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第6話 恐怖のはじまり 王太子ベルナール視点

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「魔法陣だと!? おいっ、リーサルス! その魔法陣の色はっ、黒と白じゃないのかっっ!? 右半分が白で左半分が黒じゃないのか!?」
「……殿下、なぜそれを……。は、はい。出現したのは白黒2色の魔法陣で、右側が白、左側が黒でございました……」

 やっぱりそうだった……。
 マリエール達――神殿で起きたことと同じことが、起きていた……。

「わたくしめも、偶然目撃したのですが……。あっという間でございました……」
「「「「「……………………」」」」」
「しかも不思議なことに……。わたくしめが助けようとしたのですが……見えない壁のようなものが魔法陣の周りにあり、リックに近づくことさえできませんでした……」
「「「「「……………………」」」」」
「わたくしは71年間生きておりますが、このような事態は初めて経験いたします……。過去の歴史にさえも、なかったと――」
「陛下ご報告がございます!!」

 再び扉が、しかも今度は大きな音を立てて開いた。
 王太子殿下達がいる場所のドアを、こんなにも乱暴に開け放つ……。相当なことが、あるに違いない……。

「な、なんなのだ? なにがあった……?」
「地点Aで警備をしていたモアスとローラン……。地点Cで警備をしていたオーリスとラールとゲイン……。地点Eで警備をしていたアンリとエールとケヴィン……。地点Qで警備をしていたヴァ―ノン……。中庭にいらっしゃった 王の側近ザクレス様が、突如発生した魔法陣に呑み込まれ、行方不明となりました……」
「「「「「………………」」」」」

 この場にいる全員が、言葉を失わずにはいられなかった。
 リックに続き、10人も……。同じタイミングで沈んで消えていただなんて……。

「わたくし共には手に負えない問題でございます……。すでに神殿に遣いを送っておりまして――! そちらにいらっしゃるのは!」
「はい、わたくしは神殿に属する者でございます。……残念ですがわたくし共にも、皆目見当がついておりません……」

 神殿から来た男は力なく言葉を返し、同じく力ない動きで懐から手帳とペンと取り出した。

「とはいえ情報を集めて持ち帰れば、何かしらの手がかりが見つかるやもしれません。……さきほど王城で消失した10名。皆様に、何らかの共通点はございませんか――」
「「「「「あああああああああ!!」」」」」」
「!? どっ、どうなされたのでございますかっ!?」
「!? もしや魔法陣でございますか!?」
「我々が目視できていないだけでっ、足元に現れているのですか!?」

 違う! 違う!! そうじゃない!!
 俺達は悲鳴をあげたのは、そうじゃない!
 俺達が悲鳴をあげた理由は――

 マリエール達も。
 リックも。モアスも。ローランも。オーリスも。ラールも。ゲインも。アンリも。エールも。ケヴィンも。ヴァ―ノンも。ザクレスも。

 聖女ファニー殺害に関与している人間だからだ!!
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