もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました

柚木ゆず

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第14話 兄~夜会・待望の時~ ロマニ視点(1)

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(ロマニ様ぁ。一緒に、頑張りましょうねぇ)
(ああ、アニー。共に幸せな未来へと進もう)

 賑々しさのある夜会の会場、の外。人気(ひとけ)がない廊下で会っていた俺達は、微笑み合って踵を返した。
 正義感の強い・・・・・・俺はアニーの訴えを聞いて、アンナを許せなくなっている。そこで彼女を連れて会場へと戻り、叱責を行い婚約を破棄するのだ。

(…………ふふふ。あたしのために働いて頂戴ね、ロマニ)
(??? アニー? 何か言ったかい?)
(ふぇ? なにも言ってませんぉ? 空耳さん、じゃないですかぁ?)
(小さな声が聞こえた気がしたが、君は嘘を吐かない、吐けない人間だ。そのようだね)

 アニーはその姿を見た瞬間、この身体に衝撃を走らせた程の人。アンナとは違い、数多の美点魅力を持つ人。『純』な人。
 なので俺は勘違いを詫び、仲良く夜会の会場へと戻った。
 絢爛。この光眩しい空間が、アンナ。お前の処刑場だ。

((お前がアニーより先に目の前に現れたことによって、俺は大きな回り道をする羽目になったんだ。この俺を惑わせた罪、しっかりと償わせてやる……!!))

 例えるならそれは、業火。激しい怒りを放ちながら会場を移動してゆき、はははっ。どうやら世の中も、お前の終焉を望んでいるようだ。
 アンナは丁度・・、中央付近――この空間で最も目立つ場所におり、不思議そうに首を傾げた。

「? ロマニ様、怖いお顔をされてどうしたのですか? なぜ、アニーザレテリア様とご一緒なのですか?」
「……………………」
「ロマニ様? どうされたのですか?」
「……………………しらを切るつもりか。ならば皆様の前で、しかと語ってやろうじゃないか」

 俺は生徒副会長を務めた秀才で、秀才は演技も超一流。そのためあたかも廊下で真実を知った体で大声を出し、周囲の視線を一気に引き付ける。
 そして、会場にある全視線を集めた俺はまず――

「アンナ。腐りきった性根を持つ貴様との婚約は、この瞬間を以て破棄する!!」

 瞳を潤ませたアニーを庇いながら、ハッキリと宣告した。
 当然無実なアンナは、すぐに否定をしてくるだろう。しかし俺には複数の仕込みがあるから、やがてお前の罪は確定となって――

「兄さん。嘘はいけませんよ」

 ――は……?
 ダヴィッド……? お前は、何を言って…………?

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