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第7話 いざ、真に愛する人のもとに ドニ視点(3)

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「……………………。え?」

 なんだ? 敷地の中で何が起きているんだ?
 あの大声が気になった俺は門へと近づき、中を覗き込んでみた。そうすると当主夫妻が玄関の前でリゼットに縋りついていて、そんなリゼットの隣には――……。獅子のような雰囲気を持つ、金髪の男が立っていたのだ。

「だ、誰だ……? アイツは誰だ……!? おっ、おいっ! 俺はリートアル伯爵家のドニだっ! 前婚約者でっ、リゼットに大事な話があって来たんだ! 通してくれ!!」
「お、お待ちくださいませっ。旦那様に確認をしてまいります!」

 確認だと? ふざけるな! と叫びたいが、コイツは独断で動ける立場の人間じゃない……っ。歯噛みしながら頷くと門番は大急ぎで奥へと走り、やがて――門番ではなく、リゼットと金髪の男がやって来た。

「どうして一緒に――この際そんなことはどうでもいいな! リゼット、俺の話を聞いてくれっ!」

 今俺達の間には門があり、それは俺達の心の距離を表している。そこで現実からも心の中からも『隔たり』が取り除かれるように、手にしていた薔薇を彼女へと差し出した。

「リゼット。今朝、夢を見て――君と過ごした日々を振り返って、ようやく気付いたよ。俺は、大きな間違いを犯していたとね」
「…………」
「真に愛する人は、シルヴィ。あれは誤りだ。それは気の迷い、あり得ないことだった。なぜなら君とあの女は、まるで違うのだから」

 優しさ。思いやりの心。温かさ。そこに天と地ほどの差があった――。もちろん君が、『天』だよ――。
 その結論に至った理由を丁寧に説明し、続ける。

「リゼット。シルヴィが離れていってしまったから、ではないんだ。1番が居なくなったからしぶしぶ2番手と、そんな不埒な考えではないんだよ」
「…………」
「目の前にいる人が1番だから、こうしているんだ。……再び婚約者となってもらって、愛を育みたいと思っているんだ」

 そう告げたタイミングで、左手も――300万のリングが収まっている箱を、彼女へと差し出す。

「この薔薇とジュエリーは、お詫びでありその証なんだよ。…………今度こそ君を、世界の誰よりも幸せにすると誓う。だから、また一緒に進もう」

 右手、左手、自身、そしてリゼット。俺は順に視線を動かし、最後にニコリと口元を緩める。
 そうすれば――おおっ!! リゼットは品よく微笑んで、


「お断り致します。あのようなことがあった方と関わるつもりはありませんし、それになにより――。私は本日、リアム・ルーフェ様と婚約をいたしましたので」


 カーテ・シーを行ったあと、隣を見つめ……。信じられないことを口にしたのだった……!!








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