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第2話 聖女を殺したあとは 俯瞰視点
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「ゴミらしい愚かな最期だったな。おいお前達。コレを運び出せ」
糸が切れた操り人形のように床に倒れ、ピクリとも動かなくなったファニー。ベルナールは床に転がる死体を蹴って仰向けにし、出入り口を顎でしゃくりました。
「承知いたしました。陛下、こちらの遺体についてなのですが……」
「ん? ああ、さすがにゴミ箱に捨てるわけにはいかんな。聖女の死体は秘密裏に焼き、骨にしてどこかに埋めるとしよう」
この国の王クレマンは淡々と指示を出し、衛兵もまた淡々と指示を受け入れます。
王も王妃も王太子も第2王子も第3王子も、衛兵達もみな同類。5人は平然と人を殺せる者であり、衛兵たちは金を渡されたら喜んで何でもする生き物でした。
「城の中には大勢、殺害を知ったら追及してくる連中がいる。くれぐれも悟られるでないぞ?」
「「「「「御意」」」」」
衛兵たちは用意していた黒の布で死体を包み、念のため麻袋にも入れ、荷物に偽装して王の間を後にしました。そうして遺体がなくなると王クレマンは携帯していた鈴を鳴らし、ほどなく眼鏡をかけた細身の男性が――王の側近が入ってきました。
「王、いかがなさいましたか?」
「愚か者相手には、やはり話は成立しなかった。たった今聖女はこの世を去った」
「さようでございますか。では」
「うむ。神殿へと使いを送り、新たなる聖女を特定するのだ」
聖女は当代が亡くなるとその瞬間肉体から聖女の力が抜け出し、新たな肉体に入るようになっている――『力への適性が高い』かつ『清らかな心の持ち主』へと宿り、新しい聖女が誕生する仕組みになっています。
わたくしが死ぬということに、大したデメリットはありません。強いてあげるならば、神殿にある水晶で新聖女の居場所を探して迎えに行かないといけない、という点くらいとなっています。
かつてファニーがそう言っていたように、聖女が死亡するとその力は新たな人間に宿ることになります。
そして力が移動して24時間は、『聖なる力』が休眠する――新たな身体に馴染むべく発現しないので自力では気付かず、毎回水晶で調べて特定する必要があるのです。
「父上。今度はまともな頭を持った聖女になるといいですね」
「そうだな。そう願いたいものだ」
聖女は『適性』だけ高くても務まりませんし、『清らかな心』だけあっても務まりません。そのため場合によっては、どうしても『清らかな心』の部分が弱い――誘惑に負けてしまう聖女が誕生することもあります。
そうなれば簡単に懐柔できて、王族の傀儡になる。
今回のように聖女のせいで不愉快な思いをしなくて済むため、ベルナール達5人は頷き合いました。
「さすがに連続で死んだら、頭が悪い国民どもも違和感を覚えてしまうからな。どうか、都合の良い女であってくれ――……ん?」
「? どうしたの、ベルナール?」
「今、何か聞こえたような気がしたが――気のせいだったようです。父上、母上、お前達も。神殿から報告があがるまで暇になることだし、お茶でも飲みませんか?」
「賛成だ。邪魔者も消えたことだしな、久しぶりにくつろぐとしよう」
そうして5人は王の間をあとにし、ゆったりとした時間を過ごし始めますが――。彼らは、まだ知りません。
その僅か5時間後に、異変が起き始めることを――。
糸が切れた操り人形のように床に倒れ、ピクリとも動かなくなったファニー。ベルナールは床に転がる死体を蹴って仰向けにし、出入り口を顎でしゃくりました。
「承知いたしました。陛下、こちらの遺体についてなのですが……」
「ん? ああ、さすがにゴミ箱に捨てるわけにはいかんな。聖女の死体は秘密裏に焼き、骨にしてどこかに埋めるとしよう」
この国の王クレマンは淡々と指示を出し、衛兵もまた淡々と指示を受け入れます。
王も王妃も王太子も第2王子も第3王子も、衛兵達もみな同類。5人は平然と人を殺せる者であり、衛兵たちは金を渡されたら喜んで何でもする生き物でした。
「城の中には大勢、殺害を知ったら追及してくる連中がいる。くれぐれも悟られるでないぞ?」
「「「「「御意」」」」」
衛兵たちは用意していた黒の布で死体を包み、念のため麻袋にも入れ、荷物に偽装して王の間を後にしました。そうして遺体がなくなると王クレマンは携帯していた鈴を鳴らし、ほどなく眼鏡をかけた細身の男性が――王の側近が入ってきました。
「王、いかがなさいましたか?」
「愚か者相手には、やはり話は成立しなかった。たった今聖女はこの世を去った」
「さようでございますか。では」
「うむ。神殿へと使いを送り、新たなる聖女を特定するのだ」
聖女は当代が亡くなるとその瞬間肉体から聖女の力が抜け出し、新たな肉体に入るようになっている――『力への適性が高い』かつ『清らかな心の持ち主』へと宿り、新しい聖女が誕生する仕組みになっています。
わたくしが死ぬということに、大したデメリットはありません。強いてあげるならば、神殿にある水晶で新聖女の居場所を探して迎えに行かないといけない、という点くらいとなっています。
かつてファニーがそう言っていたように、聖女が死亡するとその力は新たな人間に宿ることになります。
そして力が移動して24時間は、『聖なる力』が休眠する――新たな身体に馴染むべく発現しないので自力では気付かず、毎回水晶で調べて特定する必要があるのです。
「父上。今度はまともな頭を持った聖女になるといいですね」
「そうだな。そう願いたいものだ」
聖女は『適性』だけ高くても務まりませんし、『清らかな心』だけあっても務まりません。そのため場合によっては、どうしても『清らかな心』の部分が弱い――誘惑に負けてしまう聖女が誕生することもあります。
そうなれば簡単に懐柔できて、王族の傀儡になる。
今回のように聖女のせいで不愉快な思いをしなくて済むため、ベルナール達5人は頷き合いました。
「さすがに連続で死んだら、頭が悪い国民どもも違和感を覚えてしまうからな。どうか、都合の良い女であってくれ――……ん?」
「? どうしたの、ベルナール?」
「今、何か聞こえたような気がしたが――気のせいだったようです。父上、母上、お前達も。神殿から報告があがるまで暇になることだし、お茶でも飲みませんか?」
「賛成だ。邪魔者も消えたことだしな、久しぶりにくつろぐとしよう」
そうして5人は王の間をあとにし、ゆったりとした時間を過ごし始めますが――。彼らは、まだ知りません。
その僅か5時間後に、異変が起き始めることを――。
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