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プロローグ リュクレース・ハルトーン視点(1)
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「リュクレース、いよいよだな」
「はい、お父様。やっと、久しぶりにラウルに会えます」
1月16日。わたしはナズアリエ伯爵邸の玄関部前で、満面の笑みを浮かべながら頷きを返しました。
『リュクレースとの約束を守るには、もっと箔をつけないといけない。そのために俺、南側の隣国に留学することにしたんだ』
『ソコは名門だから良い成績を維持していたら注目されるし、生徒会長になれば更に箔が付く。絶対に優秀な成績を収めてみせるし、生徒会長にだってなってやるさ!』
リュクレースを、世界の誰よりも幸せにするよ!――。
父親同士が同格の旧友という理由で、幼馴染であり婚約者となったラウル。彼は婚約を結ぶ際にそう言ってくれて、有言実行とするためおよそ2年前に、ハフテールにある全寮制の学び舎『王立・ラドラロンド』に留学しました。
《リュクレース、やったよ! 生徒会長に選ばれた!!》
そんなラウルは長期休暇も一切帰国せず勉学に励み続け、その努力によって入学直後から学年1位を維持。その成績や学院内での態度が認められたそうで、全生徒による投票の結果念願の生徒会長への就任が決まったのでした。
《少しくらいは、のんびり過ごしても罰は当たらないはず。2週間後にそっちに戻るよ!》
ですので一時帰国を行うことになり、今日ラウルが到着するんです。
「学年主席の維持だけでもすごいのに、生徒会長とはな。ロマン、お前の息子は我々の想像を超えてゆくな」
「ああサロモン、また驚かされてしまったよ。いやはや、愛の力は強いな」
「そうですね、父上。目標を持った兄上は、昔から本当にすごかった。リュクレース姉さんの存在がなければ、ここまでのことにはならなかったでしょうね」
一緒にお迎えの準備をしていたラウルの父とラウルの弟が苦笑しつつ感嘆の息を漏らして――あっ!! そうしていると、馬車の音が聞こえてきました。
「おお、もう着くみたいだな。リュクレース、じきにラウルくんが――む? 馬車の音が、複数聞こえないか……?」
「は、はい。きこえ、ますね」
「サロモン、リュクレースくんも、気のせいだろう。帰国の際に学院が手配してくれるのは、優秀な護衛5人と馬車1台だ。複数聞こえるはずがない――……いや……。たしかに、複数聞こえるな……?」
「ボクも、一台で帰国すると聞いていますよ。どうなっているのでしょうね……?」
聞こえるはずのない音が聞こえてくる。そんな不思議な現状に揃って首を傾げていると、更に驚く――わたし達全員が、おもわず唖然となってしまうことが起きたのでした。
「「「「知らない馬車が、2台……。一緒に入って来た……!?」」」」
「はい、お父様。やっと、久しぶりにラウルに会えます」
1月16日。わたしはナズアリエ伯爵邸の玄関部前で、満面の笑みを浮かべながら頷きを返しました。
『リュクレースとの約束を守るには、もっと箔をつけないといけない。そのために俺、南側の隣国に留学することにしたんだ』
『ソコは名門だから良い成績を維持していたら注目されるし、生徒会長になれば更に箔が付く。絶対に優秀な成績を収めてみせるし、生徒会長にだってなってやるさ!』
リュクレースを、世界の誰よりも幸せにするよ!――。
父親同士が同格の旧友という理由で、幼馴染であり婚約者となったラウル。彼は婚約を結ぶ際にそう言ってくれて、有言実行とするためおよそ2年前に、ハフテールにある全寮制の学び舎『王立・ラドラロンド』に留学しました。
《リュクレース、やったよ! 生徒会長に選ばれた!!》
そんなラウルは長期休暇も一切帰国せず勉学に励み続け、その努力によって入学直後から学年1位を維持。その成績や学院内での態度が認められたそうで、全生徒による投票の結果念願の生徒会長への就任が決まったのでした。
《少しくらいは、のんびり過ごしても罰は当たらないはず。2週間後にそっちに戻るよ!》
ですので一時帰国を行うことになり、今日ラウルが到着するんです。
「学年主席の維持だけでもすごいのに、生徒会長とはな。ロマン、お前の息子は我々の想像を超えてゆくな」
「ああサロモン、また驚かされてしまったよ。いやはや、愛の力は強いな」
「そうですね、父上。目標を持った兄上は、昔から本当にすごかった。リュクレース姉さんの存在がなければ、ここまでのことにはならなかったでしょうね」
一緒にお迎えの準備をしていたラウルの父とラウルの弟が苦笑しつつ感嘆の息を漏らして――あっ!! そうしていると、馬車の音が聞こえてきました。
「おお、もう着くみたいだな。リュクレース、じきにラウルくんが――む? 馬車の音が、複数聞こえないか……?」
「は、はい。きこえ、ますね」
「サロモン、リュクレースくんも、気のせいだろう。帰国の際に学院が手配してくれるのは、優秀な護衛5人と馬車1台だ。複数聞こえるはずがない――……いや……。たしかに、複数聞こえるな……?」
「ボクも、一台で帰国すると聞いていますよ。どうなっているのでしょうね……?」
聞こえるはずのない音が聞こえてくる。そんな不思議な現状に揃って首を傾げていると、更に驚く――わたし達全員が、おもわず唖然となってしまうことが起きたのでした。
「「「「知らない馬車が、2台……。一緒に入って来た……!?」」」」
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