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第7話 いざ、真に愛する人のもとに ドニ視点(2)

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「ドニ様……。い、いかがでございますか……?」
「………………。よし、いいだろう。これで行く」

 あれからおよそ3時間後。鏡に映るタキシード姿の自分を隅々まで確認し、周りで固唾を飲んでいた者達に頷きを返した。
 何か月間も寝込んでいたせいで、肌艶が悪くなってしまっている。
 そんな状態で最愛の人に会いに行くのは、あまりにも失礼だ。
 そこでメイクや髪型のチェックを入念に行い、リゼットに相応しい見た目を作っていたのだ。

「予定していた時間を過ぎてしまったが、まあいいとしよう。さあお前達、今度は『サンライト』と『ムーンティアーズ』に向かうぞ」

 反省の場であり再出発の場には、豪華な花と高価な宝石が必要だ。
 屋敷を出た俺は、贔屓にしているフラワーショップと宝石店を目指し――

「そうだな……。ここにあるやつを……まとめてくれ」

 サンライトで高品質の薔薇を100本使った特製の花束を購入し、

「オーダーメイドでいきたいところだが、仕方ないな。これにしよう」

 ムーンティアーズでは、およそ300万するエメラルドの指輪を購入。
 俺の真摯さを表すものを調達し、いよいよテリエール子爵邸を目指す。

 現在地から目的までは、およそ6時間。

 我々貴族にとって長距離移動は慣れたもので、それ故に暇を潰す方法をいくつも持っている。だが今日は、余計なことはしない。
 したく、ない。


「ごめんよ、リゼット。もう間違わないからさ。また、1からやり直そう」

「俺はもう、シルヴィなんかに興味はない。シルヴィ――あの女はね、君の足元にも及ばない人間だと気付いたんだ」

「今度こそ、その手を握り続けると誓う。その手はもう、離さない」

「大好きだよ、リゼット」


 俺は愛する人のことだけを考えて大地を進み、ついに! テリエール子爵邸の門が見えてきた。

「いよいよ、だな。……花束がかなり重いが、愛の力で可能にしてやろうじゃないか! 薔薇の花束とリングを持って、いざ愛するひとのもとへ――ん?」

 門の前に停まるや、馬車から飛び降りる。そうして自ら来訪を知らせようとしていた俺は、ほどなく眉根を寄せることになった。


「行かないでくれぇぇぇぇ!! たのむぅぅぅう!!」
「お願いよぉっ、りぜっとぉぉぉぉぉ……!! これまでのことは謝るからぁっ!! 行かないでぇぇぇぇぇぇぇ……!!」


 この声は当主夫妻のもので、そんな2人の悲鳴にも似た声が響いてきたのだ。
 門の外まで聞こえるほどの大声を、出すだなんて。なにがあったんだ……?

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