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第8話 7か月の間に起きていたこと 俯瞰視点(1)
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「シルヴィ様? どうかされましたか?」
それはラファエル・ルーフェとシルヴィ・リテッレが、騒がしくなってしまった控え室を去ったあとのこと。シルヴィが想いを乗せた言葉を送り、ラファエルが笑顔で受け止めたあとのことでした。
お喋りの途中で不意に整った眉が少し寄り、その様子を見たラファエルが首を傾げました。
「お話しを止めてしまいすみません。実は急に、違和感を覚えるようになったのです」
「違和感、ですか。それはどのような感覚なのでしょうか?」
「……大事なことを、見落としている……。そのように感じている……ような、気がしております」
なにかを見落としているとは思えない。でも本能が、そう訴えている。
そんな不思議な感覚が、突如訪れていました。
「会場にも控え室にも忘れ物はしていませんし、関係者の方へのご挨拶なども忘れてはいません。見落としていることは、ないはずなのですよね……」
「僕も一緒に確認をしていますし、コンクール関係ではありませんね。とすると、それ以外。……………………そういえば」
少し俯きながら一緒に考えていたラファエルの顔が、正面へと戻りました。
「先ほどの状況を思い返していたら、僕が『微笑み』、『瞬き』をしながら、『花畑』と口にした直後にシルヴィ様の様子が変わりました。もしかするとそのどれかに、違和感への手がかりがあるのかもしれませんね」
急に違和感を覚えるようになったのなら、その直前に切っ掛けがあるかもしれない。ラファエルはそう考え、右の指を3本立てました。
「この中の単体、もしくは複数の組み合わせに、何かしらがある可能性があります。これらに、なにか感じるものはありませんか?」
「……微笑み……。瞬き……。花畑……。微笑み……。瞬き……。花畑……。微笑み……。微笑み……。微笑みは…………無関係だと思います」
少なくとも、『単体の微笑み』ではない。
シルヴィの中で候補が一つ消え、次は『瞬き』について考え始めます。
「瞬き……。瞬き……。瞬き……。瞬きにも…………なにもないと――ぁ! 瞬き! 違和感の原因は瞬きです!」
「やはり、あの中にあったのですね。……その慌てよう……。相当に大きなことが隠れていたのですね?」
「ええ……大事な、大変なことが分かりました。ドニは、嘘を吐いています」
シルヴィが、ドニのついた嘘に――『合意の上で婚約を解消した』『リゼットも応援をしてくれている』のは嘘だと気付く。
それによって、リゼットの――リゼットとシルヴィとラファエル、そしてドニもそう。4人の未来は、大きく変わることとなるのでした。
それはラファエル・ルーフェとシルヴィ・リテッレが、騒がしくなってしまった控え室を去ったあとのこと。シルヴィが想いを乗せた言葉を送り、ラファエルが笑顔で受け止めたあとのことでした。
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「お話しを止めてしまいすみません。実は急に、違和感を覚えるようになったのです」
「違和感、ですか。それはどのような感覚なのでしょうか?」
「……大事なことを、見落としている……。そのように感じている……ような、気がしております」
なにかを見落としているとは思えない。でも本能が、そう訴えている。
そんな不思議な感覚が、突如訪れていました。
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「この中の単体、もしくは複数の組み合わせに、何かしらがある可能性があります。これらに、なにか感じるものはありませんか?」
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少なくとも、『単体の微笑み』ではない。
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「瞬き……。瞬き……。瞬き……。瞬きにも…………なにもないと――ぁ! 瞬き! 違和感の原因は瞬きです!」
「やはり、あの中にあったのですね。……その慌てよう……。相当に大きなことが隠れていたのですね?」
「ええ……大事な、大変なことが分かりました。ドニは、嘘を吐いています」
シルヴィが、ドニのついた嘘に――『合意の上で婚約を解消した』『リゼットも応援をしてくれている』のは嘘だと気付く。
それによって、リゼットの――リゼットとシルヴィとラファエル、そしてドニもそう。4人の未来は、大きく変わることとなるのでした。
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