あこがれチェンジ!

柚木ゆず

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「今回のアコヘンは、予想以上に難しい問題だわ」

 5時間目の授業が終わって、休み時間。あたしとモミジちゃんは、誰にも聞かれないように教室の隅で相談をしています。
 アコヘンしてるのに憧れのヒナエちゃんさんとは性格が違っていて、しかもアコヘンする直前は『性格』に憧れていた。謎がいっぱいだよぅ。

「それに、放課後…………夜には、最後のオーディションが始まっちゃう。学校が終わるまでにもとに戻してあげなきゃ、だよね」
「自分が望んだ事とはいえ、こんな形で挑戦させるわけにはいかないわ。こういうケースは結果がどうであれ、その後が最悪になってしまうから」

 屋上から教室に帰る時に、教えてもらった。
 芸能人を目指す小学生は特にアコヘンが多くって、ミドリちゃんさんが言ったよーに『途中までのオーディションと違ってる』ってなって不合格。もし合格してもそのあとアコヘンを解除した時に、『オーディションの時とは別人じゃないか』ってなってお仕事をもらえなくなる。
 月下家さんが関わってきた人の中には、こうなっちゃった人が何人もいるみたい……。

「とはいえ、救うための情報が少なすぎる。心の中に入れるのは一度きりだから、考えなしでは手を出せないのよね……」
「ふえっ!? 入れるのって1回だけなの!?」

 失敗しちゃったら、2度と前の自分は戻れない。そんなお仕事だったのっ!?

「……ああやって侵入する私達はウィルスと同じで、心が免疫を――誰も入り込めないようにしてしまうの。だからチャンスは、1回きり。失敗すれば、その人は2度と戻れないの」
「そ、そうだったんだ……」

 そんな問題と向き合ってたなんて。月下家さんは大変で、とってもすごい……。

「姉さんが私のサポートをお願いした、そして4月だけと頼んだ理由が、これなのよ。更にプレッシャーがかかるようになるから、黙っていたかったのだけれど……。ごめんなさい」
「ううん、気にしなくていーよっ。悪いのは、モミジちゃんじゃないんだもん」

 モミジちゃんもナツキちゃんさんもアコヘンしちゃった人も、悪くない。だから謝らなくていーのですっ。

「……ありがとう、陽上さん。少し、姉さんに電話してみるわね」

 ほんとは学校でスマホを使っちゃいけないんだけど、今も特別な時だもんね。もし先生が来ても困らないようにカーテンの中に入って、ナツキちゃんさんに連絡してみた。


 
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