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第11話 関係者のその後~リゼットの両親・マクシム&ルネSide~ 俯瞰視点(2)
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「も、もう一回言ってくれ。な、なんて言ったのだ……?」
いつものように、お屋敷で頭を抱え呻いていた日から二日後。そんな二人のもとをマクシムの実弟2人が訪れ、弟たちに向けてマクシムは目をしばたたかせていました。
「まさか……。あんなことを、言ってはいないよな……?」
「わたしは兄上ではなく、兄上の心は察せません、ゆえにもう一度お伝えしましょう」
「あ、ああ。なんて、言った……」
「当主から降りてもらいます。二日以内にこの屋敷を離れ、こちらが用意した場所で余生を過ごしてもらいます。そう言ったのですよ」
聞き間違いであってくれ。そんなマクシムの――マクシムとルネの願望は、すぐに崩れ落ちました。
「な、なぜ……」
「なぜと返したいのは、我々の方ですよ。兄さん、なぜ理解できない?」
「周囲の評判、声は知っているでしょう? そんな声や目を無視できません。このまま貴方たちをトップに据えていたら、後戻りできないところまで落ちて行ってしまうのですよ」
家の未来のために。
二人の存在が『家』に及ぼす悪影響を考え、そう決まっていたのです。
「すでに満場一致で決定していて、覆せはしません。どう足掻いてもね」
「無駄な抵抗はやめてくださいよ。さもなくば、温情さえもなくなりますよ?」
『こちらが用意した場所で余生を過ごしてもらいます』。
せめてもの慈悲で用意された、住居。これがなければ、二人は路頭に迷う羽目になってしまいます。
ですので――
「分かった……」「分かり、ました……」
――認めたくないけれど、素直に認めざるを得ません。
そうして二人は周囲の評判だけではなく、さらには自らの地位までも失うこととなって――
〇〇
「……あの時、あんなことをしなければ……。リゼットを利用しなければ……。こんなことには、なっていなかったのにぃぃ……」
「……また、あの日々を過ごしたい……。あの頃に、戻りたい……。やり直したいぃぃ……」
お屋敷を追い出され、平民が暮らす家の半分の広さもない建物で暮らし始めてから、1か月後。
まだ30日しか経っていないにも関わらず、マクシムとルネは別人のようになっていました。
目には全く覇気がなく、げっそりとして、肌がすっかりボロボロになってしまったふたり。彼らは今日もまるで亡霊のようにボソボソ後悔を呟きますが、もちろん、願いが叶うことはありません。
マクシムとルネ。
彼らは娘を道具のように扱っていた代償として、この先もずっと、生涯暗い人生が続いてしまうこととなったのでした――。
いつものように、お屋敷で頭を抱え呻いていた日から二日後。そんな二人のもとをマクシムの実弟2人が訪れ、弟たちに向けてマクシムは目をしばたたかせていました。
「まさか……。あんなことを、言ってはいないよな……?」
「わたしは兄上ではなく、兄上の心は察せません、ゆえにもう一度お伝えしましょう」
「あ、ああ。なんて、言った……」
「当主から降りてもらいます。二日以内にこの屋敷を離れ、こちらが用意した場所で余生を過ごしてもらいます。そう言ったのですよ」
聞き間違いであってくれ。そんなマクシムの――マクシムとルネの願望は、すぐに崩れ落ちました。
「な、なぜ……」
「なぜと返したいのは、我々の方ですよ。兄さん、なぜ理解できない?」
「周囲の評判、声は知っているでしょう? そんな声や目を無視できません。このまま貴方たちをトップに据えていたら、後戻りできないところまで落ちて行ってしまうのですよ」
家の未来のために。
二人の存在が『家』に及ぼす悪影響を考え、そう決まっていたのです。
「すでに満場一致で決定していて、覆せはしません。どう足掻いてもね」
「無駄な抵抗はやめてくださいよ。さもなくば、温情さえもなくなりますよ?」
『こちらが用意した場所で余生を過ごしてもらいます』。
せめてもの慈悲で用意された、住居。これがなければ、二人は路頭に迷う羽目になってしまいます。
ですので――
「分かった……」「分かり、ました……」
――認めたくないけれど、素直に認めざるを得ません。
そうして二人は周囲の評判だけではなく、さらには自らの地位までも失うこととなって――
〇〇
「……あの時、あんなことをしなければ……。リゼットを利用しなければ……。こんなことには、なっていなかったのにぃぃ……」
「……また、あの日々を過ごしたい……。あの頃に、戻りたい……。やり直したいぃぃ……」
お屋敷を追い出され、平民が暮らす家の半分の広さもない建物で暮らし始めてから、1か月後。
まだ30日しか経っていないにも関わらず、マクシムとルネは別人のようになっていました。
目には全く覇気がなく、げっそりとして、肌がすっかりボロボロになってしまったふたり。彼らは今日もまるで亡霊のようにボソボソ後悔を呟きますが、もちろん、願いが叶うことはありません。
マクシムとルネ。
彼らは娘を道具のように扱っていた代償として、この先もずっと、生涯暗い人生が続いてしまうこととなったのでした――。
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