あこがれチェンジ!

柚木ゆず

文字の大きさ
上 下
57 / 68

16 あたし達が推理! (5)

しおりを挟む
「けどヒントなんだから、どこかに命令があるはず……。どこだろどこだろ……」
「周りに看板は、ないね。そういう感じのお店も、ない。工事は……」
「工事も、してないですー」

 工事をしてたら、ここは通れません、とかあるけど、どこにもなし。
 こういうのじゃ、ないみたい。

「立ち入り禁止になってる場所は………………そういう場所も、ないか。この周辺にも、ないね」

 ナツキちゃんさんが少し走って見てきてくれたけど、残念。それも違うみたい。

「強く命令されるのが、大嫌い……。ナツキちゃんさんナツキちゃんさん。命令って、他の意味もあるのかなぁ?」
「ううん、これ以外の意味はないよ。アタシは習ってないし、辞書にもない」

 念のためにスマートホンで調べてくれて、あたしにも画面を見せてくれた。
 漢字のコトがのってる本に、ないんだもん。絶対にないよね。

「だったらやっぱり、普通の命令、なのかぁ。他に命令なのは……」
「………………」
「命令なのは……。命令なのは……」
「………………」
「んーと……。んーと……。んーと……」
「………………」

 真剣に考えてるけど、思い浮かばない。
 ナツキちゃんさんも一生懸命で、考えながら近くを見回してるけど何も見つからない。
 ぁぅぅ。その4も難しいなぁ。

「命令……。めいれい……。命令……」
「400メートル進んだ地点で出された、ゴールへのヒントなんだから……。ここから見える景色に、必ず答えがあるはず……」
「はいだよ、ですー。ぅにゅにゅ……。うにゅにゅにゅ……っ」
「今この目で見てる、どこかに……。その4の答えがある……」

 どんなに難しくっても、諦めちゃいけない。
 あたしたちはそれぞれ、必死に考える。

「んっと……。んっと……」
「どこに……。どこにあるの……?」
「ここから見える、命令は……。近くにある道路で、命令されるのは……」
「………………ん? 道路で、命令……?」

 呟いていたら、ナツキちゃんさんの眉毛が寄った。

「ふぇ? ナツキちゃんさん?」
「道路で、命令……。道路で、命令…………。命令というのは……………指示でも、ある……。だったら、道路で指示で………………………………オッケーっ。わかっちゃったっっ!」

 パチンッ。
 お隣で、勢いよく指が鳴った。

「陽上ちゃん、あそこを見て。てっぺんに赤い丸いマークがついた柱みたいなのが、道路から立ってるでしょ?」
「ん、です。立ってますー」

 赤い丸のなかに、白の横線が書かれているマーク。それが、ある。

「あれは標識といって、それがある場所ではそのルールを守らないと怒られちゃうんだよ。んで、○○しなさいって標識は命令でもある。つまり、車両進入禁止――見える範囲で一番強い命令をしてる標識がある、斜め右方向に進めばいいんだよ」
「そっか! ナツキちゃんさんすごーいっ! さすが中学生だよーっっ!」
「こないだ中学で交通安全の授業があって、それを思い出したんだ。ついさっき『道路で命令』って、口に出してくれたおかげだよ」

 ナツキちゃんはあたしの頭を撫でて、親指を立ててくれた。
 ぅにゅぅ。少しでもお役に立てて、よかったぁ。

「これでどうにか、その4もクリア。いよいよ残り1つ、だね」
「ヒントその5は、『分かれた道を、はじまりの方角に進め。そうすればゴールとなる』。とりあえず、道がわかれるまで進みましょー」

 あたしたちは強い命令がある標識の横を通って、スタスタスタ。ヒントを使える場所に向かったのでしたっ。

      ○○○ 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

フツーさがしの旅

雨ノ川からもも
児童書・童話
フツーじゃない白猫と、頼れるアニキ猫の成長物語 「お前、フツーじゃないんだよ」  兄弟たちにそうからかわれ、家族のもとを飛び出した子猫は、森の中で、先輩ノラ猫「ドライト」と出会う。  ドライトに名前をもらい、一緒に生活するようになったふたり。  狩りの練習に、町へのお出かけ、そして、新しい出会い。  二匹のノラ猫を中心に描かれる、成長物語。

あさはんのゆげ

深水千世
児童書・童話
【映画化】私を笑顔にするのも泣かせるのも『あさはん』と彼でした。 7月2日公開オムニバス映画『全員、片想い』の中の一遍『あさはんのゆげ』原案作品。 千葉雄大さん・清水富美加さんW主演、監督・脚本は山岸聖太さん。 彼は夏時雨の日にやって来た。 猫と画材と糠床を抱え、かつて暮らした群馬県の祖母の家に。 食べることがないとわかっていても朝食を用意する彼。 彼が救いたかったものは。この家に戻ってきた理由は。少女の心の行方は。 彼と過ごしたひと夏の日々が輝きだす。 FMヨコハマ『アナタの恋、映画化します。』受賞作品。 エブリスタにて公開していた作品です。

がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ

三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』  ――それは、ちょっと変わった不思議なお店。  おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。  ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。  お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。  そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。  彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎  いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。

おねしょゆうれい

ケンタシノリ
児童書・童話
べんじょの中にいるゆうれいは、ぼうやをこわがらせておねしょをさせるのが大すきです。今日も、夜中にやってきたのは……。 ※この作品で使用する漢字は、小学2年生までに習う漢字を使用しています。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

せかいのこどもたち

hosimure
絵本
さくらはにほんのしょうがっこうにかよっているおんなのこ。 あるひ、【せかいのこどもたち】があつまるパーティのしょうたいじょうがとどきます。 さくらはパーティかいじょうにいくと……。 ☆使用しているイラストは「かわいいフリー素材集いらすとや」様のをお借りしています。  無断で転載することはお止めください。

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

処理中です...