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第3話 変化と変化 アン視点(1)
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「アン、明日は出掛けよう。君に見せたい、とっておきの風景があるんだ」
「アン、今夜は出掛けよう。友人に素晴らしいリストランテを教わったんだ」
「アン、今日はプレゼントを買って来たんだ。受け取ってもらえると、嬉しいな」
「アン君、前にも言ったがここは君の屋敷でもある。不満があれば遠慮なく言っておくれ」
「もちろん、これは口先ではないわ。すべて本心で言っていて、いつでも遠慮なく言って頂戴ね」
あの日から、わたしの毎日は再び一変した。
美しい夜空を眺めに高台へ行ったり。シーフードの美味しい高級店を訪れたり。わたしをイメージして選んだという、リングやネックレスを贈られたり。いつもわたしを無視していたダニエル様やアリックス様、姿を見るたびに嗤っていた使用人達が、ニコニコして近づいてきたり。
全員中身が入れ替わってしまったと感じるような日が続いていた。
「アン、さあおやつを食べよう。今日のおやつは、最近評判になっている店のアップルパイだよ。君に食べてもらいたくて、今朝俺が買って来たんだよ」
「わぁ、わざわざありがとうございます。はい、いただきます」
おかしな時間が始まってから、ちょうど3週間後。今日もわたしは偽りの笑顔を貼り付け、ガーデンテーブルでイブライム様と笑い合い――ながら、今回はいつもとは違い密かに眉を寄せた。
((さっき執務室から出てきてから――ダニエル様とアリックス様と内緒話をしてから、イブライム様の様子がおかしい))
一見するといつも通りなものの、よくよく見ると違和感が複数ある。大して暑くないのに首には汗が浮かんでいるし、カップを持つ手も微妙に震えていた。
((……あの日から、それなりに時間が経った。そろそろ何かしらの行動を起こすつもりで、緊張をしているのかしら……?))
そんな予想は、的中。
様子を窺い始めて、およそ十五分が経過した頃だった。表向きはゆったりと優雅に、二人でティータイムを楽しんでいると――
「たっ、大変だイブライム!! やられた!! 全財産の半分近くを失ってしまった!!」
顔面を蒼白にしたダニエル様が飛んで来て、オーバーに頭を抱えたのだった。
「アン、今夜は出掛けよう。友人に素晴らしいリストランテを教わったんだ」
「アン、今日はプレゼントを買って来たんだ。受け取ってもらえると、嬉しいな」
「アン君、前にも言ったがここは君の屋敷でもある。不満があれば遠慮なく言っておくれ」
「もちろん、これは口先ではないわ。すべて本心で言っていて、いつでも遠慮なく言って頂戴ね」
あの日から、わたしの毎日は再び一変した。
美しい夜空を眺めに高台へ行ったり。シーフードの美味しい高級店を訪れたり。わたしをイメージして選んだという、リングやネックレスを贈られたり。いつもわたしを無視していたダニエル様やアリックス様、姿を見るたびに嗤っていた使用人達が、ニコニコして近づいてきたり。
全員中身が入れ替わってしまったと感じるような日が続いていた。
「アン、さあおやつを食べよう。今日のおやつは、最近評判になっている店のアップルパイだよ。君に食べてもらいたくて、今朝俺が買って来たんだよ」
「わぁ、わざわざありがとうございます。はい、いただきます」
おかしな時間が始まってから、ちょうど3週間後。今日もわたしは偽りの笑顔を貼り付け、ガーデンテーブルでイブライム様と笑い合い――ながら、今回はいつもとは違い密かに眉を寄せた。
((さっき執務室から出てきてから――ダニエル様とアリックス様と内緒話をしてから、イブライム様の様子がおかしい))
一見するといつも通りなものの、よくよく見ると違和感が複数ある。大して暑くないのに首には汗が浮かんでいるし、カップを持つ手も微妙に震えていた。
((……あの日から、それなりに時間が経った。そろそろ何かしらの行動を起こすつもりで、緊張をしているのかしら……?))
そんな予想は、的中。
様子を窺い始めて、およそ十五分が経過した頃だった。表向きはゆったりと優雅に、二人でティータイムを楽しんでいると――
「たっ、大変だイブライム!! やられた!! 全財産の半分近くを失ってしまった!!」
顔面を蒼白にしたダニエル様が飛んで来て、オーバーに頭を抱えたのだった。
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