達は喋れるようになりましたが、まだこのような単純なことしか言えずにいました。
マトローシュルズ湖の景色が浮かぶ。
わたし達の演奏で、こんなことが起きるなんて……。夢にも思いませんでした……。
「……リュクレース様となら、『ならでは』の音を作り出せると思っていました。ですが、それ以上のことが待っていましたね」
「……はい。わたしの想像、予想も、軽々と超えてゆきました」
まさか、音以外のものも生まれるだなんて。景色が見えるだなんて。
驚きました。
「……僕達が揃って演奏をするのは、今日が初めて。それゆえに、当然なのですが――。振り返ってみると、僕の演奏に改善点は多々ありました」
「わたしも、多く存在していました。……それなのに」
「こうなりました。……それらの改善点がなくなったら……。より、音と音が調和するようになったら……」
「どうなるのでしょう……?」
――知りたい――。
それに。
なにより。
――楽しい――。
だから、もっと弾きたい。もっと聴きたい。
わたし達の指は自然に鍵盤の上に移動していて、
「リュクレース様」
「フィリベール様」
再び、演奏が始まります。
『~♪~♪~♪~♪』
『~♪~♪~♪~♪』
『~♪~♪~♪~♪』
『~♪~♪~♪~♪』
『~♪~♪~♪~♪』
『~♪~♪~♪~♪』
そうしてわたし達は、二つの音による調和に浸り――そんな時間はその後も繰り返され、なんと合計16回も演奏を行ったのでした。
「……もうお別れの時間なのですか。こんなに演奏したのに、全然足りませんね」
「はい、全然足りません。もっともっと弾きたいと思っています」
ですのでわたし達は次の約束を行い、できるなら明日にでもお会いしたかったのですが――。お互い出席しなくてはならないお茶会やパーティーなどがあり、次回は1か月後にお会いすることになったのでした。
○○
「思った通りだ。あの子たち、愉快な音を奏でるじゃないか」
「『きっと面白いことがあるから、コッソリのぞき見しよう』。仰る通りでしたね」
「だから言っただろう? ソレに対して、ブツクサと文句を言っていた女がいたようだがねえ?」
「……いくらお二人の自然体を見るためとはいえ、箱の中に長時間隠れるのはどうかと思うのですが……。そのおかげであの音を聴けました。先生には感謝しております」
「リュクレースちゃんとフィリベールちゃん。元々あの子らはねえ、よく似ている、相性がすこぶるよかったのさ。音楽家としても、人間としてもね」
「様々な面で親和性があるからこその、あの音。ということですか」
「そんなふたりが、音の基(もと)――マトローシュルズ湖に行き、その場でたくさんの言葉を交わし、水と空気を共有して共感したのも大きいね。……初合わせでコレだよ。『音』だけではなく『演奏の呼吸』も100パーセントシンクロするようになったら、どうなるのかねぇ」
「……底が見えませんね。このような可能性を秘めたふたりが身近に居ただなんて、気付きませんでした」
「ワタシは前から、『あのふたりは連弾でこそ活きる』って気付いていたんだけどねぇ。お互い、婚約相手が居ただろう? しかも片方はアレがアレだ。ぜったいにお目に掛かれない組み合わせだと――連弾なんて夢のまた夢だと思っていたけど、『理想形』が意外な形で実現したよ」
「『婚約者が同時期にいなくなる』『同じ日に同じ場所に行く』などなど、いくつもの偶然が重なったようですね。まさかここまでの相乗効果が発生するだなんて、改めて連弾というものの奥深さを――? いかがなさいましたか?」
「ちょいと愉快なことが浮かんだよ。そうさね、アレのスケジュールを調整してみるかねぇ。上手くいったら…………ふふふ。きっと驚くだろうねえ」
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