婚約者が継母や妹に陥れられそうになっているので、それを利用して継母たちを陥れることにした

柚木ゆず

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第5話 その夜の出来事 俯瞰視点

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(お疲れ様です。計画は、ヤツらの反応はどうでしたか?)

 深夜1時ちょうど。黒いフードをかぶった男が、門番ライオネルにそっと近づきました。
 彼は、この計画の発起人オーバン。進捗を確認するべく、門番こと伝達係に接触していたのです。

(順調、効果覿面でしたよ。オーバン様の予想通りに――予想以上に、効いています)

 3人の外出中に部屋に侵入し、一切怪しまれることなくビスクドールを設置できたこと。以降も全員がしっかりと演技を行い、違和感を抱かれていないこと。
 どっさりと吐いて失神したこと。3人全員の部屋にビクスドールがあったと知り、震え上がっていたこと。激しく怖がり処分を命じたこと。今は使用人の部屋に押しかけ、やっと眠りについたこと。
 前日に起きた出来事を、ライオネルは声を弾ませて伝えました。

(……我々はこれまで、あのような形でしかお嬢様をお守りできませんでした。『守り』ではなく『攻め』を行えている現状に、幸せを感じております)
(立場上、俺の介入は不可能。貴方がたが居てくださらなければ、アレットは常に地獄のような日々を過ごす羽目になっていました。……それに)

 目の前にいる、ライオネル。そして屋敷――その中にいる、使用人達。味方全員の姿を、思い浮かべました。

(貴方がたがその『守り』を貫いてくださったおかげで、この計画を進めることができています。皆さんこそが、なによりの功労者ですよ)

 お世辞ではなく、すべて本心。オーバンは心から感謝の言葉を告げ、携えていた二つの大きな麻袋を差し出しました。

(この中に、次のステップに必要なものが入っています。その様子なら決行は2~3日程度ズレるかもしれませんが、それでも内容に変更はありません。事前にお伝えしたように、ケースCでの使用をお願いします)
(承知いたしました。こちらはこのあとすぐ、マイクに渡しておきます)

 作戦の第2段階は、騒動が起きる場所は異なります。そのため別の人間が担当することになるのですが、成功は全員の悲願。全員がアレットの幸せを強く望んでいるが故に、失態が演じられることはありません。

(よろしくお願いします。ではまた、お会いしましょう)
(はい! オーバン様、引き続きよろしくお願い致します)
(任せてください。……共に、最後まで走り抜きましょう)

 オーバンとライオネル。二人は固く握手を交わし、オーバンは闇の中へと消えていったのでした。
 そうしてオーバンは新たな準備を始め、ライオネル達は第2段階の準備を始め――


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