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第5話 ………… ドニ視点(2)
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「シルヴィ様は、思いと想いの視野が広い方。真っ先に、相手のことを考えてくださる方なのですよ」
シルヴィのことを考えていないだと? バカを言え! そう思っていたら、ヤツは今更なことを言い出した。
「この男は幼馴染ですので、熟知しております。その当たり前の点が、どうか致しましたか?」
「……おや? でしたら、真っ先に分かるはずではないのですか? なぜシルヴィ様が、今日という日を選ばれたのかを」
「今日? それは、コンクールの受賞を告白の条件としていたからで――あっっ!!」
指摘を受けて、ようやく思い出した。
『だから、実は……。わたしがラファエル様に相応しい奏者になれたら――コンクールで最優秀賞、個人でも賞をいただけたら、想いを告げると決めていましたの』
あの時シルヴィが、そう口にしていたことを。
「ご存じのように、音楽家界も貴族界と同じ。『差』が注目されてしまいます」
そう、その通りだ。実力や爵位に隔たりがあれば、様々なことを囁かれてしまう。
嫌でも、様々なものが耳に入ってきてしまうようになる。
「シルヴィ様は交際によって生まれる、僕への悪影響を気にされていました。それを解消できる状態での『告白』を、希望されていました。……それを無視するのは、愚行の中と愚行だとは思いませんか?」
「そっ、それはそうですが! その雰囲気!! ラファエル様もシルヴィ様を愛されているのですよね!?」
「そうですね。そういった方ですので、愛しております。婚約し、やがては家族になっていただきたいと強く思っております」
「でしたら! 俺でしたらっ! それを悟った時に伝え、喜ばせるという選択肢を取ります! 秘密裏の告白はノーダメージなのですからっ、それこそが真に愛する者の行動ではないのでしょうか!!」
「シルヴィ様は、相応しい奏者になれたら、と強く思ってくださっていました。そのためその場合は『まだ資格がありませんので』と仰られ、保留とされる――その行動によって余計な圧や焦りが生まれてしまい、以後のレッスンや本番に、何かしらの支障をきたしてしまいます。せっかく向けてくださっている想いの、妨害をすることになってしまいます。……誰よりもあの方を幸せにできるのであれば、そちらも理解できるはずなのですがね?」
ぐ……! ぐぅ……!!
ぐ………………!!
シルヴィのことを考えていないだと? バカを言え! そう思っていたら、ヤツは今更なことを言い出した。
「この男は幼馴染ですので、熟知しております。その当たり前の点が、どうか致しましたか?」
「……おや? でしたら、真っ先に分かるはずではないのですか? なぜシルヴィ様が、今日という日を選ばれたのかを」
「今日? それは、コンクールの受賞を告白の条件としていたからで――あっっ!!」
指摘を受けて、ようやく思い出した。
『だから、実は……。わたしがラファエル様に相応しい奏者になれたら――コンクールで最優秀賞、個人でも賞をいただけたら、想いを告げると決めていましたの』
あの時シルヴィが、そう口にしていたことを。
「ご存じのように、音楽家界も貴族界と同じ。『差』が注目されてしまいます」
そう、その通りだ。実力や爵位に隔たりがあれば、様々なことを囁かれてしまう。
嫌でも、様々なものが耳に入ってきてしまうようになる。
「シルヴィ様は交際によって生まれる、僕への悪影響を気にされていました。それを解消できる状態での『告白』を、希望されていました。……それを無視するのは、愚行の中と愚行だとは思いませんか?」
「そっ、それはそうですが! その雰囲気!! ラファエル様もシルヴィ様を愛されているのですよね!?」
「そうですね。そういった方ですので、愛しております。婚約し、やがては家族になっていただきたいと強く思っております」
「でしたら! 俺でしたらっ! それを悟った時に伝え、喜ばせるという選択肢を取ります! 秘密裏の告白はノーダメージなのですからっ、それこそが真に愛する者の行動ではないのでしょうか!!」
「シルヴィ様は、相応しい奏者になれたら、と強く思ってくださっていました。そのためその場合は『まだ資格がありませんので』と仰られ、保留とされる――その行動によって余計な圧や焦りが生まれてしまい、以後のレッスンや本番に、何かしらの支障をきたしてしまいます。せっかく向けてくださっている想いの、妨害をすることになってしまいます。……誰よりもあの方を幸せにできるのであれば、そちらも理解できるはずなのですがね?」
ぐ……! ぐぅ……!!
ぐ………………!!
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