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第7話 いざ、真に愛する人のもとに ドニ視点(1)
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「おおドニっ!! すっかり血色がよくなって――ど、ドニ? どうしたのだ……? どこに行こうとしているんだ……!?」
「目的地は、テリエール子爵邸。リゼットに会いに行きます」
「……テリエール子爵邸……? リゼット……? ど、ドニ……? なんのためにあんな場所に行き、あんな女に会うのだ……?」
「父上、言葉には気を付けてもらいたい。リゼットは『あんな女』などと呼んでいい人間ではありませんよ」
そんな風に呼んでもいい女とは、正反対にいる女性。俺は即座に首を振り、父上の暴言に釘を刺した。
「……は? は……? なにを言っているのだ……? お前も散々そう言っていたではないか……? もしや…………悪夢を見続けた影響で、部分的な記憶喪失になってしまったのか……?」
「それは違う、記憶喪失になんてなってはいませんよ。……そうですね。確かに、そのように言っていた時期もありました」
愚かな出来事。
なかったことにしたい出来事の一つだ。
「? ?? ???」
「でも、今は違う。今日見た夢によって、俺はようやく…………真実に、気付いたのですよ」
最愛の人は、シルヴィなんかではなかった。
あの女は、偽者。俺を惑わせる、この上なく厄介で鬱陶しい、悪臭を放つ生ゴミのような存在。
その前の――最初の婚約者こそが、真に愛する人だった。
困惑してポカンと口を開けている父上に、変わった――否、そうじゃない。それこそずっと見ていた『誤りの悪夢』からリゼットが目を覚まさせてくれて、認識が元に戻ったのだと伝えた。
「そもそも、冷静に考えてみればおかしかったのですよ。……ええと、誰だっけか。そうだ、アイツはシルヴィとかいう名前だったな。シルヴィとかいうクソ女には、幼い頃から何度も会って来た。そうですよね?」
「う、うむ。そ、そうだな」
「ゆうに100回以上は会っていて、アレについては色々なことを知っている。なのにこれまで、一度も異性として惹かれたことはなかったんですよ? なら、突然惹かれはずがない。あの認識、あの判断は、おかしかったんですよ」
本当に、おかしい。あまりにも滅茶苦茶だ。
「……俺はあの時から今日まで、悪霊にでも取りつかれていたのかもしれないな……。とにかくやっと目が覚めて、真に愛すべき人間を改めて理解しました。だったら、やるべきことは一つしかありませんよね?」
謝罪。関係修復。
これ以外ない。
「そ、そうか。分かった。お前がそういうのなら、応援しようじゃないか」
「感謝します。では父上、行ってまいります!」
きりッとした眼差しで頷いた俺は、まず足早に一階を目指し――
「目的地は、テリエール子爵邸。リゼットに会いに行きます」
「……テリエール子爵邸……? リゼット……? ど、ドニ……? なんのためにあんな場所に行き、あんな女に会うのだ……?」
「父上、言葉には気を付けてもらいたい。リゼットは『あんな女』などと呼んでいい人間ではありませんよ」
そんな風に呼んでもいい女とは、正反対にいる女性。俺は即座に首を振り、父上の暴言に釘を刺した。
「……は? は……? なにを言っているのだ……? お前も散々そう言っていたではないか……? もしや…………悪夢を見続けた影響で、部分的な記憶喪失になってしまったのか……?」
「それは違う、記憶喪失になんてなってはいませんよ。……そうですね。確かに、そのように言っていた時期もありました」
愚かな出来事。
なかったことにしたい出来事の一つだ。
「? ?? ???」
「でも、今は違う。今日見た夢によって、俺はようやく…………真実に、気付いたのですよ」
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あの女は、偽者。俺を惑わせる、この上なく厄介で鬱陶しい、悪臭を放つ生ゴミのような存在。
その前の――最初の婚約者こそが、真に愛する人だった。
困惑してポカンと口を開けている父上に、変わった――否、そうじゃない。それこそずっと見ていた『誤りの悪夢』からリゼットが目を覚まさせてくれて、認識が元に戻ったのだと伝えた。
「そもそも、冷静に考えてみればおかしかったのですよ。……ええと、誰だっけか。そうだ、アイツはシルヴィとかいう名前だったな。シルヴィとかいうクソ女には、幼い頃から何度も会って来た。そうですよね?」
「う、うむ。そ、そうだな」
「ゆうに100回以上は会っていて、アレについては色々なことを知っている。なのにこれまで、一度も異性として惹かれたことはなかったんですよ? なら、突然惹かれはずがない。あの認識、あの判断は、おかしかったんですよ」
本当に、おかしい。あまりにも滅茶苦茶だ。
「……俺はあの時から今日まで、悪霊にでも取りつかれていたのかもしれないな……。とにかくやっと目が覚めて、真に愛すべき人間を改めて理解しました。だったら、やるべきことは一つしかありませんよね?」
謝罪。関係修復。
これ以外ない。
「そ、そうか。分かった。お前がそういうのなら、応援しようじゃないか」
「感謝します。では父上、行ってまいります!」
きりッとした眼差しで頷いた俺は、まず足早に一階を目指し――
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