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第10話 屋敷に戻った息子は 俯瞰視点(1)

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「なんだって!? またルーフェ侯爵家の怒りを買ってしまったっ!?」

 ものすごい速度で馬車が門を潜り、顔面蒼白でお屋敷へと飛び込んだドニ。そんな異変によって執務室から飛び出してきた父ケビンは、目尻が裂けんばかりに目を見開きました。

「そ、そんな……。馬鹿な……! なぜ、なのだ……⁉ あちらの屋敷に関係修復に行って、なぜそんなことになるのだ……⁉」
「リゼットは婚約していて、その相手がアイツの弟のリアムだったんです……。だから……。あの行動が切っ掛けとなってしまって……。殺害対象に、なってしまった……」

 組み伏せられたこと。ナイフが迫ったこと。運よく・・・逃げられたこと。それらを震えながら説明し、すべてを知ったケビンは崩れ落ちてしまいました。

「な……! そ、それでは……。それでは……っ!」
「そう……。いずれ、ルーフェ家の手の者が追いかけてきます……。捕らえる、ために……」
「ぁぁぁぁぁぁ……!! なんてことだ……!!」

 可愛い息子が悲惨な目に遭ってしまう。それもありますが、ケビンを絶望させている一番の理由は『自分にも危害が及ぶから』。
 そこまで怒っているのなら、協力者――子どもの行動を許し金を出し続けた、元凶ともいえる自分も狙われてしまう。そのため父もまた息子と同様の精神状態となり、どたどたと地団太を踏むようになりました。

「ドニ! 謝罪での解決は! 不可能、なのかっ!?」
「無理ですっ、無理だった! もう止められない!! 俺達に止める術はありません!!」

 リートアル家は裕福な伯爵家ですが、相手は侯爵家。侯爵家は特別な駒を――金だけでは揃えられない優秀な臣下を持っているため、対抗などできはしません。
 たとえ治安機関に助けを求めたとしても、何かしらの形でやられてしまう――。彼らはそう、確信してしまっていました。

「なっ、ならば……。ならば……!」
「ちっ、父上どうすればいい!? 死ぬのは嫌だっ!! どうしたらいいんですか!?」
「わたしだって嫌に決まっているだろう!! し、死なずに済むには……っ。死なずに済むには……!」

 絶対に死にたくない。必ず生きてやる! 生きる‼
 そんな希望を叶えるべく、必死になって頭を働かせ始め――




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