困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?

柚木ゆず

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第12話 過去~好きになった理由~ エリオッツ視点

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 僕を産んでくれた人たちは幼い頃病でこの世を去ってしまっていて、要するに自分は養子。零落した名家の血を引くものの、結局は平民の生まれ。
 それ故に『フェリルーザ家』の一員となってからは、あらゆる場所で様々な仕打ちを受けてきた。

『平民はあっちいってろ!』
『平民と話すとバカになるって、お母様が言ってたもん。エリオッツとはお話しない』

『平民は土でも食ってりゃいいんだよ』
『エリオッツ、お前は床で食え。平民如きが貴族様と同じ高さで食えると思うな』

『なんか臭わないか……? ああ分かったぞ。エリオッツが近くにいるからだ』
『エリオッツが近くにいると、上手くいかないことが多い。アイツは疫病神だ』
『エリオッツがいると運気が下がる。視界から消えてくれ』

 幼少期も、少年期も、青年期も。周囲からは常に暴言が飛んで来て、暴力を振るわれることも珍しくはなかった。
 味方になってくれるのはルシアンおじさんとミレアおばさん――父と母だけで、使用人でさえも陰では僕を嗤っていた。

((つらい……。かなしい……。くるしいよ……))

 今は大人になったこともあって・・・・・・、心にダメージを受けはしなくなった。けれど精神的にも幼い小さな頃は、とても辛かった。
 心が痛かった。
 お父様とお母様に見つかったら、心配や後悔をさせてしまうから――。僕はいつも『大丈夫』と言い続けて笑顔を貼りつけ、ひとりきりになった時に泣いていた。

((ぅぅ……。もういやだ……。いやだよ……))

 でも『ひとり』だと負の感情を吐き出せる量に限度があり、気付かない間に心の許容範囲を超えかけていて。僕の精神は限界を迎えかけてきた。
 自死が頻繁に頭をよぎるようになっていた。

((……今日も、貴族の人と会わないといけない……。あの伯父さんと伯母さんに会わないといけない……。食事の時にナイフが出るから……。喉を刺して死んじゃおうかな……))

 あの日はそんなことを当たり前のように考えていて、ケヴィック達に白い目で見られたら死のうと本気で思っていた。どうせいつもみたいに見てくるんだろうから、自分はきっと今日自殺すると思っていた。

 でも。
 そうはならなかった。

 なぜならその日、僕は――

「はじめましてっ。お兄ちゃんって呼んでいいですかーっ?」

 ――『光』と出会ったのだから。

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